ネクラトラベラー ソウル編

「逢ふことの絶えてしなくはなかなかに 人をも身をも恨みざらまし」

4年間暮らした韓国。後朝の歌を詠むにはずいぶんたってしまったけれど、私にとって肌を重ねた韓国ってそんな感じなのかもなって思うことがあります。わかりづらいですか?

みなさん、こんにちは。熊谷優一です。日韓関係が悪いタイミングに限って、なんとなーく、ふらーっと韓国に行きたくなる時があるんですよね。

偶然の再会は突然に

金浦空港に降り立って、地下鉄の駅に向かおうとした矢先、前を歩いているおじさんに見覚えが!

「山下先生!」

「クマユウ!」

山下先生とは私が韓国に留学していた頃に出会いました。当時、先生は「外国語学習のめやす」という指標を韓国語と中国語教育の視点から作っていました。そのワークショップに参加したことで知り合いました。もともとは神奈川県の公立高校の社会の先生です。

その後、東日本大震災が起きて、どれくらい経った頃だったかはもう記憶にないのですが、山下先生は韓国語の先生方と気仙沼にいらしたんですね(現在NHK教育でハングル語講座をされている阪堂先生もいらっしゃいました)。その時、私は韓国から一時帰国していたので、ご連絡をいただき、みなさんと被災地を巡ることになりました。

山下先生は、神奈川に帰る間際に、私にもう一度教壇に戻ってはどうかと諭してくれました。あの一言がなければ、私は再び日本で学校の先生をやっていなかったもしれません。あれから私は前任校である筑波大学附属坂戸高校に赴任し、国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)に出会い、そして外国語教育に新たな視点を見出します。

どんな絶望の縁にいても希望を抱く勇気を諦めてはいけない

それを日本における韓国語教育にも活かせるのではと山下先生と会うようになりましたが、なかなか忙しくて、大阪に移籍する際にお会いできなかったんですね。それが日韓関係がここ10年で最も冷え切っているタイミングで、「まさか韓国で再会するなんて!」と運命的なものを感じました。

私達は30分くらいではありましたが、金浦空港に隣接するロッテマートのところの、Krispy Kremeというドーナツ屋さんで話し込みました。そして8月末に東京で再会することにいて、私は次の訪問先である世宗語学財団に向かいます。ちょうど延世大学大学院で学んでいたときの指導教授、강현화(カン・ヒョナ)先生が理事長になったんですね。理事長就任は昨年、えらいニュースになっていました。

先生には、「日韓関係がよくない時期だからこそ、その先の友好関係を築くために交流を進めないといけない。日本では中高生の韓国語を学びたいというニーズが高まっているが、その支援は十分ではないので、財団としてなんとか協力してはくれないものか」と申し上げました。

先生は、「確かに財団としては大人向けの韓国語学習は各国で行っているが、中高生向けというのはあまり力を入れてこなかった。夏休み等の長期休暇の際の集中講座のようなものはできるかもしれない。考えてみよう」とおっしゃいました。

これが、また実現したらいいなと心底思っています。

意気投合しちゃう人

その他にも教育に熱い、いくつかの企業の人ともお目にかかりました。「私と絶対に気が合うから、一度会ってみてはどうか」と紹介いただいたんですね。会社で話し始め、昼食にサムゲタンをご馳走になり、カフェに移動して、かれこれ4時間近く話し込みました。

サムソン電子が2014年に設立した忠南サムソン高等学校を熊谷が訪ねました。

おっしゃっていることは、以前、「広がる?デュアル・ランゲージDP in 韓国」でも取り上げたサムソン電子の人事部長と同じことでした。こういう未来志向の教育観を持った人たちが出会ったら、その生徒たちの学びは絶対に広がるって思うんですよね。大邸で出会った先生方もそうでした。

熊谷が韓国は大邱市で韓国語によるワークショップデビューを果たしたそうなんです。

私達は12月に再会することを約束し、これからどんなことができるか話し合っています。国を超えて、まずは教育者が交流する場がもっともっとあるといいですよね。意気投合する人って国とか、文化とか、信条とか、年齢とか、性別とかを問わずも意気投合しちゃうんですよね。

最後に

今回は、もう何年かぶりに私が住んでいた延禧洞(ヨニドン:延世大学の西側)にある韓食堂に行ったり、南加佐洞(ナムカジャドン)のチムジルバンに行ったりしました。プルガマサウナという猛烈に熱いサウナに入って、足をやけどした模様です。その夜に広蔵市場にユッケとピンデトクを食べに行った時、どうも痛いと思って足を見たら赤くただれていました。

ソウルに行くといつも新村(シンチョン)にある伝統居酒屋で友達とマッコリを飲みに行きます。今回は仕事が忙しくて会えなかったんですが、そうなると何だかとても会いたくなる。恨み言の一つも言いたくなる。普段は気にかけてくれても塩対応なくせに、人の心というのはアマノジャクなもので、自分から連絡するなんて柄にもないことをするようになりました(笑)。いつまで続くかわかりませんが……。

3泊4日くらいじゃ、食べたいものも全部食べられないし、会いたい人にも会いきれないし、行きたい場所にも行ききれないんですよね。そうそう。韓国料理といえば!チキンです。ビールとチキン!韓国に行かれるみなさんはサムギョプサルとか、チーズダッカルビは日本でも食べられますから、まずはチキンの店に行って下さいね!

今日はここまで。ぜんぜんネクラな旅じゃなかったんですね……。さて、「外国語学習のめやす」はリンク先からダンロードできます。山下誠先生のインタビュー動画もあるので、ぜひご覧ください。