2018年3月25日~27日までシンガポールで行われたIB Global Conference 2018に参加してきました。年1回行われるこのカンファレンスは昨年横浜で開催されましたよね。あの時は文科省から参加費のサポートもあり、多くの日本の学校が参加しましたが、今年参加した学校は少なかったようです。
確かに3日間のカンファレンスで1,500シンガポールドルかかるので、さすがに躊躇しますよね。でも、発表すると参加費はディスカウントされるそうです。発表した茗渓学園の松崎先生から直接聞きました。そう、松崎先生の話から始めましょう。
日本のIB実践に高まる関心
茗渓学園でDPC(ディプロマプログラムコーディネーター)をされている松崎先生とは、2か月に1回は会って情報交換をしています。一緒に学校視察に行ったり、授業のことを相談したり、話しているだけで刺激をもらえるそんな先生です。その松崎先生がカンファレンスで発表するというのですから、勝手に同志と思っている私としては駆けつけないわけにはいきません!
発表時間はたっぷり60分。会場は日本の国を挙げたIB実践に興味を持つアジア各国、そしてヨーロッパからも大勢の先生たちで盛況です。松崎先生は発表直前になって、日本の伝統的学校教育の文化として小グル―プでの活動を紹介したいのだが、東日本大震災被災地出身者として、当時気仙沼小学校で避難生活をしていた小学生が発行した『ファイト新聞』のことを話してくれないかと無茶ブリしてきます。「NOと言えない日本人」の私は、「わかりました」という以外の選択肢を失い、どのタイミングでどれくらい話せばいいかを確認しなかったために、松崎先生よりむしろ緊張して松崎先生の発表を迎えました。
発表の詳細は松崎先生に直接書いてもらうとして、私が驚いたのは多くのIB関係者が日本の実践に非常に高い関心を寄せているということです。終わってから松崎先生のみなならず、私まで質問攻めにあいました。ニーズも把握できたことだし、来年、香港で開催されるカンファレンスでは松崎先生と私(まだ言っていませんが、できれば仙台育英の石田先生)とで発表しようと盛り上がっています。
反省しがちな日本人の私たち
ただ、ひとつだけ私は松崎先生の発表に不満がありました。それは何かというと、松崎先生は発表が終わってからというもの、ひとしきり反省の弁ばかり述べるのです。あれがよくなかった、これがダメだったと、ずーっとずーっとネガティブな振り返りばかりをしているのです。
松崎先生!正当にあなたの発表を評価しましょうよ!発表が終わってからたくさんの人があなたの周りに集まって、囲み取材みたいになってたじゃないですか!発表中もたくさん質問の手が上がったし、各国の実践もあなたが振ったからいろんな先生が参加できたじゃないですか!
もしかしたら、たかがクマユウ風情が言ったところで…ということなのかもしれませんが、松崎先生はなかなか自分の発表のよかったところを認めないんですよ。でも、そこに我々教員も学習者の振り返りをするときのTipが隠れているように思いました。
いかに反省させることなく、自己評価をさせることができるか。自己肯定感が低い決定的な原因は正当な振り返りをするスキルだと思います。何はともあれ、松崎先生の発表は面白かったし、2日目のGala Dinnerの時にもたくさんの人から称賛されていました。
量から質の時代
開会行事ではシンガポール大学の教授が「詰め込み式教育あるある」を、指導者として自虐的に爆笑を誘いながら、熱のある話をしたのが印象に残っています。必要以上の学習量を課しがちだという話は日本でもよく聞く話だなぁと……。「from Quantity to Quality」と題したこの講演では、学習量は学習の質を担保しないと結論付けていました。
さて、DPC向けのセッションでは、今後のDP実践に関する変更点が説明されました。2018年2月にリリースされた「Coordinator’s Note 2018 February」にすべてのDP科目の改訂日程が詳しく書かれているので、アクセス権を持っている方は「My IB」から「Programme Resource Centre(PRC)」に入り、目を通してみてください。
カンファレンスで取り上げられたのは今後4年間のDP科目の改訂の概要です。各DP科目は7年ごとに見直され、新しいガイドライン(学習指導要領のようなもの)が発表されます。今年はEnglish Bが新しくなりますね。2019年からは数学が新しい科目に移行します。2020年はTOKで大幅な変更があります。2021年は理科系の科目が新しくなります。
各科目の改訂版科目ガイドは候補校、認定校にオープンになっているPRC(プログラムリソースセンター)に順次アップされますので、定期的にチェックすることをお勧めします。残念ながら日本語に翻訳されたものは即時にはリリースされないので、英語で読むことになると思います。IBの文書はIBの公式言語でリリースされるので、どうしても英語、フランス語、スペイン語のどれかとは切り離せない部分があります。
新しい科目ガイドがリリースされるとワークショップの内容も一新されます。例えばTOKは2020年から新しいガイドラインに則った授業が開始されるので、遅くても2019年にはそれに対応したワークショップが開かれるはずです。DPCの先生はカリキュラムレビューの時期に合わせて、科目担当の先生たちをワークショップに送る計画を立てておくといいでしょう。
最後に
IBのカンファレンスは昨年の横浜に続いて2度目の参加になります。ワークショップやこういう機会に世界中で知り合ったIB関係者と再会するのもまた愉しいことです。今回は昨年秋にはオランダで行われた「Programme Standards and Practices」の改訂プロジェクトで一緒になったアムステルダムのインター校の校長先生とも再会しました。彼はその後、ジャカルタのインター校の校長になっていました。お互い、新しい職場に移り、それでもIBにはかかわり続けています。その輪が日本国内だけでなく全世界に広がっているところが面白いなと感じています。
私はシンガポールに行く飛行機の中でえらいひどい風邪をひいて、発熱し、薬を飲んでも熱が下がらず、せっかく松崎先生の発表が大成功に終わったにもかかわらず、祝杯を挙げることもできませんでした。最終日にはせめて一杯だけでも乾杯を交わしたいと、必死に休みました(!?)。
結局、帰国間際にようやく体調が上向いて辛うじて乾杯することができましたが、私たちはなぜか滅茶苦茶テンションが上がっており、お互いターミナルは違うというのに出発ギリギリまで、これからのことを話し合いました。一緒にやりたいことが今、山ほどあります。楽しみでしかありません。
松崎先生とはあんなに話し込んだのに、帰国して2日後に大阪でまた会いました。夏休みの中学生かっていうくらい頻繁に遊んでいる感覚ですが、一応IB関係の仕事で会って、ついでにまた話し込んでを繰り返しています。こんな出会いがIBに関わっているとたくさんあるので、結果楽しくなるんですよね。
さぁ、みなさん。IBと言わず、21世紀の学びについて一緒に考えてみませんか?点在する情熱を線でつなぐ。松崎先生と話したことを思い出したら、そんなことができたらいいなと、今すごく思っています。
ね、松崎先生!ということで、次回はいよいよ私の中のスーパースター、茗溪学園中学校高等学校のDPC、松崎秀彰先生の登場です。どうぞお楽しみに!