IBという枠組み

みなさん、初めまして。鵜野晋(うのすすむ)と申します。

現在、タイのバンコクにあるRuamrudee(ルアムルディー) International School(RIS)で高校生に日本語(国語としての日本語、第二言語・外国語としての日本語)を教えています。

熊谷先生とは2015年に香港で行われた国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)ワークショップでご一緒させていただいて以来、交流させていただいています。そんな熊谷先生からブログ(今からIBをはじめる君へ)を開設したとの知らせを聞き、IBに携わるものとして、日本で少しでもIBの理解や普及が進めばと思い、参加させていただくことになりました。よろしくお願いします。

Ruamrudee International School (RIS)と私

RISは今年2017年で創設60周年を迎え、タイの中にあるインター校の中でも老舗の部類に入ります。コカコーラが日本で販売を開始した1957年、カトリック教会に属するRedemptorist(レデンプトール会)がバンコク中心部に学校を開き、現在はバンコク郊外にキャンパスを移しています。キャンパスは28エーカー(東京ドームの約2.4倍の大きさ)で、幼児部(2歳)から高校部まで約1,200名の生徒が在籍しています。いわゆる高校2~3年生(インター校では11~12年生)にはIBのディプロマ(DP)が開講されています。カトリックの学校ですが、入学に宗教は全く問いません。仏教国であるタイで60年もの間、教育を続けてこられたということは個人的に興味深いものがあります。

次に、私のことを少し。今は昔になってしまっていますが(涙)、1999年にバンコクのローカルの学校で外国語としての日本語を教え始め、2001年から現在の職場に移りました。IBに携わり始めたのは2006年からです。その時以来、外国語としての日本語(IB DP Japanese B)を担当しています。現在は母語としての日本語(IB DP Japanese A)も担当しています。よく冗談で「タイに来たのは前世紀」と言っていますが、自分の人生の半分がタイでの生活になるかもしれないということに自分でもびっくりしています(本当はまだもうちょっと先ですが…)

IBというフレームワーク

最初の寄稿ということで何を書こうかと考えていたら、根本的というか、こんなこともあるよなというのがあったので、それに焦点を当てたいと思います。それは「IBとは何ぞや?」です。

よく聞かれるんですよね。「IBって何ですか?」って。聞かれるとどう答えていいのか分からずに、いつも困ってしまいます。というのも、ひと言で言い表せないからです。聞かれた相手によって自分なりに対応しているつもりですが、それでも上手に伝わらない時もあります。今回は教師にそれを聞かれた時の私なりの回答を紹介したいと思います。

「IBって何ですか?」と聞かれたら、私は「IBはフレームワークです」と答えるようにしています。

「フレームワーク」、日本語で言うと「枠組み」ですね。IBの教育は1968年(来年2018年で50周年)にスイスのジュネーブで設立されて以来、世界140以上の国・地域において4,839校の学校で実施されています。全世界共通なので特定の国や地域の教育事情やシステムや評価を他のところに当てはめるのは無理がありますよね。

なので自然とこういった「枠組み」という考えのもと、教育が進められているのだと思います。具体的にはIBの第二言語・外国語としてのクラスで扱うトピックは、どの言語を学習しても必修・選択の差はありますが、基本的には全世界共通です。

例えばシンガポールのIB校でタミル語を勉強している生徒、フィンランドのIB校で中国語を勉強している生徒は、世界中で同じ必修・選択トピックをベースに、学習を進めていくことになります。そのトピックに基づいて、教師はカリキュラムを作成し、運営していくことになります。また試験も言語が違うだけでその「枠組み」から出題されます。さらにどんな言語を学習していても評価基準はすべて共通です。IBの評価基準で「適切な漢字を使わなければいけない」というのはありません。他の言語ではこれは使えませんからね。

環境が全く異なる生徒に世界共通の教育を提供することを考えたら、「枠組み」という考えができたのは自然の流れかもしれません。特定の場所で起こっていることをトピックにしても他の国では使えませんしね。

IB教員として求められるスキル

それでは現場の教師は具体的にどのようなカリキュラムを創造し、クラスを展開していけばいいのでしょうか。私はそこは「IBの枠組みの中であれば自由であって、環境や条件によって変わってくる」と考えます。それらの環境や条件とは、国、文化、学校、教師、生徒などが含まれ、教師はこれらの条件を考慮に入れて授業を作るので、教師に必要とされるのはカスタマイズする力です。

それは目の前の生徒や環境・条件を鑑みて、それに一番適切であろうトピックを用い授業を作り上げる力であり、IB教員として求められるスキルだと思います。これって難しそうに聞こえますが、実は先生ならみなさん、普段やっていることではないでしょうか。あるトピックを扱う時にはそれにあった教材や課題を用意し、生徒の理解を助けたり、漢字に弱い生徒がいれば、それに対応する教材や練習を与えたり。カスタマイズする力とは、そのようなことと理解して下さい。

最後に

IBが設定した枠内であれば教師が環境や状況を考慮し自由に授業を創造することができます。なので私は教師にIBとは何ですかと聞かれたら「IBはフレームワークです」と答えるようにしています。

さて、IBの教員をしていると「産みの苦しみ」に悩まされます。7年に1回、カリキュラムも変わりますしね…。次回はこの「産みの苦しみ」について書こうと思っています。長くなりましたが、お付き合いありがとうございました。また近いうちに、お会いしましょう。鵜野晋でした。