みなさん、こんにちは。熊谷優一です。
国際バカロレア機構(IB)が提供する高校2年~3年生を対象としたディプロマプログラム(DP)は、言語は違えど、全世界共通の日程で各科目の試験が実施されます。その結果によってディプロマ(資格や証明という意味です)が授与されたり、されなかったりします。
試験は各学校で厳戒態勢で行われます。学校がIB認定されるためには2度の公式訪問を受けるのですが、その際に最も厳しく審査せれるのが試験の実質的責任者であるコーディネーターの資質です。試験問題は学校に試験前に一式送られてきますが、中にはコーディネーターが試験問題をコピーして生徒に売っていたという事件もありましたからね。いかに厳重に試験問題が管理され、不正が起こらないシステムと設備を整えるのかはIB認定をもたらすためにコーディネーターは証明する必要があります。
さて、一条校でIBDPを受講しているみなさんは今年は10月22日(金)からディプロマを取得するための最大の関門、最終試験が始まります。試験まであと半年ということもあり、ここで試験の内容と日程をおさらいしておきましょう。でも、DP生のみなさん、今年は高得点を狙えるチャンスです!なぜなら、コロナウイルス感染拡大の影響により、世界中の学校では授業が行えない期間が長くなり、規定の試験範囲を学習内容を終えることができないことが予想されたからです。
というわけで、まずは私が3月までIBコーディネーターをしていた大阪市立水都国際高校の受験科目を例に取り試験と評価の変更点を見てみましょう。
画像に「IA」とあるのは「Internal Assessment」の略で口頭試験だったり、プレゼンテーションだったり、各科目で規定されている所定の評価が行われ、基本的に教科担当者が採点します。「Paper 1」とか「Paper 2」というのが試験です。各科目最低でも基本的には2種類、中には3種類の試験を受けます。「%」はその評価対象が成績(グレード:各科目7点満点)をつけるのにどの程度の割合を占めるのかを示しています。
画像を見ると結構変更点がありますね。1つずつを見ていきましょう。
Group1. 母語の科目では「文学」と「言語と文学」のどちらの科目かをオファーしている学校がほとんどだと思います。Standard Level(SL)、Higher Level(HL)のどちらも、Paper 2が削除されます。よって、生徒のみなさんが最終試験で受験するのはPaper 1のみになります。
Group2. 外国語の科目では「English B」を学んでいますね。SL、HLともにPaper 2のリスニング問題が削除されます。そのことによって試験時間がSLは1時間45分から1時間に、HLは2時間から1時間に短くなっています。大幅に時間が短縮されています。
Group4. 理科の科目では「生物」、「化学」をオファーしている学校が多いのではないでしょうか。Paper 3が削除されました。SL、HLともにです。また、G4プロジェクトが要件から外れています。したがってG4プロジェクトは実施が推奨されているものの、エビデンスの提出は求められません。
「歴史」のPaper 2 がSL、HLともに試験時間が1時間30分から45分に短縮されています。SLではエッセイをひとつ、HLでは2つの世界史のトピックを学ぶことが推奨されていますが、ひとつに
変更されています。また、HLのPaper 3は2時間半から1時間45分に短縮されます。HLでは3つの地域の歴史トピックを学習することになっていますが、それが2つに減り、試験でも2つ答えればよくなります。
一方で変更が全くない科目もあります。Group 5 の数学系の科目、Group 6の芸術系の科目、そして「知の理論」、「Extended Essay」、「CAS」のコア3科目は全く変更がありません。
内部評価(Internal Assessment: IA)に若干の変更がある科目もありますが、大筋ではこれまで通りです。
変更点のあったところを、以下の写真で赤で表示しました。試験が削除されたり、試験の内容が縮小されたりで、配分も変更されています。このことで生徒のみなさんは目標スコアを達成するために戦略をもう一度立て直すことになるでしょう。また、先生方は指導内容と順序を再構成する必要が出てきます。
ちなみに試験日程は以下の画像を御覧ください。これも大阪市立水都国際高校の場合を例にして作成しました。
おそらく、最終試験に向けた模擬試験が各学校で予定されていると思います。きっと7月あたりではないでしょうか。一度、最終試験と同じ時間で問題を解く練習をしたほうがいいです。そこで時間配分も含めて最終試験までに再度戦略を練りましょう。
「Extended Essay」や「TOKエッセイ」の進み具合はどうですか?夏休み以降は試験対策に時間を使えるように、早め早めに仕上げることを心の底から勧めます。とりあえず最後まで一回書く。そして推敲して精度をあげていく。いつまでも何をどう書くかに迷っていてはいけます。まず書く!じゃないと時間はいくらあっても足りません。
お父さん、お母さん、この時期お子さんを見ていてもどかしく思うと思います。夏休みには大学進学のことも決めて、準備してとどんどんやらなければいけないことが増えていきます。子どもたちはいっぱいいっぱいになって情緒不安定になることもあるでしょう。
向き合うのではなく、どうぞ寄り添ってあげてください。面と向かうと話がしにくいかもしれません。無理して話をさせることはないと思いますが、話を聞いてほしそうなときは散歩したり、ドライブしたり、同じ方向を見ながら、おこさんの話に耳を傾けてあげてください。ご飯が食べられなくなるという話もよく聞きます。最終試験は心もそうですが、体も大事。長い試験時間を乗り切る体力も必要です。ご飯をちゃんと食べているか、気を配ってあげてください。
DP生のみなさん、苦しいのは最終試験が終わるまでのあと半年です。そのあとは遊び放題遊ぶつもりで乗り切ってください。みなさんが目指した結果に届くことを祈ってやみません。