筑坂では毎年2月に日頃の学習成果を発表し、昨今の教育に関する諸問題を議論する分科会を2日間にわたって開催しています。今日はその研究大会初日に公開した授業の模様をお送りします。
どんどん授業を見に来てもらおう!
4年前に筑坂に赴任して以来、性懲りもなく毎年授業公開してきました。授業を見せるということは、授業者として自分自身がジャッジされることを恐れる先生もいるかもしれませんが、全くそうは思いません。むしろ、発信することで、授業が良く運ぼうがそうでなかろうが得られるフィードバックは学びの宝庫です。
私は宮城県で教員をやっている時から、若い先生たちに、いつ何時でも挨拶なしに授業を見に来ていいよと話しています。それはクマユウが自分の授業力に自信を持っているからだなんて言われもするのですが、いやいやそうではないんです。
いつも誰かが見に来る授業では、生徒たちは誰かに見られることにあっさり慣れていきます。そしてやがて、見られることすら意識しないようになり、普段と変わらぬパフォーマンスができますし、都度都度外部の人から得るフィードバックにのおかげでモチベーションが高まったりします。
そう、狙いはそこなんです。私は授業者でありながら、実は何にもしてないっていう。あとは勝手に生徒も学んでくれるし、授業を見に来た人たちが学ばせてくれるんです。だから授業時間、その教室で一番怠けているのが授業者であるなんてうそぶいています。
4年間を振り返って
4年前は1年生のコミュニケーション英語Ⅰの授業を公開しました。その時は「Imaginary Skit」といって、教科書に出てきた2人~3人の人物を抽出し、その人物間でどんな会話が展開されるかを英語で想像していくというアクティビティを行いました。
3年前は私自身がIBの教育を理解するため2~3週間に一度のペースで放課後に行った「English Caravn」を公開しました。その時の模様は当ブログでもお馴染みの阿部富子先生(宮城県志津川高校)が以下のエントリーで書いてくださいました。
昨年は3年生のコミュニケーション英語Ⅲの授業を公開しました。実はあんまり覚えてないんですよね。この年は読解に重きをおいて、教科書の内容から概念を抽出するとか、多様な読み方を奨励するといった意味で、本文の内容から生徒個々人が重要だと考える3つのキーワードを抜き出して、それがどんな意味で重要なのかを説明する「Three Most Important Keywords」をやったんではなかったかなと思います。
思い出した!4つの選択肢の中から最もネガティブなものを選ぶという「Negative Corners」っていうアクティビティもその時に考えたんでした。類似のものに「Four Corners」ってありますが、いいものを選ぶっていうのが、私を含めて筑坂らしくないよねってことでNegativeなものを選ぶってアレンジしたら、英語が苦手な生徒も引くくらいクリエイティブな議論を展開していました。
例えば、「のび太の人生に最も悪影響を与えているのは誰か?」をドラえもん、ジャイアン、スネ夫、しずかちゃんから選ぶとか、「最も悲しい喪失は何か?」という問いでは、友人、ペット、福沢諭吉、信頼といったシュールなお題もありましたね。このブログにも登場する浅見昌弘くんが福沢諭吉を選んだら、「諭吉は樋口一葉2枚で代替可能だ」って反論されていて、滅茶苦茶笑いました。
英語をツールに学ぶ
何も、私の授業が凄いとか言いたいわけではありません。教科書がある場合は教科書を核に如何に発展的学びに繋げていくかが私がやりたいことです。英語を学ぶというよりは英語を手段にして考え方やスキルを身につけるという言い方がわかりやすいでしょうか。
さて、今年は教科書がない学校設定科目「Project Studies II」を受け持っています。また3年生。この時期、授業に集まれる人は多くない…。インフルエンザも大流行しており、当日欠席が出て、たった3人しか来なかったらどうしようということで、卒業生にも声をかけて来てもらうことにしました。
案の定、5人インフルが出て、ようやく集まったのが15人くらいでした。しかも私の授業を取ってない生徒も私が困っているのを見かねて、急きょ参加してくれた生徒も3人いました。みんなありがとう!
http://knowledge-caravan.com/informationaboutsome
授業は上記のエントリーで書いた通りのことをやりました。でもね、どうしてもやりたいことがあったんです。フースーヤのギャグです。毎回の公開授業ではその年に(私の中で)流行ったギャグを英語で入れているのですが、今回は生徒との掛け合いが必要。そこで生徒と練習に練習を重ねて、場面を設けました。Steve Jobsのメッセージを選んでそれを発表するところでです。
「Cocktail Party Exhibition」という生徒全員が立って、自分が書いたものを2~3人くらいにプレゼンし合い、流暢性を高めるアクティビティの後、何人かの生徒に選んだメッセージとその理由を4人くらいに発表してもらいました。最後に当てたのが奴でしてね。しかも当てられた瞬間から自信なさげな演技!入ってる入ってる!ちょっと泳がせてみようって、しどろもどろになる彼を弄びました。そして、途中でちょっとイラッとした感じで止めて、説教を始めます。会場は若干ピリつきました。
クマユウ:I said this to you before. You must work harder than ever. Are you listening to me? You must work harder than ever. Nothing’s too much!
生徒:Oh, my godfather’s calling!
2人:Yoisho!
最後に
フースーヤをご存じない方は、「何じゃそれ!」ですよね。その引いてる感じまで私にとっては面白い。
幸いなことに当日会場では知っている人が多くて、何とか笑いを取ることができました。開始15分くらいでしたね。「もうやり切った!」と満足した私はその後の授業がそぞろになっていたかもしれません。
でも、生徒のパフォーマンスも面白かったんですよ。卒業式で答辞を読む卒業生代表のペルソナを設定するところでは、一度人生に挫折したけど、やっぱり学びたいと筑坂でもう一度高校生活を送った35歳の外国人とか、あとは「Halluc(そうか、これ教科書で奴らやったな!)」というAIまでいました。成績優秀なスーパー優等生のAIが人間の高校生と一緒に3年間学ぶという…。「映画作ったほうがいいよ」って周りの生徒から冷やかされていました。
でもね、寂しかったんですよね。一方で。生徒はもはや私を必要としないって。私は授業中、見に来てくださった方々に挨拶したり、質問を受けたり、だべったりしていました。一方で私の名前を呼ぶ生徒はなく…。
4年間、私の授業を見にいらした香川の先生には、「毎年来ているので卒業生の顔までわかる。本当に成長しましたよね。」って言っていただけて、うれしかったです。当日参加した卒業生の顔も覚えていてくださって、声をかけていただきました。そんな風に見守ってくれる人がこの世の中にはいるんだと、授業が終わってみんな話していました。
それが、彼らのモチベーションにつながります。見に来ていただいたみなさん、どうもありがとうございました。