『共に考える“教育の未来”~Education in the Future~』と題したイベントが新潟県柏崎市で開催されたのが9月23日(日)のことでした。このイベントを企画したのが市内で内科医をしている星山彩子さんです。彼女の呼びかけにたくさんの方が賛同し、大成功を収めました。
私は筑波大学客員教授キャロル・犬飼・ディクソン先生の基調講演の通訳として本イベントに参加しました。今回は柏崎市民発信によるこの教育に関するイベントについてレポートしたいと思います。
ともに考える“教育の未来”in 柏崎
みなさん、こんにちは。熊谷優一です。思い起こせばこのイベントの企画が持ちあがったのは昨年末のことでした。実行委員長を務めた星山さんにも今年3月に当ブログ(チノメザメ)でも書いていただきました。
どういういきさつで私が参加することになったか、全く記憶にないのですが、気が付けば企画書に通訳として名前が入っていましたし、国際バカロレアのプログラムのうち、高校生を対象としたディプロマ・プログラムのコア科目である「知の理論(Theory of Knowledge)」を体験するワークショップをすることになっていました。
『共に考える“教育の未来”~Education in the Future~』と題したこのイベントは「柏崎で、日本で、世界でよりよく生き、貢献できる国際人の心を育てるための学びのカンファレンス」と説明されています。こうした教育に関するイベントが市民の発案で企画されたことにも共感しましたし、まだ国際バカロレアの認定校がない新潟県、しかも県庁所在地でない柏崎市で行われるという点にも興味をそそられました。
新しい学び方のアプローチ
イベントは筑波大学客員教授キャロル・犬飼・ディクソン先生の基調講演「A New Approach to Learning~新しい学び方のアプローチ~」で幕を開けました。70分に及ぶ講演で、私はキャロル先生の通訳を務めました。
キャロル先生はなぜ今、私たちは教育の在り方について考えなければいけないのかについて、時代背景を丁寧に説明されました。キャロル先生の言葉を伝える通訳の私はというと……打ち合わせもそぞろに雑談でキャロル先生と盛り上がってしまったため、キャロル先生が話している間、私は死に物狂いでメモを取りました。今世紀最大に集中したと思います。
私の詰めの甘さは病気のレベルと後悔しつつ、中学生から年配の方、外国の方も見えていたので、ところどころ例を挙げたり、補足説明したりしながら通訳しました。終わってから、キャロル先生の旦那さんに、「熊谷さんの通訳はやさしいなぁ」って言ってもらい、額を拭いました。
インターネットにより世界の人々と、あらゆる言語で記述されたり、映像化された知識に簡単にアクセスできるようになった今日、私たちがよりよく生きていくために身に着けるべき知識やスキルは横断的であるべきだという話に頷かれた方も多かったようです。講演後の質疑応答も大いに盛り上がりました。
その後に行われたワークショップにはこういう風に勉強したい、勉強したかったという声を聞きました。今回は個人的な知識と共有されている知識、そして私たちが知っていることはどのように知っているのか、知ったのかに焦点を当てて2つのアクティビティを行いましたが、私もお題を出しておきながらたくさんの気づきをいただきました。
ZERO to ONE
こういうイベントには肯定的なものもあれば、否定的なコメントもあります。しかし、すべての声に耳を傾ける実行委員長を務めた星山さんに、イベント終了後にこのように伝えました。
ひとりの思いが、たくさんの人々を巻き込んで、実行委員会を形成し、紆余曲折ありながらも、イベントを終えることができました。星山さんは点在する情熱を紡いだのです。実行委員会の一員として、イベントへの参加者の一員として、ゼロをイチにすることができました。もしも星山さんが動かなったならば、今もゼロのままだったでしょう。だから星山さんには自信をもって、やり切ったと言ってほしいです。
星山さんは、「このイベントの企画運営そのものがアクティブ・ラーニングでした」とおっしゃいました。たくさんの人たちとの関わりの中で生まれたネットワークをさらに広げてより本格的なうねりを柏崎のみなさんが起こしてくれるものと期待しています。
今後は、あなたと私は同じであるという感覚を持ちながらも、国際人として多様性に対して寛容な心を持つ子供たちを育めるような街を目指したいとお話しされていたのが印象的でした。
最後に
最後に、実行委員会長の星山彩子さんからのコメントをいただきたいと思います。柏崎のみなさん、お世話になりました。またお会いできることを楽しみにしています。
『IBと出会い、キャロルさんと知り合って発案に至ったこの企画、初めはこの地方都市で開催できるのだろうかと不安もありましたが、多くの方々のご協力で実現することができ、感謝の気持ちでいっぱいです。
アンケートからは、参加者の満足度が概ね高く、また今後も継続してこのような教育に関するイベントの開催を期待する声も聞かれました。新しい学び方、教育改革は子供たちだけのものでなく、今を生きるすべての人たちが関わることです。
今後は、哲学対話など自由に意見を言える場を定期的に提供したり、多言語でのイベントを開催したりすることを通して、子供も大人も学びを楽しみ、学びに関心を持ち続けるような働きかけができればと思っています。いつか熊谷先生が故郷、宮城県で上映している『Most Likely to Succeed』の映画上映もできればうれしいです!』