海外留学のすゝめ その2

みなさん、こんにちは、熊谷優一です。前回は、8年越しに韓国語の教員免許を取得して、ちょっと有頂天になっていた感が文章から見えますね。

韓国留学から帰国して8年。ようやく念願の日本の高校で教えられる韓国語の教員免許を取得しました。

今回は、語学研修を終え、無事に延世大学大学院に入学したものの、早々に壁にぶち当たった話を書こうと思います。いやぁ、その当時の私の「生涯打ちひしがれランキング」を更新する打ちひしがれ方をしました。IBの仕事をするようになって、そのランキングは毎年のように更新されていますが……。

恥ずかしすぎて

韓国のどの大学院に応募するかは、今後韓国の人たちと付き合うときのことを考えながら選びました。韓国は学歴社会。どの大学に行ったのかが非常に重視されます。したがって、韓国の人たちから一目置かれる大学に行かなければ、評価されてないと思い、延世(ヨンセ)大学大学院を受験しました。

延世大学はSKY(ソウル・コリョ・ヨンセ)と呼ばれる、韓国の中でもトップ3に入る大学と言われています。自由な雰囲気と国際性も豊かなことと、私が学びたいことに直結する研究所があったのであまり迷いませんでした。合格通知が来たときはそれは嬉しかったです。

でも、入学してみたら……厳しい現実に直面することになります。私はその当時30代中盤。大半の生徒は20代半ば。アジョッシ(おじさん)なわけです、私。そんな中でもオッパ(年下の女性が年上の男性をお兄さん的に呼ぶ言い方でこの耳障りがなんとも心地よい)と呼んでくれる同級生もいて嬉しくも、なんとも歯がゆい思いをしました。

完全に長老の私が一番の落ちこぼれでした。私は全然授業についていけていませんでした。それはもう恐怖です。何もわからないんですから。焦りました。そして何より年下の優秀な人たちに完敗していると思うと恥ずかくてどうにかなりそうでした。

負けるもんか

私は授業についていけない自分が、こんなにも年下の奴らに負けている自分が悔しくて仕方ありませんでした。現状を打破するには勉強することしかありません。恐らく、あのときの私は勉強すること以外何も考えていなかったと思います。ただ負けたくない一心で、授業についていくことで頭が一杯で、勉強することに没頭していました。

劣等は私の活力と言っても過言ではないのですが、没頭しすぎると正体を失ってしまい、プラスに働くときも、マイナスに働くときも振り幅が大きいのにはいつも困ってしまいます。でも、この時は勉強していないと恐怖というか、強迫観念にかられていてもたってもいられないというか、勉強し続ける呪いにかけられたかのように、毎日毎日24時間寝ずに勉強しました。

そして、ある日の真夜中。私はついに血を吐きます。そりゃそうでしょうよ。猛烈なストレスを抱えながら、何日も寝ないでただただ勉強ばっかりしていたんですからね。しかし、私はこの時、やっぱりおかしかったんだと思います。吐けばだいたいスッキリすると思って、また勉強しだしました。

余談になりますが、探究型の学びを進めるとき、こういう没頭しすぎるタイプの生徒はいると思います。先生はそれを見越して、授業をデザインし、やりすぎないように授業のフレームを設定することは大切だと思います。

人にやさしく

血を吐いて、スッキリするだろうと思ったのもつかの間、徐々に体に力が入らなくなっていきます。「あれ、何だかおかしい」と思ったときには、椅子から床に崩れ落ちていました。しばらくの間、私は世界が回っているような、宇宙に浮遊しているような感覚を他人事のように覚えていました。が、いよいよ、本気で具合が悪いんだってことに気づきます。

というわけで、しばらくじっとしていればなんとかなるだろうという程度では絶対済まないと、朝まで待つことを諦め、救急車を呼ぼうかとも思ったのですが、それは流石に気が引けて、なんとか大通りまで出て、タクシーを拾い、大学構内にある延世大学附属病院の救急に向かいました。タクシーの運転手さんは、私を乗せるなり、「お客さん、生きている人の顔色じゃないよ。本当に具合が悪いんだね。急ぐから少しの間我慢してね」と優しく言い、救急の先生に私を送り届けるところまで付きそってくれました。あのときの運転手さん、本当にカムサハムニダ。

しかし、そこからが悶絶の始まりだったのです!若い女の先生にお尻から手を入れられ腸内に出血がないか調べられたり、鼻の穴から管を入れ、胃洗浄したり……。で、朝が来て、手術室の空きを見て、胃を手術しました。もともと胃炎持ちだったので、それが悪化して吐血したようでした。

最後に

外国で病気になるのは本当に心細いものです。幸い、韓国人の友人がすぐに付き添ってくれたのですが(そういえば、その友人は私が韓国で膝の手術をしたときにも付き添ってくれました)、それでも入院手続きから何から具合が悪い中自分がやらないといけないので、困りました。

さすがに退院してからは、しばらく休み休み勉強を続けました。自分の不安もコントロールしながら、体を壊さない程度に学ぶことを覚えました。それを続けていたら、なんと成績優秀で延世大学の学長から表彰されました!それまでの人生で、勉強で褒められたことがなかったので、めっちゃくちゃ嬉しかったです。賞状は今でも大切にとってあります。

とはいえ、留学生活では何があるかわかりません。安全と健康が第一です。これから海外留学する人は自分の心と身体にもしものことがあるかのうせいがあると準備や対策をしておくことを勧めます。

そして、今は日本国内に大学進学した学生のみなさんもコロナウイルス感染拡大の影響で学業の継続に支障をきたしているかもしれません。文科省が「学生支援緊急給付金」を創設しています。私が韓国政府の国費留学生の募集を知った日本学生機構のHPでも「緊急特別無利子貸与型奨学金」を案内しています。色々と調べてみると支援してくれるところはもっとあるかもしれません。みなさんの学業が継続されることを心より願っています