TOEFL Junior問題集コンセプト版完成

みなさん、こんにちは。熊谷優一です。

この度、TOEFL Juniorの問題集のコンセプト版が完成しました。私は翻訳と解説を担当しています。問題集はAdvanced、Intermmediate、Basicの3つのレベルが発売される予定ですが、その3つから少しずつ抜粋し、一冊にまとめたものがコンセプト版です。いくつかの学校で試験的に使い、そのフィードバックを元に再編集して正式に発売される予定です。

このプロジェクトが始まったのは2年ほど前だったと思います。版権を持っているLearn 21という韓国の会社の方々と会食したのがちょうどこの時期でした。

TOEFLは北米の大学または大学院で学ぶアカデミックな英語運用能力があるかを測るテストです。IELTSと並んで、海外留学する際には必ずと言っていいほどそのスコア提出を求められることが多いですよね。昔(といっても30年くらい前になりますが)は受験料が今ほど高くなく、試し受験しながらスコアを上げていくことができました。しかし、現在は円安もあり、何度も受験するのは金銭的負担が大きくなり、現実的ではありません。

TOEFLはTOEFL Primary、TOEFL Junior、TOEFL ITPと英語学習の段階に応じた試験があり、将来TOEFLを受験するために準備することが可能です。その中でTOEFL Juniorは中学校~高校段階での学術目的の英語学習の到達度を測るために適しています。TOEFL Juniorである程度スコアが取れれば、次にTOEFL ITPで腕試しをして、実際のTOEFLを受験するのがいいと思います。

しかし、TOEFLの問題集がたくさん発売されている一方、学校などで試験を実施する際に事前学習として助けになるようなTOEFL Junior やPrimaryに対応した問題集が日本ではほとんど発売されていませんでした。

韓国では、幼少期から英語教育が重視されており、教材も豊富です。また、TOEFL Juniorの受験者は日本の10倍にものぼると言われています。日本の英語教育とは異なり、国内ではなく国際的に通じる英語運用能力育成が強調されています。

今回発売が予定されているTOEFL Juniorの問題集はadvanced、Intermmediate、Basicの3つのレベルがそれぞれ一冊ずつ、リスニング、文法・語彙、リーディングの問題と解説が収められています。これまでいくつかの私立の学校で実際に生徒向けにこの問題集を使って授業した感触では、一般的にBasicから始めるのがいいかなと感じています。

このプロジェクトに参加することになったのは、私が韓国語と英語ができる日本語母語話者だったからでした。翻訳する問題集は、問題が英語で、解説は韓国語で書かれています。韓国語と日本語とはとても近い言語ではありますが、それぞれニュアンスが異なる使い方をする単語も少なくないので、原本の英語を当たらないと正確に日本語に訳せない箇所が思ったより多くありました。翻訳をしながら、日本語も、英語も、韓国語もずいぶん鍛えられたと思います。

英語の問題を韓国語に翻訳したものを日本語に翻訳したのですが、原本に対してもある程度沿わなければいけません。韓国語の敬語を日本語に訳すところに結構苦労しました。日本語と韓国語は言語的にも文化的にも非常に近い言語ですが、日本語の敬語(待遇表現)が相対的であるのに対し、韓国語は絶対敬語なんですね。それが日本語母語話者には違和感に思える可能性があり、場面や文脈、登場人物たちの関係性を紐解くことが必要でした。日本語と韓国語の待遇表現についてはいつか詳しく書きたいと思います。

大韓民国政府招聘大学院奨学生として延世大学で学び、帰国してもう10年になります。以前、『海外留学のすゝめ』でも書きましたが、精神的にも肉体的にもほんとしんどかったなぁと。なにせ、血を吐くまで勉強しましたからね(笑)。後にも先にも、あれほど24時間勉強のことだけを考えたことはありません。おかげで学長賞をもらえましたが、命あってのことですからね。物事には「程」というものがあるんだと思います。

韓国留学から帰国して8年。ようやく念願の日本の高校で教えられる韓国語の教員免許を取得しました。
無事に延世大学大学院に入学したものの、熊谷に待っていたのは厳しい現実でした。
苦難を乗り越え、無事に延世大学大学院に入学したものの、熊谷に待っていたのは厳しい現実でした。

さて、帰国した当時、もう一度教員をすることになったとき、とある学校の校長先生から「宮城県の英語教員を辞めてまで韓国留学するなんて自己満にすぎない」と言われたことがありました。「それはあなたの価値観で、私のとは異なります」とは言いませんでしたが、さすがにムムムってなりました。

でもそのおかげで、「宮城県の英語教員を辞めてまで韓国留学した」ことをなんとか意味あることにしようと模索した結果が、この問題集につながったのではないかと思います。色んな意味で感謝しています(根に持っている笑)。

まだトライアウト版ですが、自分の名前が表紙に印刷されているのをみて、とてもうれしく思う一方、正規版が出版され、早く学習者に届くことを心待ちにしています。皆さんの英語学習の一助になることを願って。