「ナレッジキャラバン in 大阪 2019 夏」レポート by 山崎哲嗣

みなさんこんにちは。今回「知の理論」(TOK:Theory of Knowledge)を担当しました、大阪女学院の山崎哲嗣です。ヒゲとメガネがアイコンの国籍不明なオッサンで思い出していただけるかと思います(笑)。

私を形成する3つの成分

公開授業では自己紹介しませんでしたので、この紙面をお借りしてアピールをば。なんか婚活みたいですね(笑)。ちなみに既婚者です。ヨメが1人(当たり前か!)、娘が1人おります。

私はたぶん次の3つの成分で出来ています。
・哲学:名前からそうなってしまったのか、大学は宗教哲学を専攻、キルケゴールを研究しました。
・陸上競技:小学校はじめ大学では中距離選手でした。教員になってからはコーチをしています。
・音楽:中学からバンドを始め、今はボーカルを2つかけもち。年間10数本ライブをしています。

もともと社会科教員ですが、ここ数年は中学生の課題研究レポート授業を立ち上げて担当、そして国際バカロレアDP(Diploma Programme)クラスのTOK担当をしています。今回は何かおもろいことやるで~、しかもうちが会場やで~、ということでもちろん喜んでお引き受けしました。

信じるということ

今回はTOKの「つかみ」だけやりました。目的はふだん無意識に判断していることを意識化してみることです。ジャンルは宗教や信仰について。以下、投げかけたお題の項目だけ載せるのでいろいろ想像してみてください。

●イントロダクション 夏の風物詩といえば…怪談!?

●目に見えないこと
・なんでお墓まいりするの?
・幽霊やお化けっていると思う?
・神社のさい銭箱に蹴りいれたらバチがあたる?
・「事故物件」買いますか?

●信仰・信用 = 言わずもがなの前提?
・あなた何教?ってきかれたら
・四天王寺の門前見て「ここがヘンだよ!?」
・誰にでもウナギをご馳走したらダメ?
・私の当たり前、あなたの当たり前。
・タクシーに乗って行き先告げたらほんとうに無事到着するって誰が決めたん!?

Coach / Facilitator / Mentor

1回目の参加者は中学生から大人まで、2回目は全員同業者でした。どちらもリラックスした雰囲気のなか、それぞれが思っていることを4人ずつのグループでシェアしました。欲を言えば倍の時間があれば、さらにお互い踏み込んだ展開が期待できますね。

面白かったのが中学生たちの意見や発想。大人が気付かなかった思いがけない発想や洞察に、年齢や立場を超えてセッションすることの良さを改めて思いました。それは日常の授業でもそうですが。

私自身の反省としては、申す少しファシリテートに徹すればよかったかなと。これも言い訳ですが限られた時間のなかである程度の着地点を意識しすぎたかもしれません。これからの、というより本来教員はteacher(知識を教える人)であるよりも、coach(技能を指導する人)・facilitator(促す人)・mentor(共に学ぶ良き先輩)であるべきでしょう。

最後に

ビジネスの世界では「政治・宗教・野球」の話はご法度とされますが、それだけ人それぞれ確信や譲れないものがあるジャンルだからでしょう。ちなみに生粋の関西人である私は当然阪神タイガースファンですが(この時点で偏見・信仰?)。けれどより良い社会を築くには文化・立場・信条の違う人と協同することが大切です。

今回なぜ宗教・信仰のジャンルをとりあげたかというと、日本の文化や教育の中であまり意識化されていないと思っているからです。この原因は、比較宗教学的には日本の場合多くはアニミズムや自然崇拝がベースにあって、創始者や教祖のいる創唱宗教がメジャーでないからだと分析しています。加えて伝統的な創唱宗教も江戸時代や明治維新を通じて、教義を知らずとも「〇〇教徒です」と言える社会であることでしょうか。

いっぽうで世界の国々・文化・民族は自分たちの宗教や信仰を日常的に意識し、具体的な生活の指針とする人々も少なくありません。先日東京都が発行する外国人観光客の接待のパンフレットを見ました。そこには詳しく、特に食物規定・宗教的禁忌が書かれていました。当たり前のことですが、それぞれに違うバックボーンがあることを、日本文化の中で生活している私たちは今まで無頓着だったかもしれません。

グローバル化が否応なしに進む現代社会の中で、人が生きていくうえで大切にしていることを知ること、なぜそう思っているのか考えてみることはますます重要になるでしょう。違いを違いのままで受容すること、平行線は平行線のままでいいこと。平和とは同質化ではなく、多様性の共存の上で成り立つのだと私は信じています。

だって考えてみてください、日常の、例えば学校のクラスメイト、職場の同僚・上司・後輩など、みなさん日頃からそれを実践されてるでしょ?それから夫婦の関係(これ大事!結婚は偉大な異文化理解の実践!笑)なんて、そうしなければ戦争ですからねぇ…。

そういうわけで、私がTOKの授業でよく言うことは、”Not agree,but understand”(同意しなくても理解する)です。言うは易く行うは難し、でもそれを目指してこれからも学び続けていきたいですね。