オンライン授業あれこれ

みなさん、こんにちは。熊谷優一です。今回から何回かに分けて、最近多く寄せられているインターネットでの授業をどのようにしているかという質問に私なりにお答えしたいと思います。が、その前に状況をおさらいしておきましょう。

IB校の状況

コロナウイルス感染拡大により、世界中の学校で休校が続いているところがまだまだ多いようです。国際バカロレアのプログラムを実施している学校は約5,300校ありますが、最初に休校になったのは中国、香港、マカオの学校でした。

2月には経営破綻するインターナショナルスクールが出てきたとBBCニュースで取り上げられましたね。9月に新学期を迎える多くの国の学校の生徒たちは5月にディプロマプログラムの試験を3週間に渡って受験しますが、休校していたり、本国に戻ったり、通っていた学校そのものがなくなってしまったりと、受験できる場所を求めて大変だったようです。そういう経緯もあり、5月の最終試験は中止になりました。

発表された日のSNSは世界中でフィーバー(死語?)していました。なにせ、試験を受けなくても、試験に申し込んだ全員にディプロマが付与されることになったのですからね。「こんなに準備してきたのに、試験が中止されるなんて!自分の実力を試したかっただけに残念でならない!」とつぶやきつつ、みんな解放された喜びを隠しきれてはいませんでした(笑)。

5月試験の結果がどのように出るのか、そしてそれが大学入試にどう結びつくのか、コーディネーターとしてはネットワークを駆使して情報を収集しているところです。

日本の学校の現状

様々報道されていますが、全体を捉えているものは多くないように思います。枝葉の先の個々の事例ではなく、日本の学校教育のあり方そのものが問われていると本腰を入れて議論していく必要があると私は考えます。そしてそこには必ず学習者の視点が反映されてほしいと願っています。

日本各地の国公私立で教える知り合いの先生方の話を総合すると、学校が休校になって全国の学校は主に2つの対応をしたようです。ひとつはオンラインで授業を継続すること。もうひとつは課題に取り組ませることです。どちらにせよ、課題はあります。

オンラインで授業をするにしてもインフラが学校、教員、生徒がいる場所に整備されていなければなりません。インターネット回線の状況によっては切断されたり、とぎれとぎれになってしまったりということもありますし、住居環境によっては落ち着いて授業ができない、受けられないということも考えられますよね。すべての個人が個室で取り組めるというわけではありませんし。

課題に取り組む場合は、その課題をどう学習者に届けるのかというのは議論が分かれるところです。家庭訪問という形で、届けているという学校の先生もいましたし、毎週郵送しているという学校の先生もいました。メールなどで送っていたり、学習支援ソフトで配布したりという所も多いようです。

学び方の選択肢を考える際に

いずれにせよ、それはやり方の問題であって、学習の目的とゴールが念頭にあっての選択・決定なんじゃないのかなと私は思います。オンライン授業が優れているわけではありませんし、課題をこなす学習方法が劣っているわけではありません。それを通して何をどう学ぶのかに焦点が当てられ、限られた状況の中で、最大のパフォーマンスを期待できるのはどれかということではないでしょうか。

ただ、時代はオンラインで学ぶことがどんどん可能になってきています。そしてそれを私自身は歓迎しています。なぜなら、どこにいても学ぶことが実現できるからです。住んでいる地域によって学習格差が生まれない新たな仕組みが構築されようとしているからです。

しかしながら、一方で私は危惧しています。学ぶことはオンラインで完結しません。実学を通した経験的な学びも一方では非常に重要です。芸術、体育、農業、工業、家庭科、理科など実技や実験をともなう科目を家庭で学ぶことには限度があります。また実学を通した学び方を志向する学習者がいることも忘れてはいけません。

最後に

学習内容と方法が議論されるとき、いつもその念頭に学習がいてほしいと私は強く願望します。学習の主役はあくまでも学ぶ人にあります。

たとえ環境が整っていて、オンライン授業が可能だとしても、学習者はオンラインで学ぶことのスキームが構築されていなければ、困惑するでしょうし、オンラインで学ぶことの意味がそこに提示されていなければ、オンライン授業が最善の学習方法である必要はありません。

一方、課題を出して、それに取り組ませるといっても、それをなぜ、どんな目的で取り組むのかという意味がなければ、それが最適の学習方法とは限りません。このことは宿題についてもよく言われていたことですね。すでにできていることに取り組ませたり、理解できていない難易度の高いものを宿題に出したり。

画一的に課題を出すことではなく、学習者に最適化した課題の出し方を教員が学ぶ余裕が必要なのではないでしょうか。

今回はオンライン授業について現状を確認しました。次回は、アナログ志向の私がどうオンライン授業をしているのかについてお話したいと思います。今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。