IBOからの招待状 -後編-

スポンサーリンク




みなさん、こんにちは。熊谷優一です。筑波大学附属坂戸高等学校で国際バカロレア・コーディネーターをしています。

私は今、オランダから成田に向かう飛行機の中でこの原稿を書いています。2017年10月25日(水)、時刻は17:15、2020年に改訂される「Programme Standards and Practices(プログラムの基準と実践)」という文書の改訂プロジェクトのメンバーとして参加したデザイン・ミーティングの興奮が冷めやりません。

クマユウ、知り合う

今回のぼた餅はこれまでのそれとは大きさも重みも桁外れでした。思い返せば、2月に筑坂がIB校に認定された3日後にIBOのシバ・クマリ事務局長(IB認定を受ける際の証書には彼女のサインがありますよね)が、3月に横浜で行われたアジア大会の前日にはカリキュラム・マネージャーが坂戸を視察に訪れました。その席がどうやらオーディションのような感じだったようです。機会はどのように訪れるかわかりませんね。そしてその時々、チャンスを掴むには気は抜けないということでもあります。

ハーグで2人に再会した時に、それぞれたった2回しか会ったことはないのに、お互いに前から知っているように話ができたことはとてもうれしかったです。2人とも筑坂でIBのプログラムを実施することの意義を熱く語っていました。IBの仕事の仕方は、世界各地でその場その場の出会いの中で議論し、結論を出していきます。気が付けば、ネクラで人見知りの私もそのスタイルに慣れて、一度一緒になった人とは昔からの知り合いのように話せるようになりました。私も図々しくなったものです。

今回プロジェクトに参加したIB校の先生方とはお互いに学校を訪問しあうことになりました。中でもIBのすべてのプログラム、PYP・MYP・DP・CPを行っている上海のインター校の校長先生とは個人的にも親しくなり、北海まで散歩しながら彼女がどのようにキャリアを形成してきたのか話を聞き、私の今後についてもたくさんアドバイスをもらいました。IBのワークショップでもそうですが、こういった機会にできるだけたくさんの人と知り合って親しくなることは、IBに関する理解を拡げるだけでなく、最終的には自分の不足を補ってくれる存在を得ることにつながります。

IBに携わる先生方にもこれからいろんなチャンスが巡ってくると思います。「どうせできるはずはない」と思い続けていたら、何もできるようになりません。「もしかしたらできるかも」くらいに思って挑戦してみると、案外できることは多くなるように私は思います。

クマユウ、想像する

さて、議論に戻りましょうか。前回は「Programme Standards and Practices(プログラムの基準と実践)」を「いつ」「誰が」「何のために」読むのかについて考えうるできる限りたくさんの人物像をピックアップし、読者のタイプを以下のような3つに特定しました。

プログラムを発展する役割の人(Developer)……候補校のコーディネーター・管理職など
プログラムを実践している人(Implementer)……認定校のコーディネーター・教員など
この文書を読むことで利益を受ける人(Beneficiary)……生徒・保護者・教員など

ここまでが二日間行われた議論の初日の1時間半です。結構なスピードでどんどん議論は次々に進んでいきます。次に、この中から各グループで1人の人物像(Persona)を創造します。私のグループはスペインにあるPYP候補校の新任の校長という人物を想定して、その人物像を作り上げてプレゼンしました。各グループから出された人物像の中から、最終的には1人の人物を選び、さらにその人物について肉付けしていきます。

私たちが想定したのは、中国の公立のPYP認定校で新しくコーディネーターをすることになった体育の先生です。彼女は中国語のネイティブで会話ができる程度の英語力があります。認定5年後に行われる評価訪問に向けて準備をすることになります。ちなみに名前は「リリー」です。私は彼女の中に自分を見る思いでディスカッションに参加しました。

クマユウ、同化する

この後、議論はこのリリーなる人物がMYPコーディネーターとして「Programme Standards and Practices」を読み、学校コミュニティと情報を共有するにあたって、この文書をどう提示することが望ましいかという話に移ります。

私が提案したのは、多言語話者のコミュニティではできるだけ単純化した情報提示の仕方が望ましいことと「Glossary(用語集)」は文書を読みながらポインターで表示できるようにすることです。

例えば、単純化した情報提示というのは、誰にでも一目瞭然でどの情報を指しているのかがわかるような記号を使ったほうがいいということです。私が事前にもらっていた新しい「Programme Standards and Practices」には、『Learning(学習)』のセクションの『Environment(環境)』という項目の要件をLE1とかLE2といった表示がされていました。そうするとそのアルファベットが何の略なのかというコミュニケーションで一手間かかってしまいます。

それよりは、『Learning』という大きなセクションはローマ数字(IとかIIとか)で表記し、その中の項目はアラビア数字(1.1とか1.2とか)を使い、さらに各プログラムごとの要件はローマ数字の小文字(iとかiiとか)を使うのはどうかということです。

実は一番時間がかかったのがこの「記号」に関する議論です。現在日本語に翻訳されている「Programme Standards and Practices」には様々な括弧がうまく活用されていて、情報提示という点で読者の理解を助けています。しかし、英語版原本にはそのようには表示はありません。だから各言語で同じ文書を同じように表示しておかないと、多言語話者が同時にその母語でこの文書を読もうとしたとき、情報理解に齟齬が生じる可能性があります。

今まで考えたこともありませんでしたが、記号をどう使って理解を促すかというのは非常な重要なポイントであるばかりか、各言語と文化の文脈の中で同じ記号使っても異なる理解が生じる可能性があることを初めて意識しました。

最後に

実はここに書いたことはミーティングの1日目が終わったくらいまでなんです。興奮しすぎなんですよね、私が。余計なことばかり書いたようで、すみません。でも、私の興奮こそ知っていただきたかったんです。IBは先生の学ぶ「欲」をも刺激します。世界各国の専門家と議論をともにして新たな視点を得る過程は本当に楽しいです。一回経験すると、さすがのネクラの私でも後ろ向きでいられなくなります。できるようになりたいことがはっきり生まれますからね。

さて、2日目はウェブデザインのテクニカルなことを外部の会社の人も交えて議論しました。最終的にはそのデジタルリリースされる「Programme Standards and Practices」のデザインのプロトタイプを作成して、ウェブデザインの専門家がそれらを元に具現化していくことになりました。

私はウェブデザインとかプロトタイプとかについて発想する力も、語れる英語力も持ち合わせていなかったので、的外れなことばかり発言したように思います。日本語でも何をどう表現すればいいかよくわからない分野です。唯一、「情報の提示の仕方も重要だが、それを読む人の感情も考慮に入れてほしい」と何だかよくわからないプロトタイプを見せながら言うのが精一杯でした。

改めて私の英語力、知識は限定的であることを思い知りました。ミーティングが終わって打ち上げが行われるまでの2時間は「あれができなかった」「あそこはこうすべきだった」と漏れなくネクラに凹む時間を設けました。とはいえ、より学習者、情報を理解しようとする人に向けた情報の提示の在り方について考えるようになったことは今回の最大に収穫だったように思います。次に呼ばれるときには、もっとうまくやれるなと確かな手ごたえとともに日本に帰ります。

お知らせしている通り、11月1日から当ブログはメンテナンスに入ります。再開は順調にいけば11月9日(木)、遅くても11月12日(日)です。リリースは予定通り朝8時です。今後とも当ブログをどうぞよろしくお願いいたします。

スポンサーリンク




フォローする