皆さん、こんにちは。熊谷優一です。今回は前回に引き続き、本ブログでもお馴染みの岩崎永光里さんへのインタビューをお届けします。岩崎さんは、私が以前IBコーディネーターをしていた大阪市立(現府立)水都国際高等学校のIBコース(国際バカロレアディプロマプログラム)一期生で、IBディプロマを45点満点中42点で取得し、現在はメルボルン大学で学んでいます。
メルボルン大学に進学するにあたり、JASSO(日本学生機構)の奨学金をメルボルン大学からの奨学金と合わせて受給することにより、第一希望の大学進学を実現しました。今回はJASSOの奨学金の申請書類を書くにあたっての苦労話から始めましょうか。
熊谷:そういえばJASSOの奨学金に応募する際、申請書作成に結構苦労してたよね?
岩崎:そうですね。生まれて初めて徹夜しました。しんどかった。本当にしんどかったです。そして、熊谷先生、お世話になりました。
熊谷:いえいえ、どういたしまして。何が一番しんどかった?
岩崎:自分の将来を明確に提示する必要がありました。しっかり考えてからと思ったのですが、提出期限が迫られていて、自分がどういう人間になりたいのかを考え、それらを言語化するのが本当に辛かったです。考えれば考えるほど沼にはっまっていくような感覚で、自分は自分自身がやりたいことはふわっとしていると思えてきたり……。自分のアイデンティティは?将来は?興味は?と明らかにするのにすごく手間取りました。
熊谷:しかし、奨学金取れてよかったよね。本当に良かった。メルボルン大学って世界ランキングで30位くらいの大学だったよね。
岩崎:そうですね。でも、学費は本当にびっくりするくらい高いんです。日本円で年間400万くらい。それが3年間で1,200万円です。プラスで生活費がかかります。だから、メルボルン大学からもらえる奨学金だけだと全然足りませんでした。
熊谷:大学では何を専攻するの?
岩崎:理学部環境工学です。リサイクル技術や廃棄物処理、太陽光のリサイクル技術に興味があります。
熊谷:42点でディプロマを通ったということは、各科目でほぼほぼ満点だったよね?北米の大学だと、入学後教養科目が免除されることがあるけれど、オーストラリアではどうなの?
岩崎:メルボルン大学ではHLのスコアで教養科目免除はありません。大学準備(ファンデーション)コースと同等の扱いがされます。ただ、IB生はファンデーションは免除されるので3年で卒業することができます。
熊谷:JASSOの奨学金が取れた時、北海道大学を辞めることにも躊躇がなかったよね。
岩崎:あくまでも第一希望は海外大学進学でした。だからJASSOからの奨学金を受けられることが決まって即決しました。前にも触れましたが、メルボルン大学からの奨学金だけでは賄いきれないのはわかっていたので、他の奨学金が得られていなかった高校卒業の時点では海外大学ではなく、国内大学へ進学することにしました。それが親と約束したことでもありましたし。海外の大学に比べると日本の大学は何倍も学費が安いです。
熊谷:そうだよね。アメリカの大学は公立でも日本円で300万くらいするもんね。奨学金を受けることが決まったのが、6月の頭でしょう。9月入学とはいえ、合格が出てしばらく経つのに、それからでもメルボルン大学は入学手続きができるんだね。
岩崎:メルボルン大学の場合、入学意思の締め切りは授業が始まる2週間前です。なので、6月でも全然間に合います。でも、履修登録もあるので、早く決めることに越したことはないです。家探しも大変ですし…。
熊谷:北海道大学は3ヶ月だったけど、行ってよかった?
岩崎:はい、行って本当に良かったです。大学ってどういうところなのかも経験しました。北大での生活はIBをやってる時と同じくらい忙しかったですね。毎週、実験レポートを書かされましたし、授業も朝から晩までぎっしりでした。でも、私は楽しかったです。IBで散々やったので慣れてましたし。それから、北大にもIB生(留学生)がいて、共感し会えることがたくさんあった。TOKとかIAとか。グループ3(歴史などいわゆる社会科の科目)の科目で苦労した話は共感しかありませんでした(笑)。
熊谷:ところで、英語だけで学ぶDPと比べて、英語と日本語によるデュアルランゲージDP(いわゆる日本語DP)が低く見られることを心配している人がまだいるけど、大学進学という点で何か不利になったことはありますか?
岩崎:日本でも海外でも、日本語DPだからといって低くみられたことは一度もありませんでした。むしろIBをやっていれば、よく見てくれる傾向にあるんじゃないかと思います。確かに、完全英語のDPだけだと海外大学出願の際に英語能力の証明が免除される場合があります。一方で、日本語DPだと出願時に大学が求めるIELTSやTOEFL iBTのスコアの提出が求められますが、それさえクリアすれば問題ないのでそこまで不利だとは言えないと思います。
熊谷:それを聞いて、日本語DPを受けている生徒達、受けようと思っている生徒達、そして保護者の人たちも安心すると思います。まだまだ、日本語DPを受講して、海外留学したDP生は多くないからね。今日は貴重な経験を共有してくれて本当にありがとう。
岩崎:どういたしまして。何かのお役に立てたら嬉しいです。
熊谷:最後に、メルボルン大学での抱負を聞かせてください。
岩崎:オーストラリアでは環境保全系のプロジェクトで成し遂げたいと思っています。H1(優秀)の成績で卒業することを目標に日々学問に励みたいです。それに加え、現地生との交流も忘れずに充実した大学生活を送りたいと思っています。
前回と今回の2回にわたって、大阪府立水都国際高校IB一期生、岩崎永光里さんにお話を聞きました。今からIBを始めようと思っている皆さんにこのインタビューが届くことを願っています。