台湾のIB校より vol.2

大家好。阿部公彦です。台湾は台中市にある学校で第二言語としての日本語(MYPでいうLanguage acquisition)を担当しています。

そういえば、熊谷先生は韓国の外国語高校で日本語を教えていたこともあるそうですね。つくづく掴みどころのない人だなと感じます。それが何か人と違うにおいを放っているのだと思うんですが……

さて、今回は私が苦悩した話から始めます。

自分に足りないもの

2015年9月に、私は香港で開催されたディプロマ・プログラム(DP:Diploma Programme)のLanguage B Japaneseを受講し、未知なる国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)の世界に足を踏み入れました。アジア中で日本語を教える様々な国籍の先生たちと出会い、IBの教育方法を学び、私はワクワクが止まりませんでした。そこで手に入れた知識や考え方はかけがえのないものとなり、私にとってこのワークショップは非常に充実したものとなりました。

ただ、その後の私のIBに対する取り組みはそれほど順調ではありませんでした。特に、その1年後に参加したMYP(Middle Years Programme:ミドル・イヤーズ・プログラム)のワークショップでは、本当に何もできませんでした。

色々準備することが多く、より実務的なDPに比べ、より哲学的で霞を掴むような話が多いMYPを英語で理解することが難しかったことも理由の一つです。

でもそれ以上に大きな問題は語学力の問題です。日本語で行われたディプロマ・プログラムのワークショップに対してMYPのワークショップは英語で行われました。参加者そのほとんどが英語のネイティブスピーカーもしくは英語の教師という状況の中、普段は中国語で生活し仕事に必要最低限のレベルにも達しない英語力の私、どのくらい惨めな状況だったかはみなさんも容易に想像がつくのではないでしょうか。

熊谷先生がワークショップでの苦労を「EdmodoCon Japan 2017」で述べていらっしゃいましたが、熊谷先生のようなできる先生にとっても高いIBワークションプのハードル、正直私にとっては崖に見えました。

参加したEdmodoCon Japan 2017について

それは休憩時間の度、調子が悪いと言いホテルに帰ってしまえば、きっと楽になれると悪魔がずっと私の耳元で囁いていたほどでした。

多様性の狭間で

また、特にアフリカや南アジアからの先生が話す英語は、普段私が聞いているカナダ人やアメリカ人が聞いている英語と発音やイントネーションが異なり、聞き取ることも十分にままならない状況でした。

ただ、私が彼らの言葉が理解できない理由はそれだけではありませんでした。これは彼らの話し方に少し慣れたときに感じたことですが、考え方やロジックが異なるのも相手の言葉が理解できない大きい原因だったのです。このことも普段外国に住んでいて、欧米やアジアからの同僚に囲まれて一丁前の国際人ぶっていた私にとって大きな衝撃でした。

日本人は特に、同じような人たちと小集団を作り、そこで何事も解決したがるところがありませんか?そうではなく、異なる言語、異なる人種、異なる考え方など、自分とは異なる文化を持った人と一緒に何かをやるという経験は今後ますます必要なことだと思いました(次回自らの反省も込めてこの話をじっくり書かせてください)。

私自身、英語はもちろんのこと、カナダやアメリカ、中国や台湾だけではなく、もっと多くの人と会い、もっとグローバル化をし、視野を広げなければならないと感じています。

IBに対する理解と、自分自身のグローバル化というのは、指導者として私も、今後ずっと付き合っていかなければならない課題だと思っています。

現在の取り組み

MYPの教え方というのは、私にとって非常に難解で、絵柄が複雑で凹凸のないジグソーパズルのようでした。特にそれまで取り組んでいたCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)の流れをくむ日本語教育スタンダードに、「探究テーマを開発し、探究の問いを利用する」というMYPの教え方を理解し組み合わせるのが私にとって非常に難しかったからです。

それでも、徐々にではありますが自分なりの答えが出てきてはいます。その一例を紹介します。

現在、中学2年生の日本語のクラスで「日本人旅行客に対するアンケート調査」というプロジェクトを進めています。日本語を使いたいという声が学生から上がっていたため、なぜ日本語を学ぶのかという疑問と問いかけたところ、「日本人を知るため」という答えを学生が導き出し、「では日本人を知るために何ができるか?」という問いから出た答えが、「日本人旅行客に対するアンケート調査」という流れから実施することになりました。

学生は、「どうすれば日本人に快く答えてもらえるのか?」という問に対し、話し合いを重ねます。教師はスキルとしての日本語を指導するという方向で指導しています。

私もIBを始めたばかりです。正直これがベストなのか、どれほど効果が上がるのかはまだわかりません。ただ、嬉々として準備や練習している学生を見てちょっと安心しているのが本音です。

最後に

おそらく5月には実際空港に行きアンケートを取りに行くことになりそうですが、でもよくよく考えてみると、これは随分昔から日本の英語教育でも行われていたことです。

そこで改めて思ったのは、日本の教育の素晴らしさであり、またIBと融合した日本の教育がどのような光を放つのかということへの期待です。

初めて日本の皆さんに向けて、教育についてブログを書くので、どんなものを書いたらいいのかわからないので、以前書かれたみなさんの文章を参考にして書きました。特に生徒のみなさんの高校生が書いたとは思えない素晴らしい文章を前に恥ずかしくないように書きましたが……いかがだったでしょうか。

熊谷先生からはレギュラー執筆者として書いてほしいと言われています。一教師として日本の教育から学んでいきたいことが山ほどあります。ブログをきっかけに、ぜひ日本の学校のみなさんといろいろな情報を共有させていただけたらと思っています。

ご指導のほどよろしくお願いします。では、またお会いしましょう!