みなさん、こんにちは。茗溪学園中学校高等学校でDPCをしている松崎秀彰と申します。私たちの学校は茨城県つくば市にあり、2016年7月にIB認定校となり、IBDPコースの1期生はこの4月から高2となり、IB科目の受講を開始しています。
熊谷先生とは筑波大学関係のIB会議でお会いし、人やら運やらいろいろなものを惹きつけてしまうその不思議な力に私も引っ張られ、「宇宙兄弟」の南波六太が共に宇宙を目指す仲間を「宇宙仲間」と呼ぶようなノリで「IB仲間」と勝手に思っております。
仲間というより師匠という方がふさわしい熊谷先生の「クマユウワールド」満載のこのブログに足を踏み入れるのは大変畏れ多いのですが、前回あそこまで書いていただいて、さらにシンガポールでも風邪で息も絶え絶えの熊谷先生に本番2時間前に無茶振りした手前Noとは言えませんので(しかも本番でもかなり強引な振り方だったのですが、完璧な内容と時間配分でさすが師匠と感激しました)寄稿させていただきました。
IB Global Conference発表の申し込みと準備
アジア太平洋地区のIB教員が1,500名以上集まる「グローバルコンファレンス」は毎年3月に開催されています。昨年11月中旬、発表申込の締め切りを11月30日まで延長しますよというIBからのメールで初めて発表の募集を知りました。
その時たまたま「新しいことを始めたい病」にかかっていたこともありダメモトで出してみようと決意、決意するも最終的に発表概要、発表の目的、発表の進め方の3つをそれぞれ100語で書いて提出したのは30日午後11時55分でした…。
応募したこともすっかり忘れかけていた2018年1月9日、IBよりCongratulationsというメールが来て通ってしまったことを知りました。発表タイトルは半分ハッタリで考えた「日本の高校へのIBDPの導入~その利点と課題~」で、当日は1時間与えられ、しかも聴衆は世界中からやって来るIB教育の経験豊富な先生方、正直なところ喜びよりこれはまずいことになったという思いの方が強かったです。
3月に入り25日の本番に向けてそろそろ本格的に準備を始めようかと考えていた3月2日、IBより追い打ちのメールがやってきました。そこにはIB50周年記念のカッコいいスライドのテンプレートと共に、さりげなく「3月12日までにスライドを送ってね」と。とにかくやるしかないとバタバタと準備を始めました。
IB生はどの程度学校の行事に参加できるか
聴衆はIBの経験が豊富な先生方なので、発表も講義形式でただ聞くだけでは許されないだろうと考え、参加者同士で話し合う場面や、発表はオンラインでも提供されると聞いていたので(結局実現されなかったのですが)、Socrativeというネット上で投票したり意見を書き込んだりできるツールの利用も仕込んでみました。
Socrativeは最初だけ使ったのですが、日本の教育を知っている・馴染みがあるという参加者が75%ほど、25%はあまり・ほとんど知らないという回答でした。また、IB生はどの程度日本の学校の行事に「参加すべきだと思うか」と「参加可能だと思うか」という問いかけをしてみました。日本の学校は集団で行う行事も多く部活もあります。
本校もたくさんの学年行事や部活を重視し、それらが大好きな生徒も多いため、IBを受講すると忙しいIBプログラムをこなしていくために行事や部活に参加できず「隔離」されるのではないかと心配している生徒も多いです。みなさんはどう考えますか?IBを優先すべきでしょうか。日本の学校文化も尊重するべきでしょうか。
IBと学校文化
発表の場で、IB経験豊富な先生方に問いかけてみました。60名ほどの参加者のうち「参加すべき」との回答は3分の2ほどでしたが、「参加可能だと思うか」という問いかけで挙手したのは3分の1程度に留まりました。なかなか現実は厳しいようですね。
今のところ本校では、確認訪問の際、「文武両道」が学校の文化なので、その文化を大事にしてIBを導入して欲しいというありがたいお言葉をいただいたので、できる限り行事や部活には参加してもらう方向で考えています。
先日入学式があり、IB生を含む高校2年生270名全員でSomebody to Loveという曲の合唱を披露しました。それを見ていてやはり行事にはできるだけ参加させてあげたいと感じました。実は本校では高2の夏から世界中にあるUWC(United World College)に留学するという形で、40年前の開校以来53名の生徒がIBで学んでおり、宇宙飛行士の星出彰彦さんも本校出身のIB修了生、つくば市の小学校から本校に入学しUWCを経てMITに入学した生徒もいます。
これまではUWCに合格・留学しないとチャンスがなかったIBを学校内で学べるようになったことは非常に感慨深いですが、日本の学校独自の行事や部活からの学びも加えたIBを創れたらいいなと思っています。
最後に
シンガポールの会議では一貫して、これからの社会で子供達が生きていくためにどのような力をつけたらよいのかという問いかけのもとで様々な発表や講演が行われていました。私の発表の中では日本の中高生の自己肯定感の低さについても触れましたが、日本の子供達にとっては「自信」がキーワードの1つだと感じています。
これまで100kmマラソンを数回走りましたが、今回の発表を申し込む際の気持ちは初めて100kmマラソンに申し込んだ時のものに近かったように思います。うまくいくかどうかは半々くらいだけど、エイやっと申し込めばなんとかなるだろうと…。1つの成功体験は他にも応用できる「転移スキル」ではないでしょうか。あれができたのだからこれも大丈夫なのでは?という感じです。
IBの要求する学習内容や基準の高さには誰もが不安を持つでしょう。最終試験の問いなどは答えられる気が全くしないという人もいるかもしれません。でも日々の授業の中で小さな成功体験を重ねて自信を少しずつ大きくしていくことで、あの最終試験を乗り切る自信や、これからの人生で自分らしい選択をしていく自信も持てるようになるはずです。
発表ではもっと分かりやすくまとめられたのでは等、反省点はいろいろありました。ただ熊谷先生から、「課題が見えたことが最大の収穫」と言われ、確かに大変でしたがこの経験から学んだことも多く、これこそがCASの真髄、「経験に基づく知識」と「自分を知る」ことなのではないかと思っています。
IBメールでしかお名前を拝見したことがなかったシンガポール本部の方からも大変よかったと声をかけられ、熊谷先生からも松岡修造ばりに自信を持てと言われ、韓国や台湾も日本のように厳しい大学入試がある中で公立高校でもIBを導入しようという動きがあるようで、発表2日後になっても声をかけられたこともあり、少しはお役に立てたかと思っています。ということで熊谷先生、「IB仲間」で次の作戦を考えましょう。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。