みなさん、こんにちは。熊谷優一です。筑波大学附属坂戸高等学校で国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)・ディプロマプログラム(DP:Diploma Programme)・コーディネーターをしています。
2017年8月12日(土)に今年度の第2回学校説明会が行われました。第一回目に引き続き、私が担当している国際バカロレアの体験授業・説明会にも多くの中学生、保護者のみなさんがいらっしゃいました。「1回目はたくさん来たけど、2回目はいよいよ誰も来なかったらどうしよう」と心配していたので、ホッと胸をなでおろしています。1回目の様子は「第1回筑坂IB説明会報告」からご覧いただけます。
親子で違ってビックリ
筑坂という学校について全体説明の後、本当は「知の理論」という科目の体験授業を行うつもりでしたが、日程が押して十分な時間が無くなり、急遽、中学生向けに「English B」の課題をアレンジした内容を15分間だけ実施することにしました。以下の『EdmodoCon Japan 2017』で紹介した「au」のコマーシャルを用いた、登場人物のその日の日記を想像して書くというものです。
日記というテキストを用いて、コマーシャルで描かれる登場人物たちの関係性、表情、交わされる会話などの情報から、自分なりに解釈したストーリーに応じて、指定された登場人物の日記を書くわけです。詳しくは、私の生徒と同様のことを取り上げた授業をしたことがあるので、次の『犬は吠えるがキャラバンは進む』シリーズの新作で説明させてください。
授業は親子で参加してもらいました。そして、書かれた日記は回収して目を通させてもらいました。日記の内容、書き方、視点が1つ1つ全く異なっていて、楽しく読ませてもらいました。参加していただいたみなさん、面白い日記をありがとうございます。
とある保護者の方から、説明会の帰りに親子でこんな話をし、「互いの違いにビックリした」とメールをいただきました。紹介させていただきます。
『私にとって日記とは日々の出来事の記録です。自分がわかればいい。だから、箇条書きで書きます。感情は言葉では表せないから、あまり書くことはないです。一方、娘は、日記は記録であるという点では一致するものの、文学的な構成でなければならず、その日のうちに記述されたものでなければならないようです。ほんの10分足らずの授業でしたが、凄く心に残りました』
IBに対する誤解
今回の説明会・体験授業では各DP科目の教科書や最終試験の過去問題も閲覧できるようにしました。説明を聞くだけではなく、このプログラムのことをより広く理解していただくためです。
個人面談を待っている間に教科書をご覧になった保護者の方からはこのような感想を寄せていただきました。
『IBのEnglish Bのハイヤーレベルの教科書を初めて読みました。私、「わかってるようで全然わかってなかった!」と思ったんです。IBの教育が目指しているのは、「言語能力じゃなくて、思考なんだ」って。IBテキスト、親子で見ることを絶対お勧めしたいです』
『日本でIB認定を受けている学校一覧から得る偏見(日本に住む日本人にしてみれば、インターは外国語習得の為に入りたい学校と見ていますからね)もあって、もっともっと言語学習に偏っていると思っていたのですが、熊谷先生が説明された通り、もともとは国をまたいで転々とする外交官の子ども達が、世界のどこに飛ばされても、どの国に行っても差異を感じさせない(自信を持って発信できる)教育を受けられるように発案されたもので、それってつまりは、優先されるべきは語学力ではなく、「どのように考え、どのように発信するか、といった部分で共通項をもたせてあげる」ってとこなんですよね。日本の場合、母国語+英語、の概念が薄いから、どうしても言語習得を含めていかねばならないのだけれど、それでも、IBの目的はそこにないんですよね』
そうなんです。グローバルとか、国際っていうと、どうも英語ばかりが強調される傾向があります。でも、本当は自分がどんな人間で、どんな文化的背景を持っていて、どんな考えをしているのかっていうことを、みんなが分かるような方法で発信・理解できることがグローバル人材に求められるスキルではないでしょうか。
学びあう環境
私が終始一貫してこのブログ(今からIBをはじめる君へ)で主張していることがあります。それは学習者が自らの学びを選択できるような教育制度を設計すること、そしてその全ての選択肢はそれぞれに優劣はないということです。夜間で学ぼうと、普通科で学ぼうと、IBを学ぼうと、それぞれちゃんと意味があるということです。
有名な進学校に行って、有名な大学に行くことが凄くて、工業高校に行って、卒業後就職したことが凄くないんでしょうか。私は全くそうは思いません。要は、目的と実践なんだと思います。そこで何をするのか、何をしたのか。それを活かしてその後の人生をどう生きていくのか…
筑坂は総合学科の学校です。2年生になるとそれぞれの生徒がそれぞれの興味関心に応じて、授業を選択します。1つの教室で同じメンツで勉強し続けるのではなく、毎時間違う仲間と授業を受けることになります。だからいろんな学びがいたるところで同時展開されています。だから、学びの異なりを共有することを生徒たちは楽しみにしています。
そうやって、それぞれの学びを尊重し、その学びを共有し、そこからお互いにまた学びあう環境ってステキなことじゃないですか?
最後に
説明会では、筑坂の生徒たちのことをたくさん褒めていただき、私も(実際に教えている生徒ではないにしても)鼻が高いです。どうぞ、説明会にいらした際は生徒たちと直接話してみてください。生徒たちがどのような学びをしているのか、先生たちはどのように教えているのか、などなど学習者自身の経験から筑坂という学校を知ることができます。
次回は新しい執筆者の登場です。筑坂在学中、クマユウと関わらない決断をした生徒がかかわる勇気を出したという「学びの選択」のお話です。しかし、人のイメージって…そこまで書くかと、読みながら衝撃を受けました。そちらもお楽しみに。
筑坂の第3回学校説明会は8月27日(日)です。体験授業で何をやるかは、その時に会場に来た人たちの雰囲気でいくつかの選択肢の中から決めています。1回目は頭に描いた1個のリンゴ、2回目は登場人物の日記、すべてImaginary Seriesでしたね。次回もお楽しみに!
今日のお別れの曲は、SEKAI NO OWARIで「Hey Ho」です。クマユウでした。