Heroes:追悼 歴史学者 大村幸弘先生

本ブログでも私が最も影響を受けた教育者として紹介してきた歴史学者・大村幸弘先生が5月20日、トルコ共和国カマンの地でお亡くなりました。昨年、9月にお目にかかり、お話を伺ったときにはお元気で闊達に歴史学者としての情熱を語っていらしたので、突然の訃報に際し、本当に驚いています。謹んで、大村先生のご冥福をお祈りいたします。

日本人がメソポタミアやトルコの遺跡を掘流のは何故か。松本健先生と20数年ぶりに熊谷がお目にかかった大村幸弘先生の対談は胸熱くなるばかりです。

先生から学んだことは私の中に確かな知識として生きていますが、私の問いを受け止め、視野を広げるような知の巨人からの答えを聞けないかと思うと寂しくて仕方がありません。歴史学者として何千年も前の遺跡を発掘されてきたからか、大村先生の時間の捉え方は雄大で、その雄大が時の中での自分の一生を捉えているようにお話を伺って感じてきました。

先生はいつもおっしゃっていました、自分の一生でわかることはほんのわずか。知識とはそんな簡単なことではない。人類は何世代にわたって知識を発見し、分析し、言語化し共有する。だから人類にとって教育は大事なのだと。その話を私は今から20数年前に、トルコの遺跡を訪問したときに大村先生から伺い心震えたのを覚えています。

熊谷の教育者観に最も影響を与えたのがトルコで出会った大村幸弘先生でした。

先生は「知識のバトン」を繋ぐため、いつも未来を見ていたように思います。昨年お目にかかった時も、トルコで発掘調査が再開できるよう文科省や外務省に掛け合っているとおっしゃっていました。先生の年齢を考えると再びトルコの地で発掘できないかもしれないけれども、発掘調査再開の灯火を途絶えさせてはいけないと色んなところに働きかけているようでした。

先生がトルコの発掘現場でお亡くなりになったという訃報に残念な思いでいっぱいなのですが、先生の人生をかけた遺跡があるカマンの地に再び踏めたんだなと嬉しくも感じます。先生から学んだたくさんの人が先生の思いを受け継ぎ、知識を明らかにしていくことを心から願っています。

先生、本当にありがとうございました。