「ナレッジキャラバン in 大阪 2019 夏」レポート by 川本敦

みなさま、ごきげんよう。横浜の聖ヨゼフ学園小学校の川本敦と申します。

2019年8月25日に行われた「ナレッジキャラバン in 大阪」が懐かしいですね。本当に素晴らしいイベントでした。次のイベントを心待ちにしている人も多いのではないでしょうか。私も次のイベントを心待ちにしているうちのその一人です。

クマユウさん、松岡さん早く企画してくれないかな。そんな思いに駆られています。

自律した学習者を育てたい

では、私の自己紹介と今回体験授業をさせていただくことになった経緯について少し書かせていただきます。私は元々大阪市の公立小学校教員でした。民間の教育サークルで学ぶ中で、「自ら主体的に学ぶ子どもたちを育てる教育を行いたい」「答えや正解のないことを深く探究することのできる子どもたちを育てたい」という想いを持つようになりました。

そして探究学習を実施していくという私立小学校に異動する機会に恵まれました。そこで出会ったのがIBの初等教育プログラム(PYP:Primary Years Programme)でした。それから7年間様々な方とPYPを研究し、実践してきました。また、ある時からこのブログの前身「今からIBを始める君へ」を知り、読み始めるようになりました。

そして何がきっかけだったかわかりませんが、2019年の3月にFacebookのMessengerで熊谷先生にメッセージと友達申請を送り、翌月に初めてお目にかかりました(笑)。

まだ熊谷先生と出会ってからまだあまり時間は経っていないのですが、熊谷先生と出会った時から「この人は何か違う」とピンときました。そして不意に、熊谷先生から、「PYPの授業実践に興味はありませんか?」とご連絡をいただき、「もちろんPYPの授業実践には興味があります」と返信したところ、今回のイベント「ナレッジキャラバン in 大阪」の講師として体験授業をさせていただくことになりました。

未来・創る・力

次に、私が「ナレッジキャラバン in 大阪」で行った授業を紹介します。

PYPは、探究という時間を中心とした教科融合型の学習となっています。具体的には、年間に6つの領域の教科融合テーマに6年間取り組んでいきます。PYPと総合的な学習や他の探究学習との違いは、概念(Concept)ベースの学習であるということが言えます。概念(Concept)とは、「1.どこの国でも、いつの時代でも考える価値があるもの、2.考えれば考えるほど考えが深まるもの、3.はっきりとした答え・正解のないもの」です。

今回は、「未来・創る・力」のこの3つの概念(Concept)をもとに、授業を創りました。またIBの育てたい10の学習者像は、「Thinker(考える人)」と「Communicator(コミュニケーションできる人)」を設定しました。

まず初めに、協働的な学習の要素を入れたかったので、簡単なゲームでアイスブレイクを行いました。次にフランス人の発明家が、フランスからイギリスへ自ら発明した飛行装置を使って、ドーバー海峡を横断した映像を観ました。そして、ワーク1「未来(2030年)は、どんなことができるようになっているだろう?(Form)」と問いました。まずは個人で3分間考え、グループで5分間考えたことをもとに話し合いました。そして政府が配信しているSociety5.0の動画を観ました。

次に、ワーク2「なぜ未来はこのようになっているのだろう?(Causation)」を行いました。このワークも個人で考えてからグループで話し合いました。最後に、ワーク3「未来を創るための大切な力は、・・・である。(Responsibility)」を行い、「・・・」の部分を個人とグループで考えてもらい、発表してもらいました。これらが今回、私が行った授業になります。

小学生から大人までいる

今回の授業を創るのには苦心しました。なぜかというと、私自身が今まで行ったことがある授業は、大人だけ、もしくは小学生だけのものだったからです。今回は、小学生から大人までいる……。そして小学生は何年生かもわからない……。1年生かもしれない。そんな状況で、子どもも大人も参加でき、ワクワクして探究できる概念(Concept)は何だろう?概念(Concept)をもとに人と協働して学ぶって楽しいなと思える概念(Concept)は何だろうと考え続け、「未来」という概念(Concept)にたどり着きました。

1回目は、大人も子ども混じって体験授業を行いました。2回目は、大人だけで体験授業を行いました。45分という短い時間に3つのワークを入れたので、少し時間が足りなかったのが申し訳なかったのですが、子どもたちも大人もThinker(考える人)、Communicator(コミュニケーションできる人)となり、素晴らしい時間を創ってくれました。

今回の授業を終えて、私自身、大人も子どもも混じって学ぶ大切さ、面白さ、素晴らしさに気づきました。自分の今までの固定観念を一つ破ることができ、熊谷先生が実現したいプラットフォームってこういうことなのかなと少し理解することができました。

最後に

教科横断的な学習、カリキュラムマネジメント、探究……。最近よくそのような言葉を聞きます。自ら主体的に学習し続ける、探究する子どもたちを育てたいならば、教員・大人自身が探究する人であり続けようとすることが大切だと思います。

今思うと私は、「よりよい教育とは何か」という問いをずっと探究し続けているように思います。このブログの読者の方も同じ問いを持っている方も多いのではないでしょうか。

熊谷先生が以前書かれていたように、どの教育にも長所と短所があります。PYPももちろん万能ではありません。しかし、目指す目的は同じです。私はPYPにとても魅力と可能性を感じています。まだまだ馴染みが少ないPYPについてたくさんの方々に興味を持っていただければうれしいです。そしてみなさんとよりよい教育について一緒に学び合い、探究することができればと思います。探究&学びを一緒に楽しみましょうね。