先日行われたEdmodoCon 2018でIBDPの評価についてきちんと話そうと思っていたのですが、そのスライドが抜けているというハプニングがあり、すっかり舞い上がった私はうまく説明できずに、終わってからしばらくの間、時間を設定し、凹む限り凹みました。
そこで終わってしまうと、ネクラチャンスを挽回できないので、今回きちんと説明させていただくことにしました。DPの評価は一条校の評価システムとは大きく異なるので、ここで一回取り上げてみようと思います。
IBDPの評価の仕組み
DPのコア科目を除く、グループ1~6の科目の場合、校内で評価される内部評価と、最終試験で評価される外部評価の2つが評価対象になります。内部評価は指導している学校の先生によって一度評価され、コーディネーターを通じてIBに報告されます。そして、IBが指定する試験官によってその評価が妥当かどうか、モデレーションが行われます。最終試験はIBが各言語で作成したものが学校に届き、指定された日に各科目の試験が実施されます。解答用紙は厳封され、IBに送られます。そして、IBから指名された試験官が採点を行います。
内部評価といっても、評価される内容は各科目ごとに決められており、その評価スケールもそれぞれの科目ガイドに記述されています。したがって、授業を教える先生が作問した試験問題を解いて評価されるという日本の学校における評価の仕組みとは大きく異なります。また、校内での採点は指導している先生が行いますが、結局IBOに提出して再度評価されなおすので、授業担当の先生もきちんと研修を受けて正しく採点する力を養わなければいけません。
時々、DP科目を教える先生の質はどうなのか、と聞かれることがありますが、きちんとトレーニング(これをIBの用語ではProfessional Developmentと呼びます)していないと、正当に評価をつけられないため、緊張感をもって指導に当たります。したがって、IBを教える先生は日本の学校の先生に比べて質が低いとは言えないと私自身は思っています。
外部評価はIBOが作成した問題を生徒たちが全世界同じ日程で解くことになります。論述式の問題が多いです。試験時間が長いものだと120分にもなるので、それを解く集中力も養わなければなりません。また、「Paper 1」「Paper 2」「Paper 3」といったように 、最大3つの異なる試験が課される科目もあります。
最終試験
最終試験は9月始まりのインター校などでは5月の、4月始まりの日本の一条校の場合、11月のスケジュールで受験します。IBから指定された日程ですべての科目の試験が行われます。2018年の日程はこちらで確認することができます。
4月が年度始まりの日本の学校は、11月に行われる試験を受けることになります。では2018年11月の試験日程を見てみましょうか。
上のリンクの「November 2018 examination schedule」を開いてみてください。試験は11月1日を含む週の月曜から約3週間にわたって、IBOから指定された日に、指定された科目を実施するということがわかります。
また、6つの科目グループによって、またハイヤーレベル(HL)、スタンダードレベル(SL)のどちらで受験するのかによって試験時間が異なっています。まとめてみると以下のようになります。
IBDP教科グループ | HL(240) | SL(SL) | |
1 言語と文学(母語) | Paper1(120分)
Paper2(120分) |
Paper1(90分)
Paper2(90分) |
|
2 言語習得(外国語) | Paper1(90分)
Paper2(90分) |
Paper1(90分)
Paper2(90分) |
|
3 個人と社会 | Paper1(60分)
Paper2(90分) Paper3(150分) |
Paper1(60分)
Paper2(90分) |
|
4 理科 | Paper1(60分)
Paper2(135分) Paper3(75分) |
Paper1(45分)
Paper2(75分) Paper3(60分) |
|
5 数学 | Paper1(120分)
Paper2(120分) Paper3(60分) |
Paper1(90分)
Paper2(90分) |
|
6 芸術 | 科目による
音楽はPaper1(150分) |
科目による
音楽はPaper1(120分) |
HLは受験するまでに240時間、SLは150時間学習をしなければなりません。したがって、SLで学習した科目でHLの試験を受けることはできません。HLで勉強して、受験するのはSLでというのは可能ですが、フルディプロマを取るためには、コア3科目で認定を受けて、さらに3科目をHL、3科目SLで受験し、一定の成績を治めないと付与されないため、条件に満たない場合は取得した科目分だけ科目サーティフィケートが付与されることになります。
各科目は7点満点で採点されます。6科目なので42点になりますね。それにコア科目である課題論文と知の理論のボーナス点が最大3点加点されます。細かい条件はあるのですが、基本的には24点取得するとフルディプロマが付与されます。この条件が満たなければ、フルディプロマではなく、基準を満たした科目ごとのサーティフィケートを取得することになります。
さらに、コア科目はすべて基準を満たさなければいけません。ここでも基準を満たさなければ、フルディプロマは付与されないので、注意が必要です。知の理論が基準を満たさないとか、課題論文で学問的誠実性に疑いがあると指摘を受けフルディプロマを逃したという話はしょっちゅう聞く話です。
この厳しい評価過程を経て、フルディプロマを取得されたみなさん、おめでとうございます。今年は日本語DPの受験生が前の年に比べて増えましたから、合格者も増えたと聞いています。よく頑張りましたね。
最後に
よくメディアでは「DP=世界の名だたる大学への切符」と報じられることがありますが、それは正確ではありません。フルディプロマを取得するためには、様々な厳しい条件がありますし、パッシングスコアが24点だったのか、40点だったかによって大学進学の選択肢も変わってきます。
ここでは名前を出しませんが、国内の国立大学でも結構高いスコアを求めてきているところがありますね。結構な応募者に対して合格者はたったの2人、しかし入学者はゼロだったと聞いています。
IBを学ぶことの評価がまだいきわたっていないのは、我々コーディネーターにも責任がありますが、生涯学習者として答えのない問いに自ら答えを出すという学び方をする生徒達は大学に進学してものすごいパフォーマンスを発揮すると世界の大学では評価されています。
とはいえ、まだIB教育を実践している学校は一握りにも満ちません。そしてその実践報告もまだ一般化できるほどのデータとして開示されているわけではありません。それはIB実践校の今後の課題です。生徒はすぐ目の前にいるので、いつまでも誰かがリーダーシップをとるのを待ってるわけにはいきません。
今、いくつかの学校でどんな形にせよ連携できないかと話をしています。そういった小さな一歩が次の一歩に繋がるよう活動していけたらと思っています。みなさんも、ご一緒しませんか?遠慮なく声をかけてください。