教育という文脈 -シアターラーニングを通して-

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みなさん、こんにちは。熊谷優一です。筑波大学附属坂戸高等学校で国際バカロレア・ディプロマ・プログラム・コーディネーターをしています。

先日、大阪YMCA国際専門学校高等課程表現・コミュニケーション学科の卒業記念公演にお誘いいただいて、生徒たちの熱演を見てきました。生徒たちの多くは不登校を経験していると聞いていましたが、「ウソでしょ?」というくらい堂々としたプロの役者顔負けの演技に思わず感極まってしまいました。

「ああ、教育者としての自分の原点ってここだったなぁ…」と気づきを与えてもらうと同時に何だか励まされた気持ちです。生徒のみなさん、ありがとう。そして指導された先生方、本当に本当にお疲れさまでした。

Imaginary Skit

筑坂に赴任した4年前に私が受け持った科目は1年生対象のコミュニケーション英語Ⅰという科目でした。その授業で毎レッスン後に行ったのが、「Imaginary Skit」というアウトプット型のアクティビティです。教科書を使うことに意味を持たせたいと思って導入しました。

まず教科書を学習し、その単元に出てきた人物を最低でも2人抽出します。その2人がどのような会話をするか、それを10往復のSkitに落とし込みます。2人抽出する場合は2人ペアで、3人抽出する場合は3人のグループで行います。

Skitを作るためには、教科書の内容をもう一度読み直さなくてはなりませんし、文語で書かれたテキストを口語に置き換えなければいけません。場面や人物像も設定するためには、英文一文一文の意味を把握すると同時に文脈やその語彙が使われた背景を読まなければなりませんし、その人物にどんな英語を話させるのかも考えます。

そして何よりも生徒たちが作ったSkitを発表するとき、彼ら自身の理解が演技となって現れます。ただの教科書の英文たちの塊が意味ある、体温のある英文となります。同じ人物を演じていても、英語力、文脈、人物、場面、演技力などなど様々な要因によって全然違うSkitが出来上がります。

生徒たちはそこに楽しみを見出します。そして工夫するようになる。ひねった英語表現を入れたくなる。こっちとしては、生徒たちが勝手に英語を学んでくれるので、私は楽ちん。その上、ユーモアにあふれた作品が多いので、笑いが絶えませんでした。読んだものがただ読んだもので終わるのではなく、ちょっと難しい内容になれば、既存の知識を結び付けたり、新たに資料を調べたりするようになりました。

シアターラーニング

この手法が、「シアターラーニング」という学習方法だと知ったのは2017年8月に参加したeポートフォリオの研修会でした。先ごろ、特許を取って無料サービスが開始された「Feelnote」というeポートフォリオをどのように使うかの一環で「シアターラーニング」という手法を体験しました。

音楽座のプロの役者の方と『星の王子さま』を朗読したのですが、同じ役を朗読していても私と他の参加者との解釈や演技は全く異なります。また、黙読していた時は、「?」って思ったセリフが実際に演じてみると、「ああ、なるほどね」って納得がいったり、実際に演じてみることによって気づくことはたくさんありました。

自分の言葉ではないけれど、演じることによって、その役から発せられる言葉が理解できるというこの手法が今、教育の現場で、企業の研修で注目されています。そして大阪YMCA国際専門学校高等課程表現・コミュニケーション学科では不登校であったり、他者とのコミュニケーションがうまくいかなかった子供たちにメタ認知をスキルとして養成するためにこの手法を用いています。

ボクの友だち

主人公は人間関係に躓いた男子高校生。そしてそれを取りまく同級生や先生、家族との関わりが描かれていました。もしかしてその中に実際に彼らが体験したことが描かれていたのかもしれません。それらの現実に起きたエピソードが別の人によって演じられたり、別の立場になって演じたりすることによって、これまで自分の目線でのみ理解してきた事象が、異なる立場ではどのように理解されうるのかを無意識のうちに気づいていったのではないでしょうか。

不登校だった自分。振り返ってみれば、自分の家族や友人、学校の先生たちにもそれぞれに自分に対する思いはあって、この世の中で自分は決して独りぼっちではなかったことを追体験したことでしょう。劇中、真実味のある生々しい叫びがいくつかありました。その言葉に私は胸を揺さぶられる思いでした。それは彼らがようやく声に出すことができた本当の心の声だったように思います。

幕が開くまでの稽古の間にも、イロイロあったことでしょう。困難であればあったほど、何かを成し遂げた後の達成感は大きくなります。関わった人が多ければ多いほど喜びは大きくなります。だから最後までみんなと一緒にやり切ったその思いは永遠です。どんなに年をとっても、そのことで酒が飲める。最高の宝です。

それを持てた生徒たちに、そしてそれを持たせることができた先生たちにこの歌を送ります。映画『グレイテスト・ショーマン』より「This is me」。

最後に

「子どもたちに自己肯定感を!」と大阪YMCA国際専門学校に表現コミュニケーション学科を立ち上げた鍛治田千文先生からいただいたメールを紹介させてください。

早速メールをいただき感激しております。あの後、生徒の振り返りの時間に入っていました。「人生で最高だった」「生きていて良かった」「舞台にはけた時のみんなの声かけが温かくて嬉しかった」「これほどハイタッチしたことがない」と生徒の喜びの声を聴きました。私にも至福の時間でした。

彼らの背景や中3時の様子を知っていますので「この子がここまでなった」ということに私も胸がいっぱいです。ここまでなるために、スタッフの日々の丁寧であきらめない関わりも見ているだけに毎年、感動させてもらっています。このように成長を一緒に応援できる私たちの仕事はなんて幸せな仕事なのだろうと感謝するばかりです。

年度末の悩みや決めないといけないことが目の前にまだまだたくさんあります。が、こんな日があるから頑張れます。今日は非常勤の先生も含めて打ち上げです!生徒自慢がいっぱいで、これもまた幸せな時間です。

いつもこのブログでも繰り返し述べていますが、学びに優劣はありません。学びはその学習者一人一人にとって大切で、尊くて、意味があります。それを応援する社会を築くこと、それが私たち大人の使命だと思いを新たにしました。

最近このブログを知った方は私がIB、IBってIBのことばかりを持ち上げる教員だと思われているかもしれませんが、教育という文脈における一側面を取り上げているにすぎません。IBの教育も魅力的ですし、これまでの日本の伝統的公教育にもやっぱりちゃんとオモイと意味があります。それを新しいブログでは伝えていけたらと思っています。もしお時間がよろしければ、私が夜間高校で教えていたころの生徒たちのエントリーにも目を通していただけたらうれしいです。

熊谷優一がIBに携わる前に教えていた夜間高校の生徒のエントリーです。
クマユウが筑坂に来る前の夜間高校の生徒からの投稿です。
クマユウが筑坂に来る前の夜間高校の生徒からの投稿です。
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