IBOからの招待状 -前編-

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みなさん、おはようございます。熊谷優一です。筑波大学附属坂戸高等学校で国際バカロレア・コーディネーターをしています。

私は今、オランダはハーグにてこの原稿を書いています。2017年10月25日(水)、時刻は朝4:30、外はまだ真っ暗です。昨日まで2020年に改訂される「Programme Standards and Practices(プログラムの基準と実践)」という文書の改訂プロジェクトのメンバーとしてデザイン・ミーティングに参加していました。

事の発端は一通のメールでした。

クマユウ、招待を受ける

それは青天の霹靂。突然の出来事でした。オランダはハーグにあるIBオフィスのカリキュラム・マネージャーから10月24日と25日に行われる「Programme Standards and Practices(プログラムの基準と実践要綱)」の改訂プロジェクトへの招待状が届いたのです。この「Programme Standards and Practices」という文書は、候補校が認定申請をするとき、認定校がプログラムの実践をし、認定5年後の再評価を受けるときの根拠となる文書です。つまりIB校にとってプログラム実施の根幹にかかわる最も重要な文書です。

現在、世界には約5,000校のIB認定校がありますが、その中からプロジェクトメンバーに招待を受けたのはたったの4人。その中になぜ熊谷優一の名前が入っているのか?全くの謎です。招待状には、誰かが推薦してくれたと触れられていたのですが、その誰かが分からず、私は事の重大さと責任の重さに押しつぶされそうになりつつも、「こんな機会は今生二度とは訪れまい!」と二つ返事で出席する旨返信しました。

会議には新しく改訂される「Programme Standards and Practices」のコピーを読み込んで臨みました。まだこの文書の日本語訳がリリースされる前に英語版を初めて読んだときは、なかなか呑み込めなかったのを覚えています。今は、さくさく読める。「ここ変わったねぇ」とか、独り言を言っちゃってる。改訂の趣旨やこれまでの議論をまとめたものを読みながら、「ウェーイ」とかって赤線を引いたりなんかしちゃってる。3年、無駄ではなかったなとうれしく思いました。

クマユウ、狼狽する

このプロジェクトの参加者15人のうち11人はIBの各部署のマネージャーです。IB校からはアムステルダムと上海のインター校の校長、アメリカ・インディアナ州教育委員会のIB統括責任者、そして私の4人です。二日間にわたって朝9時から夕方5時までみっちり議論して、結論を出していきます。

今回のミーティングは2020年に改訂される「Programme Standards and Practices」という公式文書をデジタルリリースするにあたり、そのデザインを考えるというテーマで行われました。文書に書かれている項目について検討するということではなく、どのようにディスプレイしたらこの文書を理解してもらえるのか、その視覚的効果とデザインに焦点が当てられました。だから実際にこの資料を読むことになる校長やコーディネーターの視点がIBも欲しかったのです。

まず議論のブリーフィングの後、この文書を「いつ」「誰が」「何のために」読むのかについて議論をしました。そして具体的に資料を使用するであろう人物を特定したあと、プログラムを発展する役割の人(Developer)、プログラムを実践している人(Implementer)、この文書を読むことで利益を受ける人(Beneficiary)と分類しました。その分類されたこの文書の読者の層によって、「いつ」「何のために」この文書を読むのかが変わってきます。それを頭に入れた上でリリースする文書のデザインを考えます。

まさにマーケティングですよね。私はこのようなデザイン・ミーティングを経験したことがありませんでした。これまでの私は何かを理解し、構築し、実践するDeveloperとImplementer としての立場しか経験したことがなかったので、正直このような手法には戸惑いがありました。

クマユウ、つながる

実際このとき、何のためにこのような議論を行っているのか私には理解できていませんでした。そもそも経験の浅い私のような一介のコーディネーターが文書のデジタルリリースに関われるとは思ってもみませんでしたし、専門家たちを前に、私ができることと言ったら、オブザーバー的な役割かな程度にしか考えていませんでした。

しかし、そんな私をよそにこの議論はさらに深まっていきます。そして私に「A-Ha」モーメントが訪れます。私自身、「Take on me」した瞬間でした。今回のミーティングのテーマは2020年にデジタルリリースされる「Programme Standards and Practices」をどのようにデザインするかということ。つまり実際にどのような人がこの文書を読むことが予想され、読者の理解を促すにはどのように情報が提示されるのがいいのかを議論をして結論を出すことです。

そこに私自身の経験が活かせるはず。実際、候補校申請をしてから認定を勝ち取るまでの間、私はコーディネーターとしてIBに関わる情報を共有するのに苦労しました。その中で最も苦労したのは「言語の壁」です。私の職場には英語しか話せない人がいます。そして日本語しか話せない人がいます。さらにそのどちらも話せる人がいます。日本語に翻訳された文書には注釈が必要な語句も多く、そんな時は英語版を読み直してネイティブの先生とどうかみ砕いて説明すればいいか議論したりしました。

そんな多言語の環境で、「Programme Standards and Practices」を共有するとき、どのような障害が考えられるだろうか。私の苦労したたくさんの実例がこの議論に新たな視点を与えることができる。このミーティングは私にとって最初っから「ワタシゴト」だったんです。

IBのプログラムは今や全世界5,000校、8か国語で実施されています。日本語と英語によるデュアル・ランゲージDPもその一つです。ヨーロッパの言語は比較的言語間のギャップはそれほどないようですが、中国語や日本語、そしてアラビア語はそもそも言語体系や文字の表示のされ方が全く異なるので、そういった文化的背景を持った読者のこともIBは視野に入れなければいけません。私がプロジェクトメンバーに選ばれた理由はそこにあります。

この後、まだまだ議論は続きます(というかここまでまだ初日の午前中)。続きは次回に書かせてください。これからトラムと電車を乗り継いてアムステルダムの空港に向かいます。

最後に

新しい「Programme Standards and Practices」の内容について口外しないと契約書を交わしているので、申し訳ありませんがここで触れることはできません。しかし、2020年に『プログラムの基準と実践要綱(Programme Standards and Practices)』が改訂されることは2017年3月に横浜で行われたIBのアジア大会で発表されましたし、その概要がレポートとしてOCCにアップされています。OCCのアカウントをお持ちの先生はそちらで確認することができます。

この文書は認定や認定後の再評価の根拠となる文書です。大幅に変更になるので、コーディネーターの先生は目を通しておくことを強く勧めます。

さて、ここでお知らせです。11月1日から本ブログはメンテナンスに入ります。再開は順調にいけば11月9日(木)、遅くても11月12日(日)です。予定通り朝8時にリリースします。

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