「ナレッジキャラバン in 大阪 2019 夏」レポート by 古屋佑奈

ブログをご覧の皆さま、ナレッジキャラバンに関わられた皆さま、こんにちは。古屋佑奈と申します。

このブログに登場するのは3回目、だったでしょうか。前回登場した当時は玉川大学の大学院で国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)の研究をしていましたが、現在はIBのMYP(Middle Years Programme)候補校で保健体育科の教員をしています。

メッセージは突然に

私の勤務校は、高知県にある高知国際中学校という県立のMYP候補校で、同じ敷地内にある高知西高等学校と兼務して2年目になります。

IBを学ぶ大学院生、古屋佑奈さんの初エントリーです!
大学院でIB教育について学ぶ古屋佑奈さんの2回目のエントリーです。

以前ブログに書かせていただきましたが、熊谷先生とは、大学院時代にサポートスタッフとして参加したIBの公式ワークショップで出会いました。そこから熊谷先生の前任校に授業参観に行ったり、熊谷先生の生徒さんが副店長をしている築地のお寿司屋さんに行ったりとお付き合いが続きました。現在では、IB教育に携わる教育者として、お互いの近況報告をし合ってはヤル気になったり、ネクラを確認しあったり(笑)しています。

今回のイベント参加に関しても、いつもの感じで突然メッセージがさらっときました。「8/25に大阪でイベントを企画していて、そこでMYPの保健体育の授業をやって欲しいのですが、どうですか?」と「今度飲み行こう!」的なノリで連絡を受けたので、まさかこんなに壮大なイベントだとは思いもせず、OKのお返事をさせていただきイベントに臨む事になりました。

結果、前日の夜中まで頭を悩ませましたよ…。

保健体育の価値

MYPは「学び方を学ぶ」プログラムということで、今回の授業では、IBの示す「学び方」(ATL:Approach To Learning)に的を絞って保健体育の授業を体験してもらおうと考えました。この時点で私の授業の目的は参加者が「保健体育の価値を考えること」「IB(MYやMYPの保健体育の授業)について理解をすること」でした。

概要としては、ATLとは何かを簡単に説明した後、「自分の健康課題を改善する運動計画を立てる」という課題にグループで挑戦してもらう、といった内容でした。「保健体育の授業は何のためにあると思いますか?」と問うと、「生涯にわたり健康な生活を送るための土台作り」「コミュニケーションのため」「体力向上のため」と、皆さんの考える保健体育の意義や価値は多様だということを再認識しました。実際に参加者の方々は身体を使いながらコミュニケーションが生まれていました。

最終的にこの授業を体験して、保健体育の価値を問い直すきっかけになっていれば嬉しいです。あくまできっかけでいいんです。問いを投げかけた私が言うのも無責任かもしれませんが、私も模索中なので…。その中でも少し自信を持って言えることは、学び方が多様になってきた昨今、唯一学校に集ってやる意味が大きい教科だと言うことです。直接触れ合って、コミュニケーションを取りながら学ぶことで、学ぶ意義が大きくなる教科だと思うんです。

おかげさまで大阪女学院中高で開催したイベントを無事に終えることができました。

熊谷先生も、イベントの中で保健体育の価値について別の視点から熱弁してくれていました。そのことについてはいつかブログの中で語ってくれることを期待しています(笑)。他教科の先生にそんな風に保健体育のことを語ってもらってすごく励みになりました。

目的を見失ってはいけない

何といっても今回の一番の気づきは、「目的を見失ってはいけない」ということでした。体験授業を振り返ると、悩んでいるうちに初めに設定した目的を見失い、いつの間にか目的と方法が逆になってしまっていました。保健体育の価値を考え、IBについて理解するという目的を達成するためにATLを使うんだったのに…。

全体会で熊谷先生と大平敦尊くんが作ったビデオクリップの中でありましたが、まさに、「方法という悪魔に取り憑かれ」ていたんだと思います。参加してくださった方は、MYPの保健体育の授業をされている先生から中学生、異業種の方と様々で、正直どのようにファシリテートすれば良いか戸惑いながら進めていました。

結局あれもこれもとやることを欲張ってしまい、参加者の皆さんは理解を深める間もなく終わってしまったのではないかと思います。それでも、参加してくださった方々は初めての人とも積極的に関わり、一生懸命考え、何かを学ぼうとしてくれていたように感じます。

上手くできずに申し訳ない気持ちと感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

最後に

「何をするにも、目的が一番大事だよね」ってよく熊谷先生ともよく話します。前職はスポーツに関わる仕事だったので、「勝つ」というわかりやすい目的があり、組織で共有がしやすかったため、方法は各々が考えても大それたことにはならなかったように思います。

それに比べて教育の目的は多様で、ズレたり外れたりしやすいなと。教育の現場に入ってみて感じるのは、オモイが先行してしまい、目的を見失いがちになるということです。「なんかうまくいかないな」「なんか噛み合わないな」そう感じたときに振り返ると、大抵目的が一致していないことが多い気がします。

学校は人と人が関わる場なのでオモイはもちろん大切なのですが、人の数だけオモイがあるからこそ、オモイが先行した「方法」よりもそれを実現するための「目的」が大切なのではないでしょうか。

IBでは、学校管理職、教師、生徒、保護者、地域は学び合うコミュニティーのメンバーであるとしています。IBは教育において万能ではないと思いますが、私は、コミュニティーで目的を共有し、同じ方向を向いて進んでいくことをより意識できるプログラムだと考えています。みんなで学校を創る、それぞれが学ぶ環境を整える。誰かのせいにしていては、何も進まないですね。

私はIBに出会ってから人とのつながりや関わりの幅が広がりました。このイベントもその一つです。他県からわざわざ私の授業を受けにきてくださった方もいました。このイベントの一週間前に久しぶりに再会した先生に声をかけたら本当に来てくれました。イベントにボランティアで参加していた保護者の方が帰り際に声をかけてくれました。イベントに参加していた知り合いの先生方が、帰りの飛行機までの間かまってくれました。

学校の外にも、仲間がいる。そんなことを感じながら明日も頑張ろうと思うのでした。