IBOからの招待状 2019 番外編

みなさん、こんにちは。熊谷優一です。思い起こせば、私の教育者としての視点は国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)と出会い、日本の国公立の文脈から、世界中でIBの教育プログラムを実施する国公私立、インターナショナルスクールへと広がりました。実に多種多様なプログラム実践が多種多様な文脈で実践されています。

そして、それぞれのIB認定校で働く先生たちもまた様々な文脈の中で指導していることを知りました。今回は、「IBOからの招待状 2019」で取り上げた2019年3月にカーディフ(イギリス)でのミーティングで出会った教育者たちを紹介したいと思います。

壮大なる観測

今回のミーティングにはもう何十年もIB教育に携わってきたエキスパートたちが参加しました。英語を担当する2人はスウェーデンとグアムのIB校で、スペイン語圏からはマドリード近郊、フランス語圏はパリ、中国語圏からは上海のIB校から、そして私は大阪からです。その他にチリとワシントンから統括責任者が集まりました。

ちょうど3月11日にミーティングが始まりました。東日本大震災から8年の歳月を経て、イギリスでこの日を迎えることを感慨深く思いました。年始に「新春初夢特集:I dreamed a dream.」で取り上げた、私がこの世の中で敬愛するアンジェラ・ランズベリー(93歳)がこの前、インタビューでこんなことを言っていました。

中高生のみなさん、「夢って叶うんだ」と勇気づけられる熊谷の新年初エントリーです。

「You cannot live in the past. You’ve got to go ahead and be prepared to a new position.」

「過去に生きていてはいけない。いつも前を向いて、新しいことに準備ができている状態でなければいけない」というのは1944年にイングリッド・バーグマンとシャルル・ボアイエ主演の映画『ガス燈』で家政婦役(アカデミー賞助演女優賞ノミネート)としてデビューし、浮き沈みのある業界で70年以上も女優として今なお精力的に活躍し続けている彼女の成長戦略です。

どんな絶望の淵にいても、もしかしてこの先にその絶望の深さと同じだけ高い喜びの頂があるのかもしれないという壮大なる希望的観測を私は持ち続けていたいと改めて思いました。

プロジェクトX 教育者たち

ワシントンからやってきたナンシー先生はアメリカの公立の学校で長らくIBを教えてきました。退職後、知の理論(TOK:Theory of Knowledge)の統括を担当しています。彼女にお願いして、一度個人レッスンをしてもらいました。私が今後この業界でプロとしてやっていくために、私が到達している分野と未到達の分野を線引きし、今後の課題を洗い出すためです。厳しい突っ込みもたっくさんありましたが、それにこたえられるようでなければ、平易な日本語で私が日本のみなさんにIBのことを説明することはできません。

一対一で、真横に座って師範から指導を受けるので、本当は緊張で足が震えていたのですが、それにもまして彼女の経験知見は私にとっては学びの連続以外の何物でもありませんでした。こんな機会人生で何度もあるもんじゃない。知的好奇心の絶頂に私はしばらく興奮が覚めずにいました。

同じく統括を担当している先生はチリからの参加でした。中南米で今IB校が急激に増えているそうで、英語に次ぐIBのプログラム受講者はスペイン語で、3位のフランス語と比べて格段に多いと話していました。

スペイン語圏からは参加した先生の息子さんはスペイン女王の衣装をデザインしたことがあるとか。息子さんがデザインしたジャケットを羽織っていましたが、それがまたカッコいい。日本のウイスキーは最高だと話していました。サントリーの響がお気に入りだそうです。スペインのIB校のうち、半分は公立校だから日本も大丈夫だよって勇気づけていただきました。

Professional Development

以前、『新IB認定校への道』で「Professional Development」について取り上げました。ワークショップなどの研修に参加し、専門性を高めていく活動のことです。校内でも頻繁に行いますし、今回のようにIBからその機会を提供してもらうこともあります。

スウェーデンから参加した先生は、右も左もわからない私のことをこまめに気にかけていただきました。もともとは物理の先生ですが、音楽、哲学、文学を教えることもできる多才な教育者で日本も大好き。武者小路実篤の私も読んだことがない本についてお昼休憩の時に話してくれました。

「英語にコンプレックスを持っているって言うけど、お前の話す英語は美しいと思うよ。特にコメントの仕方がね。文学的、演劇的だよね」とまた褒めてくれるんですよ。そうするとその評価を下回るようなことはできなくなりますよね。プレッシャーをかけられてこいつは育つと見破られたのでしょうか…。

グアムから参加した先生は、私のチームのリーダーでした。名前は知ってはいたのですが、こうして 顔を合わせるのは初めてです。今回私はチームリーダーの引き受け手がなく、別のチームのリーダーになったため、チーム運営について話をしたり、今も頻繁に連絡を取り合って、私たちが担当するIBの仕事をしています。日本でいつか働いてみたいと言っていたので、いつか一緒に働けたら面白いね、なんて 話しています。

最後に

上海から参加した中国人の先生の姿勢は、私がもっとも学ばなければいけないことです。それは、折れない心。彼はものすごくメンタルが強い!彼を知っている人はみんなそう言います。くぅー、うらやましい!

2019年2月に仙台で行われたシンポジウムで話した後に、「熊谷先生は相当頑張ってそのテンションを保っているんじゃないですか?」って宮城県の先生から言われた私のメンタルは…そう、豆腐並み。世界で勝負していくためには、専門性だけではまだ足らず。最も必要なのはメンタル強化かもしれません。

上海の彼とは3月末に香港で行われたグローバル・カンファレンスでも会いました。2017年にオランダで行われたプロジェクトに参加した人たちや、カーディフで挨拶をした人たちとも再会しました。当ブログ(チノメザメ)でもお馴染みの茗渓学園の松崎秀彰先生もいらっしゃいましたし、韓国の先生たちも大勢来ていたので、そこで紹介したり、されたりしてネットワークはまた広がりました。

IBの携わっている日本の先生方!苦悩の中で視野を広げるのはこうした世界中の教育者との出会いです。対話の中から、「ジブンナリ」がきっと見つかるはず。どんどん繋がっていきましょう!