to be or not to be

皆さん、こんにちは。「今からIBを始める君へ」と第して、これまで13名の現役IB生がそれぞれに国際バカロレア(IB)・ディプロプログラム(DP)での学びについて語ってくれました。

IBに興味を持っている学習者や保護者、実際に指導に当たる先生達にとって実際に学習している生徒の視点から語られるIBの学びに対する理解の助けになることを願ってこの学校を超えたCASプロジェクトを進めています。

CASとは

CASとはDPの必修科目の1つです。Creativity(創造性)、Activty(活動)、Service(奉仕)の頭文字をとってCASと呼ばれています。CASでは以下の7つの学習成果を達成できるような活動を企画、実践し、振り返りを行います。

1. 自分の強みを認識し、成長できる部分を伸ばす。

2. 新たな挑戦をし、その工程で新たなスキルを伸ばす。

3. 自らCAS活動を計画し、実行する。

4. 責任感を持ち、根気よく活動を遂行する。

5. 他人と協力して行うことに利点を見出し、スキルを発揮する。

6. 地球規模における重要な課題に取り組む。

7. 活動における倫理的な意味を考え、行う。

コロナ禍で外出制限が設けられるう地域もあったことから、本プロジェクトでCAS活動の場を提供することにしました。また、このプロジェクトに参加している全国のIB生は毎月一回オンラインで集まって、あれこれ情報交換する場が設けられています。

第一回のミーティングでは自己紹介がスムーズにいくようにと、今回は熊谷から次のようなお題が出ていました。

「あなたが家から学校に通う通学路にないものはなんですか?最大3つまで上げてください。」

通学路にないものについて考えることから浮かび上がる

家から学校まにあるものではなく、ないものを考えさせるところが熊谷らしいなと思います。俗に言う、「ネガティブアプローチ」と呼ばれるものですね。「○○でないもの」を特定することで、「○○であるもの」を浮かび上がらせていくという方法です。

「ない」を考えることで、「ある」が鏡のように反射して見えてきます。実際に参加した現役IB生は、「通学路にあるもの」と「通学路にないもの」をどのように捉えたでしょうか。その議論を聞いていても十人十色でした。

あってほしいものをないものとしてピックアップしたり、実際に目に見えない、時間とか余裕とかといったことをピックアップしたり、はたまた、実施に目に見えているのに、気がついておらず、ないものとして述べたり……。

認識と存在の間に

ウィジェナヤケ・ジョン・ライアンくんは「実際には存在していても、それを認識していなければ、それは本当に存在していると言えるのだろうか?」と問われ、答えに詰まったと語っていましたね。

「通学路にないもの」というお題は単に自己紹介のネタに過ぎないと思って聞いていましたが、参加した現役IB生たちは、「存在すること」と「存在しないこと」、「認識すること」と「認識していないこと」など思考をどんどん広げていったようです。

寺谷実花さんは「意識してみることによって、反復の中にも変化が発見できるという可能性を感じました」と語っています。

生徒たちの答えを聞きながら、熊谷は、「私たち個々人が自然や人間関係も含めて自分の生まれ育った情景や面影を通して世界を見ている可能性はあるかな?」と問いました。

最後に

ある日の夕暮れにあの日の夕暮れの状況を見るときはないでしょうか。誰と一緒にいたのか、その時どういう気持だったのか、どこで見たのか、などなど私達が生まれ育った環境の

積み重ねの中から培われた様々な記憶や知識や感情が、私達に世界を見せているのかもしれません。

その世界は、だから、とっても違いますよね。人それぞれ。どこで生まれ育ったのか、いつの時代に生まれ育ったのか、誰とともに時間を過ごしてきたのか……。

みなさんも、自宅から学校、または勤務先、あるいは近所のスーパーなど行き先を決めて、そこの行き帰りにないものを考えてみてください。そしてそのないものはみなさんにとってどんな意味をもつのかを見つめてみてください。その洞察の過程に、みなさんが生まれ育った様々な面影が見えてきませんか?

次回は熊谷のおばあさんと熊谷の悲喜こもごもを描いた「13月」シリーズの新作をリリースします。このシリーズこそ熊谷の世界観を形成している面影なんだろうなと感じています。