ToKtober Fest 2020:あなたの知が目覚めるとき

街角は様々な問いで溢れています。本屋さんに並ぶ書籍、アーケード内で聞こえてくる音楽、やがて暗黙の秩序が生じる無秩序な人の流れ、商店街で交わされる一見無意味な会話。普段はなんとも思わないことがふと気になりだしたら、それが私たちの「知」が目覚めの合図です。

ToKtober Fest 2020開催

国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)というヨーロッパ由来の教育プログラムが今、日本の学校に導入され始めています。高校2~3年生を対象としたディプロマプログラムには世界共通必修科目として「Theory of Knowledge(TOK)」という科目があります。学問の言葉で言うと、「認識論」のことですね。もうちょっと大雑把に言うと、「私(達)が知っていることは、一体どのように知っているのか」のついて考える高校生向けの科目です。

これまで、当ブログでは身近な実社会の状況から、そんな些細な疑問を取り上げて来ました。少しずついろんな視点を取り入れているつもりですが、「街角TOK」というシリーズでは、私の中に起こった疑問を取り上げることにより、私なりの疑問へのアプローチについて述べています。

というわけで、本日から「ToKtober Fest 2020」と題して、これまで当ブログで取り上げてきた知の理論を視点をもう一度振り返って見たいと思います。

キミの世界を作るのはキミ自身だ!

何かについて考えたら、人に聞いて欲しくなる。人がどんな意見を持っているのか聞いてみたくなる。それが学びの始めの一歩だと思います。自分と違う視点を得て、もう一度自分の考えを吟味する。自分の考えを補填するために知識を史料に、専門家に、実社会に求めます。そんなことが学校だけでなく、家庭でも、どこでも起こったら、学ぶことは楽しくてしょうがなくなるんじゃないかなと。

教科書の読み方だって、計算の仕方だって、年表の見方だって、絶対に変わります。興味が溢れて止まらなくなります。知識は有機的に結びつき、応用され、また新たな形となって、それは螺旋状に発展を続けます。

子どもたちが自ら問いを立て、自分の世界を創るのは他人ではなく自分自身だというマインドが育ってほしいと願っています。それが伝えたくて、「ぼくらの世界(仮)」を書きました。

永遠の小学3年生、仁くんが主人公の新シリーズのはじまりはじまり。

あなたの知が目覚めるとき

フィニアス・テイラー・バーナムという19世紀に活躍したアメリカの興行師を描いた「グレテスト・ショーマン」というミュージカル映画の中に、「This is me」という歌があります。その歌のリハーサルの模様が記録されていて、私は何度も何度も見ては思わず泣いてしまうんですよね。ぜひ、みなさんにも見てほしいです。

自信がないのか、マイクスタンドの後ろで細い声で歌っていたキアラが、思い切ってマイクスタンドを下げ、みんなの前に出て歌い始めます。勇気を出して、覚悟を持ってキアラ・セトルという一人の人間として堂々と「This is me」という歌の世界を届ける過程でその歌詞と自分がリンクしたのではないでしょうか。ほとんど泣いてますもんね、歌いながら。彼女の知が目覚めた瞬間です。そしてその目覚めが周りに共鳴していきます。私達は世界に影響力をもった一個人なのです。

もしも子供たちが世界を変える影響力を自分は持っているって感じたら、人生ははるかに違うと思うんです。

誰かの物差しで自分を測って自分はダメな人間だと思いこまないでほしいと私は思って授業をしています。自分はこうなんだとありのままの自分自身でいる勇気を持ち、誰よりもそのことを祝福してほしいと思って知の理論を教えています。そして親や社会にもそのことが祝福されたらいいなと願って、私は先生をしています。子どもたちが、「自分って!」って気づく瞬間に立ち会うことができたら、それほど嬉しいことはありません。

最後に

知の理論というIBの科目は、自分がどのように世界を認識するのか、他の人は世界をどのように認識しているのかと問う授業だと私は思っています。自分の限界も知りつつ、他者の視点を知りつつ、より平和な社会を作っていく一員として、自分自身を見つめる手助けを私は指導者として意識しています。

教科横断的学習という言葉が最近盛んに言われるようになりましたね。でも、私は最初から違和感を抱いていました。そもそも学ぶことに境はありません。知識は関連しているからです。教科科目中だけで成立しうる知識ってあるんでしょうか?古典の中に自然科学を覚えることってあったじゃないですか。英文法の中に生物学のシステムを感じることってあったじゃないですか。

自分自身の知識を通して、自分自身の知り方を通して、私達は自分がどういう人間なのかを学んでいきます。だから思うんです。全ての学びの過程はセラピーだと。

さぁ、これから始まるToKtober Fest 2020を通して一緒に考えてみませんか?みなさんと知識の旅をご一緒できるのを楽しみにしています。