「IB認定校への道 -IBの先生になるには2-」ではどのようにしてワークショップに申し込むのかについて、解説しました。今回は、どうすれば国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)の先生になれるか、将来IBの先生になりたい学生のみなさんに向けて書きたいと思います。
IB教員になるには
2012年10月に「IB Answer」に投稿された「どうすればIB教員になれるか」という質問に対して、IBは「IBのプログラムを教えるには公式な資格は特に必要ない」と答えています。つまり、誰でもIB教員になることはできることを示唆しています。
ただ注意が必要です。よく読んでみると、「採用される学校の募集条件」によるということが書かれています。ということは採用する学校が、「IBワークショップに参加していること」を求めれば、ワークショップに参加した履歴がなければ応募できません。IB教員になるためにはどのような学校で働きたいのかということを考える必要があります。
まずは一条校(いわゆる日本の学校)で働きたいのか、インターナショナルスクールなど一条校ではない学校で働きたいのかということです。
日本では現在、IB認定校を2018年までに(平成30年度の概算要求には2018年に修正されていました)200校にする方針で文科省が動いています。現在たくさんの学校が候補校申請を行っています。また候補校として認定申請を行っている学校も多いですね。認定されるためには、確認訪問(Verification Visit)までに各科目担当者がワークショップに参加していることが義務付けられています。
したがって、一条校では新たにIB教員を採用するというよりは、現在はすでにその学校で採用されている先生がIBワークショップに参加し、IB教員になることが多いようです。初任者は初任者研修という法定研修が義務付けられており、毎週一日学校を開けることになるので、ある程度経験を積んだ教員がIBを担当することが多いようです。
学校種で異なる免許
教えたい学校の種類によって、IBのワークショップに出ただけではIBの先生として働くことができない場合があります。先に述べた、日本国内の国公私立の学校、つまり一条校で働くのか、そうでないのかということです。
一条校とはおさらいすると、「学校教育法」第一条に定められている学校で、いわゆる日本の小中高校です。学習指導要領に従って授業が行われる学校です。私立も国公立も含みます。それらの一条校で働くためには、日本の教員免許状が必要です。したがってIB科目を外国人教員が指導する場合は特別免許状の取得が必要です。
一方、一条校でない学校は、学習指導要領によらず、学校独自のカリキュラムを組んでいます。インターナショナルスクールなどの各種学校が該当します。採用に当たって、その学校独自の条件を設けており、日本の教員免許状は必ずしも必要ありません。
つまり、一条校でIBの各種プログラム、つまり小学校段階のPYP(Primary Years Programme:プライマリー・イヤーズ・プログラム)、中学校段階のMYP(Middle Years Programme:ミドル・イヤーズ・プログラム)、そして高校段階のDP(Diploma Programme)の先生になるためには、まず日本の教員免許を取得していなければなりません。ワークショップに参加しているだけでは一条校でIBの先生になれないことを、学生のみなさんは肝に銘じておいてください。
一条校のIB認定校が求めるIB教員像
このことについて、いろいろな学校のコーディネーターの先生や管理職の先生とお話しすることがあります。総じて、一条校の現場ではIBを教えられる先生というよりは、IBも教えられる先生が求められるようです。
インターナショナルスクールでは、学校全体はIBのプログラムを実施しているところが多く、入学したらIBのプログラムをすべての生徒が受けますが、日本の一条校ではIBのプログラムは数ある学科やコース、プログラムの1つで、募集する定員もその他の生徒と比べて人数は多くありません。
つまり、教員免許状を持っていて、IBの授業のほかに、学習指導要領に則った授業も実践できる人材が実際には求められているということです。私自身もIBの科目だけ教えているわけではありません。IBの授業と一般の授業を同時に受け持っています。
ただ、インターナショナルスクールでIBの先生になりたいみなさんは、この限りではありません。私は十分な情報を持っていないので、各インター校のホームページなどを参考にしてください。
IB教員養成コース
現在、いくつかの大学院や大学でIB教員養成コースが始まっています。詳しくは以下を参考にして下さい。
ただ、もう一度繰り返しますが、IBを教える一条校の教員になるためには、例外なく日本の教員免許状が必要です。また、大学院でIB教員養成コースを学んでも、その教科の専修免許は付与されません。別途必要な単位を取ることになるでしょう。専修免許は給与に反映されますから、ただ単に興味関心でIB教員を志すだけでなく、現実的に、また戦略的にキャリア形成を考えることを勧めます。
最後に
当ブログ(今からIBをはじめる君へ)をご覧になっている教育関係者のほとんどは、一条校の先生、将来一条校の先生を目指している方だと思います。
「IB認定校への道 vol.4 IBの先生になるには」と題したこのシリーズは今回で3回目になりますが、1回目と2回目では主に、現在すでに一条校の先生として教壇に立っている先生方を対象に書いてきました。そして今回は、これからIBの先生になろうと思っている学生のみなさんを対象に書いてみました。あまり説教臭く聞こえないようにと心がけたつもりですが…どうだったでしょうか…。
次回4回目はこのシリーズの最終回です。ワークショップの裏ワザ的考え方について書きたいと思います。どうぞお楽しみに。