ナレッジ・キャラバン at 筑坂 (2018.04.19) 前編

離任が発表されてから、たくさんのみなさんに激励のメッセージをいただきました。心より感謝申し上げます。と同時に、今度筑坂に入学されるIBコースの保護者のみなさんからは、心配する声もいただきました。

私を頼って坂戸でIBをやると決めたとおっしゃっていただいたみなさん、たかが一教員がそんな風に言ってもらえるなんて想像もしていませんでしたので、本当にうれしかったです。しかし、心配されるのももっとも。国内外のあちこちで説明会を開いたり、体験授業を行ったりしてきたのは私ですし、こうしてブログで情報発信しているので、筑坂のIBについては私がみなさんに最も近い存在でした。なので、私の不在がみなさんを不安にしていることはよく理解しています。

しかし、筑坂に常駐はしませんが、定期的に訪問し、生徒のみなさんや先生たちをサポートすることになっています。

Knowledge Caravan

坂戸を訪問したのは4月19日のことです。退職して1か月もしないうちに訪問したということもあり、廊下ですれ違う生徒たちも、「ああ、先生、来たの?」みたいなノリで、たいして驚かれもせず、若干寂しさを覚えました。もうちょっと、歓迎してくれてもいいじゃん……。

今回の訪問の主目的は韓国からの視察団のアテンドと、入学したばかりの坂戸IB一期生との特別授業です。何事も形から入りたがる私は、その授業に「Knowledge Caravan」なんてタイトルを付けてみました。今後これがまたいろんな場所で、いろんな人を対象にできるようになったらいいなと思っています。

さて、授業はIBの入門的な内容と英語力の確認を目的に約1時間行いました。ゴールは物事を自らの基準によって分類することができることと、正当に自分の活動を評価することができるマインドを持つことです。

授業はまずは「be worried/nervous about ~」を用いて、「今現在、不安に思っていること」を5分間で各自9つピックアップすることから始めました。それをみんなでシェアします。「Cocktail Party Exhibition」というアクティビティです。立ちあがって、一定の時間内で2~3人程度と自分の考えを共有します。同じを話を繰り返すことによって流暢性が養われることを期待しています。

その後、グループでピックアップしたものをどんなキーワードで分類できるかを話し合い、その結果をポスターセッションの要領で説明、質疑応答を行います。この過程でどれだけ英語で意思疎通が可能かをみます。でも、英語を使わなければならないとは言いませんでした。

生徒間のコミュニケーションの特徴を把握することも大切です。自分の意見を言える生徒、控えめな生徒、議論を回せる生徒などなど、ここでそれぞれの個性を把握することで、ファシリテーターとして生徒個々人にどのような支援が必要か、対策を練ることができます。

分類&振り返り

分類はそれぞれ面白い基準でなされました。すべてのグループで「Study」「English」「IB」「School」などのキーワードで分類されていましたが、中には大きなくくりとして「Myself」を設定し、その中で心配事を細分化するグループがあったり、最初は他のグループに質問もコメントもありませんでしたが、最後のグループになるころには、「その分類はこっちがいいんじゃないか」といった意見も飛び交うようになりました。

その結果、議論は各グループのプレゼンテーションを超え、みんなで課題を創造的に解決する場になります。クラス・ダイナミクスが開始20分くらいで実現したので、私は、「この生徒たち、こりゃもっともっと行ける」と思った瞬間、彼らは分類の枠組みを変え始めました。分類はそれぞれ独立するものではなく、重なりがある。だったら「ベン図」が使えるじゃないかと。

あー、これ、もうクマユウいらないパターンだ……。あとは生徒たちが勝手にやっちゃうやーつです。ここはこの議論にどういう意味があるのかを振り返りに使おうと、その過程を詳細にメモをしました。

誰かが問題提起をし、そこでみんなそれぞれが自分のこととして、ああだこうだと意見を出し合って、そのうちにひらめくという過程です。これを私は当ブログの新しいタイトル、「知の目覚め(チノメザメ)」と呼んでいます。

もしも、1人だけで考えていたんだったら、ここまで到達しただろうか?誰かと協働して、何らかの結果を出すときにはどのようなスキルや態度、気遣いが必要だろうか?彼らがその後自分自身でその日のことを振り返ったときに、何らかの気づきを自分の言葉で説明できたらいいなと願っています。

最後に

その後、授業を見に来た何人かの先生に、彼らが今心配していることを話してもらいました。一生懸命英語で話そうとする先生たちの発言からまた一つ、気づきが生まれます。彼らは自分自身のことではなく、家の屋根の修理にかかる費用や家族や同僚や故郷の友人など、誰か自分以外の人や物事を心配事にあげました。立場や年齢に応じて、心配する範囲が変わり得ることを生徒たちは感じたことと思います。

締めくくりはいつもの、その授業内でIBの学習者像のうち自分はどんな人だったか、5つのApproach to Learningのうち、その時間内でどのようなスキルを駆使したのかをチェックします。そして、反省に終始しない振り返り方ができるように、その時間内にやったことのうち、何をやめ、はじめ、続けたほうがいいのかを言語化する「Stop/Start/Continue」で終了です。

今回の授業を通じて、伝えたかったのは3つあります。不安として最も多く挙げられた英語を戦略的に勉強しようということ、他の人の考えを聞いて自分の考えがよりまとまったり、ブラッシュアップされたり、異なる視点で考えられたりすることができるから、他の人と一緒に取り組むことは重要だし、自分の意見も同様に他の人にとってヒントになりうること、そして自分の取り組みを正当に評価するスキルを持つことです。

たった1時間で盛り込みすぎだったかもしれません。そういえばもうひとつ当初予定していなかったアクティビティを入れました。ほのめかす程度で収めましたが、それは次回のナレッジ・キャラバン at 筑坂 (2018.04.19) 後編で紐解こうと思います。筑坂IB一期生のみなさん、また来月、授業ができることを楽しみにしています。