海で育む、生きる力

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1期生が入学後、宿泊を伴う魅力的な学習機会をデザインするため、現在大阪近郊の様々な施設に伺って、実際にプログラムを体験したり、施設の方々とディスカッションしたりしています。そして、徳島県阿南市にあるYMCA阿南国際海洋センターを訪れました。

信じる心が試されている

私たちが阿南に向かったのは夕暮れ時からまるっきり夜になるタイミング。阿南市までは街の景色を確認することができたのですが、阿南国際海洋センターまであと3、40分に差しかかったあたりから、車は闇の中を走ります。

しかも、その先は永遠と続く細い峠道。海を感じさせる手掛かりはなく……。この道の先に、「海洋センターなんてないんじゃないか」と私の心は疑い始めます。TOK(知の理論)でいうところの「Faith」、信じる心が試されている。大阪を出発し、もはや3時間。夕ご飯を食べて満腹になった私は、「このまま帰ってもいんじゃね?」って言いそうになるのを必死にこらえました。

「さあ、着きました」と言われたのは、いよいよ私の我慢も限界に達しようとしたとき。真っ暗闇だったので、海は見えませんでしたが、確かに波の音が近い。気仙沼を離れて、早4年。こんな近くに海を感じることは久しぶりだなと、ほんの一瞬、ノスタルジックな気持ちになりました。

迎えてくれたのはYMCA阿南国際海洋センターのスタッフ3人の方々です。挨拶をすませると、私の気持ちを見透かしたのか、「途中、本当にあるのかって疑ったでしょう?」と言われ、一瞬ドキッとしたのですが、みなさん最初に来たときは同じ風に思ったそうです。

海で育む、生きる力

夜9時を回っていたにも関わらず、菅田斉(かんだひとし)さんに阿南国際海洋センターのこと、プログラムのことを説明していただきました。話を聞きながら、様々なプログラムやアクティビティを通して体系化できる肉体感覚を伴った概念は何があるだろうか、私たちが持つ知識そのものに対して、どのような問いを立てることができるか考えてみました。

TOKのフレームでこれらのプログラムを振り返れば、DPが始まる前に十分な足場づくりが可能だと踏むと、あとはそこから菅田さんを質問攻めにしました。菅田さん、夜遅くに暑苦しい質問、すみませんでした。

菅田さんの話の中で、「海で育む生きる力」というフレーズが気にかかったので、そのことについて聞いてみました。「海」で育まれる生きる力と、「海でない場所」で育まれる生きる力にはどのような異なりが生じる可能性があるのだろうかと。

そこはさすがの菅田さん。いいよどみなく、「死に直結する」環境の中で、命、安全、仲間、自己および他者を理解するメタ認知、主体的に関わる力、コミュニケーションスキル、ソーシャルスキル、様々な変数の中で課題を発見し、仲間と解決していく力などなど、「それそのままIBが目指すところですよね?」って言いたい気持になりました。

大人が邪魔しない

阿南国際海洋センターではスタッフの指導の下、カヤック、一人乗りカヌー、カナディアンカヌー、ジャンボカヌー、ヨット、カッターなど個人で取り組めるものからグループで取り組むものまで様々なアクティビティを同時に展開することが可能です。800m沖合には野々島という無人島もあり、毎年そこで小学生の子供たちとサバイバルキャンプをしているそうです。

海洋プログラムはライフジャケットの着用の上、一緒に命を預けるバディを組んで行います。安全は何によって担保させるか、危険をどう察知・判断するかを問いながら自分+αの命についても気を配ることが約束です。

活動に際しては、「一度陸を離れ、出廷したら、再び上陸するまでその艇のクルーですべてに対応しなければならない」という『シーマンシップ(Seamanship)』に基づき、スタートしたらみんなで力を合わせてやり遂げることを目標に、様々な問題が起こったときに話し合いながら解決するプロセスを重視します。

大人は基本、見ているだけ。もどかしいですよね。助言したくなる。やって見せたくなる。声をかけたくなる。でも、すべては子供たちが他者との対話を通して主体的に課題に関わり、解決策を試行錯誤する学びの場です。大人がそれを邪魔しない。信じて待つ心が試されます。

最後に

阿南海洋センターは幼稚園児から大人まで年間約9,000人の利用があるそうです。学校は徳島県や阪神地域の約50校が訪れています。徹底した安全管理の下、専門の指導員がすべてのプログラムを実施するため、これまで死亡事故が起きていないということでした。

生きる力を育むことにとどまらず、安全教育、防災教育など様々な学びに発展させることが可能です。例えば、「プログラムを実施するかしないかを判断するうえで、どのような情報を収集し、そのうちどの情報を採用するのか」について考えたり、これは面白い問いにつなげられるかもという思いで帰ってきました。

ま、私自身もカヌーやカヤック、ヨットなど体験してみたんですけどね……。インドア派の私にはなかなかチャレンジングでした。

というか、本当にすみません。私がぼやっとしていたせいで、私ばかりか、カヌーでバディを組んだ今話題の太田晃介先生(同僚になりました!)、ヨットを指導していただいた和田さん(センターのスタッフ)まで海に放り出されることになってしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいです。暖かくなってきたとはいえ、徳島の4月の海は、2人の私を見る目と同じくらい冷たかったです。

一個だけ、うれしい発見がありました。震災から7年、私はずっと海を避けてきたように思います。でも、今回、様々なマリンアクティビティをしていて楽しかったんですよね。そして海が怖くありませんでした。海は私のアイデンティティを形成する上で欠かせない存在であったことを再確認しました。

でもね、風が怖いです。ヨットが転覆するからです。高校の時に国体で優勝した友人がさも簡単に優勝したようなこと言っていた上、彼の普段の様子を知っている身としては、どうせマイナースポーツだから、ちょっと頑張れば誰でも賞もらえるんじゃないかと考えていました。望くん、あなたは実は凄い人だったんですね。

早起きをして、波打ち際で1人、水切りをしながら、みんなごめんなさいと呟きました。

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