街角TOK:私の声が聞こえますか

みなさん、ご無沙汰しております。宮城県の公立高校で養護教諭をしている阿部富子です。ナレッジキャラバンを主催している熊谷優一とは、彼がまだ宮城県の公立高校で英語教諭をしていた頃に、本吉響高校という総合学科の学校で6年間をともにしました。

気がつけば出会ってからもう20年が経とうとしていることを驚きつつ、結局変わっていないというか、より明確に自身のことを語れるようになったのかなとこのブログを読むたびに思っています。

先日、おばあさんの命日にリリースされた「13月」シリーズの新作も拝見しました。私の親類にも一年航海とか、一年半航海で、遠洋漁船に乗って、たまにやってくるおんちゃん達を思い出しました。

このシリーズだけは止めないでというリクエストに応えて、熊谷とおばあさんの悲喜こもごもを描いた13月シリーズ最新作です。

さて、その直後にリリースされた「街角TOK:橋を渡らない人々」を読んで考えたことを今日は書こうと思います。ほんとに、私の中でもいろんな思いがよみがえってきました。

不意に聞こえてきた歌を聞いて、熊谷は教育者としての原点を振り返ることになります。

私の声が聞こえますか

あれは東日本大震災直後のことです。街も学校も生徒個々人も、誰にとっても経験したことがないほどの規模の被災状況でした。そんな中、保健室で子どもたちと私はどう向き合えるのだろうか……。何十年も養護教諭をしてきましたが、全てが手探りでした。

被災した生徒に寄り添う時、頼りになるのは視覚ではなく聴覚でした。表情では読めないことが子どもたちが発する声の中に見えたのです。私はその音にただ耳を澄ましました。

声なき声。か細い声。つぶやき。少数派の声。

子どもたちの声は雄弁に彼らの心を語っているようでした。そこで私はハッとしたのです。

どれだけの声を置き去りにしてきただろう

今までどれだけの声を置き去りにしてきただろう……。声の大きな生徒の声だけ聞いてきたのではないか。こちらの都合で聞きたいとこだけを選んで聞いてきたのではなかったか。うまく伝えるすべを持たないけれど、言いたい、聞いて欲しい子どもたちの声を、受け入れる雰囲気を醸し出していただろうか。

私はいつも、ヤンチャで元気いい子たちの扱いは好きだったし、うまくいっていたように思っていたました。でも、おとなしくて意思表示や自己表現をうまくできなかった、いや、していたのに、していないとか、やる気あるのかと、こちらが決めつけて、関係性が遮断されていた子らも、多数いたのではなかったろうか……。

熊谷優一が自身の教育者としての軸足を振り返ったのと同じく、私自身も養護教諭としての私を振り返ることになりました。

闇の中で手を取り合って歩く道

震災後、私はナラティブ・アプローチを学んできました。

ナラティブ・アプローチでは、一寸先が見えない濃霧の中、クライエントが主役となり、脇役のカウンセラーはひたすらクライエントの手を握り、音のする方を一緒に確認しながら、光が見えそうなところを、一緒に探索します。

一人では不安だけど、一緒に手を握って同じ方向に向かうことにクライアントは安心感を持ち、前に進めていけそうなといったイメージが私のナラティブ・アプローチにありまして……。熊谷優一が「一緒に橋を渡ってあげる人になれたら……」と書いていたところでそのことを強く感じました。

昨日も、1時間で早退すると決めてきた生徒が保健室を訪れたんですが、結局その日の終わりの授業まできちんと授業を受けたんですね。ちょうどブログのエントリーを読んだところだったので、ではその時の生徒への関わりは養護教諭としてどうだったのかを担任の先生と話しをしていました。

最後に

震災からまもなく9年が経ちます。この時代ならではの、この地域ならではの子どもたちの不安、心配、悩み、葛藤があります。いかに、そのとき、そこで起きているであろう彼らの気持ちの揺れを想像できるかが私の課題だと思います。

想像力は武器だと前に何かで読んだ記憶があります。やっぱり私は、ひときわその場その場、その子、その子に合った想像力をかきたてて、これからも子どもたちと向き合っていきます。

熊谷優一はおばあさんの生き様を介して、教育とはなんぞや、教育者のありようを考えたようですね。こちらも自分自身を振り返るきっかけをいただきました!毎度、ありがとうございます!

最後にお知らせです。私が勤める志津川高等学校情報ビジネス科2年の「電子商取引でのインターネット販売を学ぶ」の授業の一環として今年も「南三陸おすばでパック」の販売が始まりました。平成27年度から始まった「志津川高校地域特産品の通販パック実習」も今回で8回目となりました!

今回の付属品は購入していただいた方々へ志高生らしさ・南三陸町の香りを伝えられるものと考えて今「震災から9年を経過して思うこと」という題で2年1組全員が書いた作文集を作成し,パックに入れることにしました。南三陸のおいしさと香りを感じてもらいながら、私たちそして南三陸町民の「いま」を感じていただけたらと考えました。

この機会に特別な商品セットをお楽しみいただけばと思います。お申し込みはこちらのリンク。3月11日までの受付けです。応援よろしくおねがいします。