IB認定校への道 -大いなる不満-

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みなさん、こんにちは。熊谷優一です。筑波大学附属坂戸高等学校で国際バカロレア・ディプロマ・プログラム・コーディネーターをしています。

夏休みと言えば、読書ですよね。みなさんはこの夏、どんな本を読む予定ですか?「先生、この前こんな本を読んだよ」って話してくれる生徒たちと本談義をするのも、また愉しいものです。

私は今、セス・フリードの『大いなる不満』という本を読んでいます。なかなか不条理で後味が悪くなるような短編集で、とても面白い本です。その短編集の中にある「フロスト・マウンテン・ピクニックの虐殺」という話に出てくる、毎年結構な人が殺されるお祭りに疑問を持ちながらも参加し続ける市民たちと、日本における国際バカロレア(IB)導入に翻弄される私たちが重なりました。

回る回るよ、たらいは回る

これまで日本では、国際バカロレアの教育プログラムは主にインターナショナルスクールで行われてきました。日本の学習指導要領によらない独自の教育課程を実施している学校です。それが、国家再興戦略の一環で一条校でも実施可能になりました。現在、国公立の高校では東京都立国際、学芸大学附属国際中等、筑波大学附属坂戸が国際バカロレア認定を受けています。今後全国各地国の公私立の高校が認定を受けていくものと思われます。

しかし、これまでもこのブログで何度も出てきていますが、一条校でIBを実施するにはカリキュラムや外国人教員採用、卒業条件など様々な制約があります。それを管轄している大本は文部科学省です。日本の一条校でIBを導入するうえで障害となりうる数々の制約を緩和することについて、文部科学省は2020年2018年までにIB認定校を200校にすると目標を数値化しているにもかわらず、リーダーシップを発揮できていません。

筑坂は国立の高校で、都心からも1時間圏内と交通の便もいいため、2月に認定されるや否や、IBの本部からシヴァ・クマリ事務局長、シンガポールオフィスの認定サポート係官、オランダのオフィスから「Programme Standards and Practices」の編集者、文科省などIBに関わる様々な立場の方々の訪問を受けています。

IBについてわからないことや要望をIBの人たちに聞けば、「日本語DPは文科省から委嘱を受けて、IBOが開発に協力している。だから文科省に聞いてくれ」だし、文科省に聞けば、「とはいえIBのプログラムなんだから詳しいことはIBOに聞いてくれ」と寄り辺も消える、そんな毎日。それでこうして、おろおろとブログを書いています。

責任ある立場にあるのは誰?

先日、こんなことがありました。まさに今行われている東京のワークショップについてです。

現在日本で開催されるいくつかのワークショップは基本的に一条校の教員であれば参加費が無料になるという措置がされています。その措置は今年度いっぱいで終了する旨、以下のエントリーで述べました。

IBの先生になるにはどうすればいいか、熊谷優一が解説します。

ただ、申し込み多数だった場合は抽選になり、無料枠では参加できない場合があります。しかし、有料枠での申し込み締め切りが無料枠で参加できるかどうかの連絡が来るより後に設定されているため、有料でワークショップに参加することは可能です。したがって、毎年人気のTOKとEnglish Bに複数名申し込んでいる場合は、各学校から1名に絞られることがあるので、無料枠での抽選に漏れたら、有料枠で申し込んでもらおうと考えていました。

しかし、無料枠での参加の是非が届くとアナウンスされていた日には結局連絡が届きませんでした。さすがに待っていられず、その日に問い合わせ先に指定されたアドレスにメールを送りました。すると、選考自体は既に終わっており、IBOがリストを持っているので、早く出すように文科省とIBOにも伝えるとの返答でした。

つまり、ワークショップの事務は文科省でも、IBOでもないところが担当しており、結果の発送はどちらが責任を持っているのかわからないということですよね。

こういう、結局誰が何を担当し、どこに問い合わせをすれば正確な情報が入手できるのかがわからない状態がずっと続いています。認定されてしまえば、その負担は大幅に軽減されますが、候補校や認定校申請をしている学校の先生たちにとっては、プログラムを設計するうえで大きなストレスに違いありません。

大学はIBをどう考えているの?

日本の教育にIBを導入するのは、いわば国家プロジェクトです。日本人の英語運用能力を上げるとともに、日本の教育を知識偏重ではなく、探求型にシフトしていくことが期待されているのはわかります。

しかし、大学にはどの程度IBの教育が認知されているのでしょう。今年2017年3月に横浜で行われたIBのアジア大会に参加した国内の大学の入試担当者は日本語DPの質に疑問を呈し、積極的に採りたいとは言いませんでした。英語DPを取った受験生がアプライできるのは英語オンリーで提供されるコースのみというところも少なくありませんでした。

「IBは世界の名だたる大学に入学できるパスポートだ」くらいの勢いでメディアで取り上げられています。文科省はそうはいっていないといいますが、受け取るほうはどうでしょう?いまだに、そう思っている人は多いのではないでしょうか。

IBDP取得を目指す学習者にとって、問題になるのは45点満点中何点で資格を得るかということです。文科省の資料によれば、オクスフォードは38点などとなっています。つまりディプロマを取っただけでは大学進学に有利になるとは限らないということです。

大学入試におけるIBがどのように位置付けられるかで、今後の日本におけるIBの役割は大きく変わります。

最後に

認定を受けた後、私の仕事に大学や、文科省、IBOに日本におけるIB認定校の実際を理解してもらうという仕事が加わりました。それは間もなく入学するIB生が学ぶことを正当に評価してもらえるような体制を作るためです。

確かに、日本語DP取得者は昨年初めて出ました。数も10人に満たない。分析するにはあまりにデータが少ない。結果を見せられないから、大学にもプロモーションをかけづらい。そのジレンマを全国のIB認定校が抱えています。

だからこそ、プラットフォームが必要です。筑波大の中で理解を深めてもらえるよう私も足繁く通っていますが、他に仕事もあるので筑波以外にはなかなか行けません。全国のIB校や自治体が少しずつ役割を担って、IBの教育について知ってもらう努力をしなければ、将来200校で実施されるIB生の進路をどう担保できるのでしょう。

日本のIBをどうしていくのか、リーダーシップが必要です。文科省にぜひその役割を担ってプラットホームを構築してほしいです。折角面白い教育プログラムを実施するのですから、それを正当に理解してもらい、その教育のエッセンスを日本の教育に落とし込んでいく努力をみんなで力を合わせてやっていきませんか?

音頭さえとってもらえば、協力は惜しまないと言う関係者の声はIB認定校にとどまらず、様々な企業の方からも上がっています。そしてIBの教育手法が日本の一般の学校で行われる教育を補完するそんな風に広がっていってほしいと心から願っています。

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