犬は吠えるがキャラバンは進む:時は私たちに同じく流れているのか vol.2

みなさん、こんにちは。熊谷優一です。

熊谷が現任校の生徒たちとで昼休みに行っている読書会の模様をお送りします。

前回に引き続き、「時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」」という本をネタに、これからIBを始めようとする高校1年生たちとの議論について今回と次回は快く参加していただいた2人の先生たちの視点から取り上げてみたいと思います。

ナレッジキャラバン

2人の先生は国際バカロレア・ディプロマプログラムで歴史と知の理論を教えている先生たちです。これまでも、事あるごとにあれやこれやと雑談をしています。彼らと会話することはまさに愉快の一言に尽きます。私にとっては毎日がナレッジキャラバンです。

それぞれ知識について異なる専門分野を持っているため、同じ本を読んでいても視点や解釈のアプローチが全然違うんですね。例も独特。自分では思いつかないような事例をあげて説明してくれるので本当に勉強になります。今回の読書会は私が彼ら2人から学んでいることを私の生徒たちにも体験して、本を読むことと、それについて議論することで学ぶことの楽しさを味わってほしいと思って企画しました。

では、先生たちを紹介しますね。梶木尚美先生は2018年8月に開催した「ナレッジキャラバン in 大阪 2019」でも歴史の授業をしていただきました。そしてもうひとりは、今やGoogle for Education 界隈で名前をよく聞くようになった原田有先生。情報と物理の若手のホープです。今回は梶木先生が、原田先生は次回に、読書会について振り返っていただくことにします。

少々ムッとしながら

こんにちは!クマユウ先生と同僚の梶木です。大学で歴史学を学び、30年間くらい高校で歴史の教師をやってきました。ただしDP歴史の先生としては1年目。毎日、毎時間、ワクワクしながら高校生と一緒に歴史を学んでいます。

そもそも私が歴史学を専攻したのは、「人間とは何か?」という問いを過去の実例から考えるためでした。私にとって歴史学は、過ぎ去った時間の中にある事象を、現存する資料を使って、現在に蘇らせようと試みる挑戦的な学問です。私の中では「過去→現在→未来」という時間の流れが常にありますし、「時間とは何か?」ということもまた常に意識せざるをえない問いです。

だから「時間はどこから来て、なぜ流れるのか?」というタイトルには十分興味をそそられましたし、物理学者が考えていることをぜひ知りたいと思いました。しかしよく見ると、本の帯には「時間は過去から未来へ流れていない⁉」と書いてあるのです。少々ムッとしながら読んでいくと、時間を流れではなく広がりとしてとらえるのだと述べています。

もっと攻めなきゃ

では、「広がりとは何か?」等々、物理の先生を質問攻めにしながら自分なりの納得を探るという、とても幸せな時間を持ちながら読み深めていきました。もちろん、今でもわからないことがたくさんあるので、これからも折に触れて質面攻めを続けていこうと思っています。

この本は、「時間」というものを物理学の対象である物理現象としてとらえた場合、物理学の方法によってどの程度解明できているのかを知る本だと思います。「時の流れは物理現象なのか?」が妥当なタイトルなのでは?なんて思います。私自身は、意識を存分に働かせて過去・現在・未来を捉えているので、アプローチのやり方が違うのですね。だからこそ、面白かった!いつもは使っていない脳の部分を少し活性化できた気がします。そして、ビッグバンから現在に至る宇宙の歴史もまた歴史の一つであると思っています。

普段読書週間がない生徒たちは「頑張って課題本を読んできたんだなあ。えらいぞ!」と思う反面、もっと攻めなきゃもったいないよ!というのが全体的な感想でした。本を読んでいる間、本や作者と、もしくは自分自身と、私は対話をしたり勝負をしたりしています。相手は著者であったり、小説の中の人物であったり、本の内容そのものであったりするのですが、何か攻める感じの集中です。みんな、受け身であることに慣れてしまっているのではないでしょうか。何かをつかみ取って自分のものにするためには動かなくてはなりません。学びたいのであれば、自分から働きかけることが一番大切だと思うのです。もちろん働きかける方法が分からない時は、助けに行きます。そのために私たちがいるのですから。たくさん読みましょう。そしていっぱい話しましょう。自分はかつて受け身だったなあ…と笑って話せる日がくるさ!と言い続けたいです。

まだまだ続く

このブログを通して、協働学習がときに自分自身の学習の枠を広げ、多角的な視点をもたらすことに言及してきました。そういう目的を達成するためには、自分とは遠い人、異なる人とチームになることが有効であると。

でも自分ひとりではなく、誰かとともに学ぶということの意味や価値を学習者に伝わっていなければなりません。何のためにこの方法を取るのかについて十分に説明されていなければなりません。

これからIBを始めようとする生徒たちにはどのように伝わったでしょうか。次回は原田先生の振り返りを、そしてその次は生徒たちが読書会をどのように感じたのか、感想をお送りしたいと思います。