福祉科が語るCASと日本的教育

みなさん、はじめまして。熊谷優一(クマユウ)先生と同じく筑波大学附属坂戸高校で働いている福祉科の熊倉悠貴(私も実はクマユウ)です。私の方が筑坂では勤務年数が長いので、元祖クマユウは私です。今後ともお見知りおきください。

筑坂はハナミズキがまだキレイに咲いています。

今日はディプロマ・プログラム(DP:Diploma Programme)のコア科目の1つであるCASについて話させてもらいます。DP科目の中では外部試験がないので、一見地味な科目に見えますが、これは日本の学校教育が最も得意としている分野だと感じています。

CASとは?

CASとは、Creativity・Activity・Service(創造性・行動・奉仕)の頭文字を取ったものです。アカデミックな学びと平行して行われ、先生が教室のなかで教科書を使って教えるようなものではなく、時間割外に生徒自身が自ら考え、自ら実行するものです。

何か創造的で、汗をかくような行動を伴い、誰かのために行われること、と言うとイメージしやすいでしょうか?日本の学校では、例えば委員会活動や、部活動などがズバリCASっぽい活動です。

前述のとおり、CASには他のDP科目のように内部評価も外部評価もありません。取り組んだことが評価され、また、段階的な評価ではなく、国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)が示す以下の7つの学習成果を達成したかどうかを評価されます。

1. 自分の強みを認識し、成長できる部分を伸ばす。
2. 新たな挑戦をし、その工程で新たなスキルを伸ばす。
3. 自らCAS活動を計画し、実行する。
4. 責任感を持ち、根気よく活動を遂行する。
5. 他人と協力して行うことに利点を見出し、スキルを発揮する。
6. 地球規模における重要な課題に取り組む。
7. 活動における倫理的な意味を考え、行う。

The Impossible Dream」で熊谷先生が『日本の伝統的学校教育にもいいところはたくさんある。』と言っていました。そのなかで被災地の掃除のことや壁新聞に取り組む小学生のことが挙がっていましたが、まさにそのような取り組みがCASなのです。

公式オープンに寄せて熊谷優一が夢を語ります。

日本の伝統的学校教育とCAS

日本の学校には、偏差値の高い低いに関係なく、どの学校にも委員会活動や部活動、掃除の時間があります。小学生の時から当たり前のようにやってきたことなので、そうした活動の中で他の人と協力して進めることや、自ら行動することは、改めて頭で考えなくても、私たちの身に染みついているものです。

だから、震災のときも誰かが指示しなくても、役割分担をして掃除をすることができたのでしょう。壁新聞もきっと小学校で作ったことがあり、それを読んでもらって嬉しかったこと、他の人のものを読んで楽しかったから、誰に言われるでもなく、自分たちから壁新聞を作ったのでしょう。

イケてる図書委員会

本校の図書委員会は、毎月図書だよりを発行し、全生徒と全教員に配布しています。図書便りの中には、今月のおすすめの本を紹介するコーナーがあったり、クラスごとの貸出累計が報告されていたりします。

また、文化祭では本に興味を持ってもらうために、絵本の世界を教室一室に再現して、絵本の世界を体感できるようにしていました。生徒は純粋に本が好きで、自分から図書委員になりたいと手を挙げたものたちです。頻繁に図書室を利用する生徒以外にも本の魅力を伝えて、もっと本を好きな人を増やしたいという気持ちから、先生に言われるでもなく、自ら行動してきました。

文化祭での取り組みも、先生に言われたからやったことではなく、生徒が発案して先生に相談し、実行したそうです。

本校の図書館の取り組みは、絵本の世界を体感してもらえるように教室を装飾したり、レイアウトしたりして空間を創造したという意味で、Creativity(創造性)、Activity(行動)、Service(奉仕)のうち、Creativity(創造性)に当てはめることが出来ます。また、自ら図書便りを作成し、図書館の利用者を増やすことへ貢献したという意味で、Service(奉仕)に当てはめることもできます。

学びと経験を可視化する

このように、日本の高校生は普通に学校生活を送っていくことで、CASを満たす取り組みを行うことができています。図書委員以外にも、どの学校にも掃除の時間があり、自分が使った教室以外にも掃除をします。

体育の時間には、マラソン大会に向けてトレーニングを積み、日々の記録から目標タイムを設定し、それをクリアできるように取り組んでいます。それらをCASにしていくためには、自分たちが行ったことを言語化すること、振り返りを行うこと、記録を残しておくことです。

本家クマユウが「ふるさとの子供たちへ vol.1」で自分の経験や学びをいつでも見せられるようにしておくことの重要性を書いていましたね。それがチャンスを掴む上で、必ず役にたつと。CASでも計画段階から、実行、振り返りまで、自分の活動の記録を作成します。まさに、ポートフォリオですよね。

自らの経験を踏まえて、進学の芽を探ることを熊谷優一が提案しています。

最後に

これまで日本の教育現場に当たり前にあった課外活動について、私たち教育関係者は言語化して評価してこなかったかもしれません。しかし、IBがCASとして整理してくれたおかげで、私はその価値を再認識することができました。

このように、日本の学校が当たり前にやってきて、あまり言語化してこなかったものにこそ、日本の教育の価値が潜んでいるのではないでしょうか。

本校は総合学科の高校で、専門教科もたくさんあり、CAS的な取り組みは当たり前のようになされています。それを言語化して発信できるように、私も頑張っていきたいと思います。