「ナレッジキャラバン in 大阪 2019 夏」レポート by 松崎秀彰

みなさんこんにちは。本校では初のIBディプロマの最終試験が差し迫る晩秋のつくばより、熱かった夏を思い出しながらお届けしています。茗溪学園の松崎秀彰です。

異なる4つの学校の先生たちのワークショップの模様を「藪の中」方式、全4回でお届けします。

昨年の「未来の先生展」に続いての熊谷先生からの無茶振り(笑)、いや、ありがたいオファーをまたいただき参加させて頂きました。最近自分がrisk-takerというよりもrisk-ignorantになってきているような気がしてならないのですが、今回もOKした後に自分の方がお客さんとして聞いてみたい先生方ばかりのラインナップであることを知り、大変なことを軽く快諾してしまったのではないかと後になって思いながら当日を迎えました。

学び会いのプラットフォーム

皆さん、まずはこの画面を上の方にスクロールしてみてください。黒板を挟んでお馴染みの2名の若者がいますね。今回のイベントのチラシを作ったのも左側にいる大平敦尊さんだそうですが、私の講座を選んでくださって初めて会うことができて、想像以上に好青年で感動しました。

またこのブログを管理されている松岡航さんとも初めてお会いしてお話してあまりにも気持ちのよい方でまたまた感動しました。松岡さんからは最初以前どこかで知り合っているかのように声をかけていただいてこちらは「どなたでしたっけ」状態だったのですが、ブログで私の記事を扱ったりしていたので初めて会った気がしなかったとのことでした。

私も同様に、今回のイベントではこのブログで記事を拝見した先生がたくさんいらっしゃって、初めてお会いする皆さんばかりなのにそういう気がしなかったのが不思議でした。おそらくこのブログの記事でそれぞれの皆さんの人となりや取り組みを深く知ることができるからそのような気分になるのだろうと思い、改めてこのブログの役割を実感しました。

先日本校のある生徒がオランダの教育について課題研究で扱いたいと私のところに相談に来ましたが、そういった場合にはこのコミュニティでイエナプランなどの実践をされている先生に連絡を取らせていただくこともできるでしょうし、逆に私の方にも学校を超えてIBに関することの質問をいただいたりしています。先日は夏のIBのワークショップで知り合った先生に本校を訪問いただき、今度は本校の教員がその学校を訪問することになったりと、最近学校から飛び出していろいろなつながりができてきていることに大きな可能性を感じています。今回のナレッジキャラバンはそれが先生だけでなく、小学生から中高生、大学生を超えて学校の先生ではない大人の方々まで拡がっていたところも画期的だと思いました。

IB生の高校生活

講座を計画した際、自分が提供できるものは何かと考えて日本の学校でのIB生の生活、部活や行事や進路などの取り組みの紹介と思いました。が、台湾の阿部先生と同じく熊谷先生がそれで許してくれるはずもなく(笑)、TOK体験もということで「私たちはどのような学びを選ぶべきかをどのように知るのか」、一緒に考えましょうとも付け加えました。

蓋を開けてみると受講者は小学生から大人まで20名ほど、申し込んで頂いた皆さんのニーズは何だろうと考えつつ、制限時間50分、IB生の学校生活を紹介し、参加者に参加してもらって問いを考える場面も作る。読者の皆さんはこのような条件が与えられたらどのような講座をデザインしますか? (面白い案があれば是非教えてください)

当日はまず付箋を使って今までの学校生活で面白かった授業やプログラムを挙げてもらい、4人グループで例を出し合って、「面白い授業の条件」を考えてもらいました。例えばいくつかのグループで出てきた「自分で考える場面がある・自律性がある」という条件も、出てきた例や議論した過程によって、それぞれのグループや参加者によって少しずつ違う、独自のイメージや概念を持ったのではないかと思います。各グループからの発表では、それぞれに独自の分析や解釈や説明を加えた、異なる立場や年齢や背景のメンバーでの議論を通して生まれた面白いアイデアがいろいろ出てきて、熱心に参加して頂いたことに感謝しました。

議論を通した多様性からの学び

本校のIB生の日本の大学受験の面接練習の際、IBで学んでよかったことの1つとして多くの生徒が挙げたことがこの「議論を通した学び・多様性からの学び」でした。日本人同士でさえこんなに違う考えがあってそこからこれほどに新しい考えが生まれたり学んだりできるのであれば、海外の大学での世界中からの学生との議論はさらに多様性にあふれた刺激的なものになるだろう、と海外大学出願のエッセーに書いた生徒もいました。

「面白い授業の条件」を出して頂いた上でTOKの「知るための方法」を簡単に紹介し、ではIBはその条件にどこが合致してどこが合致しないか考えながら聞いてくださいということで、IB生の高校生活の紹介をしました。講義形式のパートはなるべく短くしたかったのですが、参加者のニーズを考えるとそこが一番知りたいところかと思い、IB生の忙しさや、一方で部活や行事も頑張っている例も挙げ(ちなみに本校では先日生徒会選挙があり、新生徒会長には高2のIB生が就任しました)、その後少しだけ質疑応答が入って時間となりました。時間があれば各グループに架空の高校1年生の進路希望・学習希望の例(ペルソナ)を与えてその人にIBを勧めるかどうか話し合って頂こうかと思っていましたが、50分では大きな活動を2つ入れるのは難しいですね。

全体会の後の2回目は主に学校の先生や保護者の方にご参加いただき、授業について考える活動の場面などはむしろこちらがいろいろと教えて頂きたいと思ったくらいですが、これをきっかけに連絡を取るようになった先生もいらっしゃるなどよい機会をいただきました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

最後に

IBはやってみないとわからないことが多いと常々感じていますが、会場となったIB校の大阪女学院さんの先生方や生徒さん達の「とにかくやってみよう」というマインドには大変刺激を受けました。本校の生徒が作ったIB紹介ビデオがプロジェクタに映らずに困っていると、大阪女学院のIBクラスの生徒さんが代わりのコネクタをすぐに持ってきてくれて替えてみたり、それでも映らずパワーポイントに貼り付けてみるのはどうですかと提案をしてくれたりと大変頼もしく思いました。

今回講座を担当された先生方も、おそらく分かれ道があると面白い方、しかも大変な方を選ぶ方々なのではないかと感じました。そして参加者の皆さまもそのようなマインドにあふれている雰囲気を感じました。多くのボランティアの皆さまにも支えられた手作り感あふれる「やってみよう」が集まったこのイベント、面白かったですね。

今回も自分の講座を実施したことで一番学んだのは私自身だったと思っています。ということで熊谷先生、次の無茶振りを恐る恐るお待ちしております。