広がる?デュアル・ランゲージDP in 韓国

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私は大韓民国政府大学院奨学生として延世大学の修士課程で勉強したこともあり、ある程度、韓国語を話します。私はもともと英語教員ですが、実は英語圏での留学経験はありません。実は、私が英語を最もよく学んだのは韓国ででした。世界中から集まった国費留学生たちの共通言語は英語だったからです。

日本語母語話者の私は言語の近さもあり、比較的早く韓国語を修得するので、時に通訳をし、時に彼らに韓国語を教えることがありました。私は韓国語と英語の流暢性を一度に獲得することができました。そしてその時のネットワークと語学力がIBコーディネーターとして私を支えてくれています。

韓国におけるIB

韓国で国際バカロレアの教育プログラムを実施できる学校種は特別に認められた会社立の1校を除いてインターナショナルスクールのみです。インター校には韓国籍の生徒は入学できないので、外国籍の子供たちしかそのプログラムを受けることができません。

しかし、現在、韓国語と英語によるデュアル・ランゲージDPの実施が検討され、IBOとの間で交渉が進められています。だから、韓国の教育に従事する方々が最近日本に視察に来ています。昨年韓国のEBSというテレビ局で放映されたドキュメンタリー番組がありましたよね。

取材クルーとそれを指揮するイ・ヘジョン教授とはずいぶん前から知り合いで、日本における取材のコーディネートは私の前任の学校のお母さんにお願いしてやっていただきました。

3月にシンガポールで行われたカンファレンスでも、韓国から参加されたみなさんとお話ししましたが、みなさん韓国の教育を変えたいという熱意を持った方々ばかりでした。こういった時に、英語ではなく韓国語で話ができると、より生の感情を伴った思いを聞き取ることができます。

韓国では知っての通り、熾烈な大学入試競争が繰り広げられています。私も韓国の高校で教えたことがあるので、見ていて子供たちを気の毒に思うことがありました。どの大学に行くかで自分のキャリアが決まる。子どもたちはみんなそう信じていました。

だから朝から深夜まで勉強しています。眠くなると、立って勉強します。でも、その勉強が本当にキャリア形成に役に立つのか、十分に検証されていたでしょうか。

Beyond University

4月19日、私の前任の筑波大学附属坂戸高等学校に、サムソン電子が2014年にソウルからKTXで約1時間弱のところにある忠南市に設立した高校の先生たちが視察に見えました。その日は筑坂に定期訪問する日だったので、通訳もかねてアテンドしました。

校長先生は韓国で唯一インター校以外でIBのプログラム実施を認められた高校の初代の校長先生で、私も一度その学校を訪問したことがあり、また筑坂の生徒を招待してもらったこともありました。その校長先生がサムソン電子が設立した学校の初代の校長となり、IB認定校を目指しています。

副校長はサムソン電子人事部の部長です。質問攻めする私に部長が語ったことは、日本でも語ってほしいと心から願っています。日本に長らく滞在されていたので、日本語も堪能ですから、講演に来ていただけたらと思っています。部長はこのようにおっしゃっていました。

“ これまでサムソン電子では熾烈な大学入試競争を勝ち抜いてきた、韓国でも一流の大学を卒業した学生を採用してきたが、実際入社して社員として優秀であったというわけではなかった。韓国は国土も狭く、市場も大きくないため、世界を相手にビジネスを展開していかなければならない。だから大学卒業後に、グローバルマーケットで勝ち抜く人材を育てないといけない。そのためには教育を変えないといけない。一流大学に入学することをゴールにしてはいけない ”

忠南サムソン高等学校

話を聞いていて、実際に学校を見に行きたくなった私は、5月にたまたま韓国出張が入っていたので、忠南サムソン高等学校を訪問しました。忠南市はソウル駅からKTXに乗って約30分、そしてそこから車で10分くらいのところにあります。案外近くて拍子抜けしました。

忠南サムソン高等学校は2014年に設立された男女共学の高校で、現在の生徒数は約1000人とのことでした。定員の75%はサムソングループの子息、25%が一般入試で選抜され、「Beyond University」をスローガンに世界で勝負できる韓国人を育てることを目指しています。

面白いのは入学後66日間合宿するところです。途中家族と会えるのは1日のみ。合宿生活を通して自律した学習者として習慣づけるのに必要なのが66日ということでした。そして体育の授業をきっちり行っていたのが印象的でした。

忠南サムソン高等学校では授業は最大でも20人を上限にし、きめ細かい指導をしています。さすがサムソン電子が作っただけあって、施設は素晴らしく充実していました。実践的な探究型の授業を通して、問題発見から解決に至るまで試行錯誤のプロセスを重視しています。

何人かの生徒になぜこの学校に入学したのかと聞きました。理科の実験をしていたある女子生徒は、「大学入試の準備のために高校3年間を費やしたくなかった。実験を通して自分がたてた仮説を確かめたかったし、その設備も、時間も豊富だから」と答えていました。広い知識を身に着けることよりも、何か学びたいことがはっきりある生徒にとって、この学び方がぴったり合っているのだと思います。

最後に

忠南サムソン高校の先生方とお話しして、また私は思いを新たにしました。異なる国に生まれ暮らし、異なる言葉を話し、異なる文化を持っていても、教育者が共有するのは教育に対する情熱です。IBに携わるようになって感じるのはいつもそこです。韓国の先生たちとも会うやいなや、話が止まりませんでした。

どんなコラボレーションをしようか。毎週メールでやり取りしています。そしたら韓国の他の学校の先生も交じって、時に英語、時に韓国語、そして日本語で議論しています。IBという世界に触れなかったら私にこんな機会はあったかなと思いつつ、生徒達には「教えるってすげー楽しい!」って早く伝えたいです。

さて、次回は台湾の明道中学(台中市)というIB校で日本語を教える阿部公彦先生の久々の登場です。阿部先生とは、9月15日に未来の先生展で仙台育英高校の石田真理子先生、茗溪学園高校の松崎秀彰先生と一緒にワークショップを開く予定です。学校を超えて、国を超えて、先生たちが繋がることで、子供たちが学ぶ機会も増えるよねってみんなで話しています。忠南サムソン高校の先生方にも来ませんかとお誘いしているところです。

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