<再掲載>オトナチャレンジ

本エントリーは2018年10月1日にリリースしました。手違いで非公開設定になっており、この度再掲することにしました。本エントリーに登場する猪口さんは2024年現在、台湾のプロ女子サッカーチームの監督をされています(ちなみに以下の記事にあるようなことをアレンジしたのは本ブログの運営を担当している彼です)。

https://www.roc-taiwan.org/jposa_ja/post/41854.html

みなさん、はじめまして。前回のエントリーで熊谷先生に「日焼けした熱量高めの男」と紹介された、大阪YMCA体育ユーススポーツ事業長の猪口武志と申します。熊谷先生と出会い、この場所に登場することができ非常に感謝しております。

こどもたちのスポーツには教育的観点が必要です。教育とは、「共育」とも表されるように、指導者である私たち自身も学び続けることが重要だと思っていたところ、IB教育に行きつきました。そして、熊谷先生と出会い、私が感じていることを共感していただけたということが今の私のオモイを加速する大きな原動力になっています。

<スポーツ≠競技>

私は幼い頃からありとあらゆるスポーツに没頭してきました。サッカー、ボーリング、柔道などなど。最もやりたかったのは野球だったのですが、親の仕事の関係で実現しませんでした。中学2年からはサッカーを部活動、体育会運動部としてずっと続けています。

ただひたすら楽しくサッカーをした中学時代、ある程度の強豪の中で挑戦したい気持ちを持って取り組んだ高校時代、監督・コーチもいない超ゆる~い大学時代。それぞれのスタイルで一番楽しかったもの、自分にとって成長ができたものは大学生時代でした。

自分たちで、練習メニューを考え、戦術を考え、戦略を考える。大学からサッカーをはじめた部員と同じピッチで試合をしました。勝利した数は圧倒的に高校時代より少ないのですが、大学でのサッカーが一番自分を成長させてくれたと思っています。

どうして私に一番成長をもたらしたのは大学時代だと思うのかをこの頃よく考えます。目標を達成すること、まさに試合に勝つことよりも大事なものを得たからなんだろうと思います。スポーツの本質はラテン語で「deportare」です。意味は憂さ晴らし、気晴らしなどの“遊び”です。その本質を知らない間に体験できていたことが私を成長させてくれていたと今となっては感じます。

私は『スポーツ=競技』ではないと思っています。勝ち負けを競うという性格ではないスポーツの在り方に私は今一番関心を寄せています。サッカーやスポーツを通じて、『多くの人が成長できるスポーツには「勝つこと」「うまくなること」だけではない捉え方がある!』とスポーツが人生をよりよくするツールとして多角的にとらえ、それを発信していきたいと思っています。

<引き分ける力>

「うちの子は、からだをぶつけにいくことができん!やる気が感じられん!ケンカするつもりでいけ!と言っているんですが……」

ご自身も競技選手としてプレーされていたお父さんの言葉です。お父さんが若い頃はエネルギーに満ち溢れていたようで、「昔はプレー中に……」という話もよく聞きました。フィジカルコンタクトは非常に重要です。そして「負けて悔しいと思え!負けるな!」と檄を飛ばす気持ちも十分に理解できます。でも……。

「お父さん、本当にケンカに負けさせたくないなら、ケンカしないことが一番ではないですか?」「勝つことだけでなく、状況によっては引き分けをつくれる子どもってすごくないですか?」

私は思い切って聞きました。お父さんは、「ほんまにその通りやな!」と凄く大きな声で笑って、「もう試合は見に行くん辞めるわ!」と帰って行かれました。大人の価値観や見方で子どもを見ると子どもたちは大人からの過度なプレッシャーで委縮します。でも、その子どもの視点を見守ることで子どもはのびのびとプレーするようになるのではないでしょうか。

<成長するチカラ>

私はこれまで、地域の選抜レベルの選手の指導にあたることもありました。「今どうしてそのプレー選んだ?」「どうすればもっとよくなる?」といった問いに応えられる選手は非常に少ないです。

そういう場でももともと同じチームの選手としか関わらない選手が多かった印象があります。将来的には必ず違うチームに所属してきた人たちとプレーすることになるのに、その場所で自ら新しい選手と関わろうしないことは残念だと思いました。しかし、先を見据えたときに、自分がどう行動することがいいのか、それを伝えていくことも指導者として考えないといけないと考えるようになりました。

自分たちで納得し出したときに、選手の成長はとてもはやいです。自分自身で学んだこと、学べたことが理解できたことをこちらが問わなくても語りだし、行動し、自ら学び始めます。だから大人が手を出しすぎると、子どもの成長する機会を奪ってしまうのではないでしょうか。

自ら考え、行動し、振り返る中で確かな知識やスキルを身に着けていく。そういう機会を私はスポーツの中で子供たちに提供できる指導者になりたいと思っています。そういう経験をした子どもたちが大人になれば、今の日本のスポーツの概念は大きく変わると信じています!もちろん、今の大人にも様々な形で伝えていかないといけませんね。またやる気が出てきました(笑)。

子どもたちが自ら成長し続けようとする大人になり、大人になっても様々な人々がフラっと集まって、それぞれの人々が価値観を認め合いながらスポーツを楽しむこと。そこで新しい人と出会い、またそこで笑顔でスポーツを楽しむ子どもたちの成長を多くの大人が見られること。そんな場所を作りたいんです。

<最後に>

先日、3歳からYMCAサッカーに通っていた子ども(現高校3年生)と久しぶりに連絡がありました。私がかつて徳島に勤務していた時に出会ったその子は、徳島県内の強豪校で1年生からメンバーで出場していた有望株の子でした。

しかし彼は部活を辞めます。辞めて社会人の四国リーグのチームに入ります。まわりからは大反対をされたそうですが、あえてその道を選んだという報告でした。

「どうしてその道を?」と聞くと、「チャレンジした方が面白いやんって、ずっと言ってくれたやん!」と笑いながら言われてしまいました。

そう。チャレンジしない人生より、泣いても笑ってもチャレンジした人生の方が楽しいんです。スポーツを通じて、その一歩が踏み出せない子どもたちの背中を、「まずはやってごらん」って押してあげられるようにしたい。いきいきと明るい明日を、より良い人生を歩むことができるような社会を作っていくことができると嬉しいですね!

「熱量高めの男」の話を最後まで読んでいただきありがとうございます。まもなく熊谷先生と台湾に行ってきます。そこでは山中鴻齊くんのプロジェクトチームとも会ってきます。今後どんなコレボレーションができるか今から楽しみです。