今からIBを始める君へ:学問の伴走者

みなさん、こんにちは。高橋七浦子と申します。大阪のIB校で文学(Literature)の授業を担当しています。勤務校が熊谷先生のお知恵を借りている関係で、このプロジェクトを知りました。参加させていただけて、光栄です。よろしくお願いします。

私の研究対象

私は教員としては15年目、IB教員としては4年目になります。国際バカロレア・ディプロマプログラムのLanguageA:Japanese Literatureを担当しています。

私自身の専門分野は、文学の中でも、古典文学。その中でも、平安王朝文学を主としています。特に『源氏物語』は、大学時代から20年以上続けている研究対象になります。

熊谷先生とは、本校がIB教育を始めた当初に知り合いました。それから本校のDPCを通して、幾度となくお力を貸していただいています。本校はナレッジキャラバンの会場にもなったりしていて、今回このプロジェクトにお誘いいただきました。

めっちゃ頭使う!

IBを知ったのは、6年前、勤務校の大阪女学院高等学校がIB教育を始めると決めた時です。初めて概要を聞いたとき、まず「面白そう」と感じました。

その後、すぐにワークショップに参加して、「楽しい!でも、めっちゃ頭使う!」と思いました。が、だからこそ、「めっちゃ楽しい!」とはまりました。

教員として、一条校である学校で、どれだけの事が出来るのかと試行錯誤しながら、準備し、授業を行っています。昨年、初めてのIB生の卒業生を出しました。現在は、DP1の学生を担当しています。

生徒と一緒に考える事が出来る関係性

Literatureは合計13冊の本を扱わなければなりません。本一冊まるごと学習対象とします。

何を読んでもらうのか、内容の善し悪しなどを考え始めると、13冊に絞るのがとても難しいです。また、授業も単純に内容が理解出来ればよいのではなく、様々なことを考えながら、生徒自身が考えることをしなくてはなりません。

学校のセンセイとしては、すぐに答え(一般的によいとされる)を言ってしまいたくなるので、これを我慢することに苦労しました。しかし、生徒たちが自由に意見を出し合って行くうちに、こちらが思いも寄らない結論を導き出したりする瞬間に立ち会うと面白くてしかたがありません。単純に「教える」「教えられる」関係ではなく、「一緒に考える事が出来る」関係性が作れるのも、IB教育ならではだと思います。

最後に

いわゆる日本の教育と違うので、びっくりすることも多いかと思います。そして、日本の教育、とくに国語教育になれてしまうと、「正しい答え」が出てこないことに戸惑います。しかし、文学の中にある「正しい答え」は読者の数だけある可能性があります。学校教育で提示される「答え」はそのひとつに過ぎません。複数ある答えの中で自分が一番良いと思える答えを「他者に正確に伝える」ことが、IBの本質なのだと思います。

それを行うためには、文学では、まず文を正確に読み解くことが必要となりますし、幅広い知識が必要になります。それを取得するために、IB生は多くの試練を乗り越えていくことになるでしょう。それは辛く、途中で辞めたくなるほどかもしれません。

しかし、乗り越えた先にIB生を待っているのは、今までとは違う世界です。自分で考え、辛さも何もかもを自分の糧にしていける新しい世界です。それを知ったとき、自分の世界が大きく広がっていきます。力強く歩いていくことができる人間を作り出します。

さらに、それを見守る保護者にも、大きな喜びとなるはずです。また、教員は成長するIB生たちと伴走することによって、思ってもみなかった自分を発見するでしょう。いくつになっても、自分は成長できる。それを発見することになるでしょう。

多くの日本の方にとって、IBはまだまだ未知の世界であり、飛び込むのには勇気がいる世界だと思います。しかし、飛び込んでみなければ分からない良さがあります。ぜひ、飛び込んで来てください。