教育財源の必要性を考える

みなさん、こんにちは、熊谷優一です。ありがたいことに、「EdmodoCon Japan 2017」に出演して以来、いろんなところから声をかけていただいています。

参加したEdmodoCon Japan 2017について

先日、「今、学校で何が起きているのか?~教育財源の必要性を考える~」というテーマで開催された「日本教育応援団 第3回シンポジウム」で気仙沼のこと、筑坂のこと、国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)のことについてお話しさせていただきました。

発起人は私がいつもお世話になっている国際バカロレア日本大使の坪谷ニュウエル郁子先生です。今回のフォーラムの趣旨は「ニッポン教育応援団(坪谷解説動画)」で見ることができます。

生徒のみんな、ごめんなさい

シンポジウムが行われたのは衆議院会館。私はここまで「キチンとした」雰囲気の場で話したことはなかったため、メチャクチャ緊張しました。登壇者したのは、慶応義塾大学の井手英策教授(ご本は拝読しています)、人を惹きつけてやまないと評判の千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長先生(お噂はいろんな企業の方から伺っています)、OECD東京センターの村上由美子所長、経済同友会からJFEホールディングスの馬田一相談役、東京大学客員教授の竹内洋先生など、みなさん凄い方ばかり。その中に、「在郷太郎」のクマユウがちょこんと座って出番を待っていたわけです。

「あなたの辞書に緊張と言う言葉はないのですか?」と声に出して言いたいくらい、みなさん堂々とお話していらっしゃる。世界中で自分1人だけが、この場にふさわしくない気がしましたが、容赦なく自分の番は回ってきます。

この前、「劣等の往復運動」で私が生徒に、「自信がないというな。自信があるフリをしろ」だの、「肯定的な振り返りをしろ」だの、偉そうに書いたことを心底反省しました。

自信がないからと訴える若者たちへ熊谷優一がメッセージを送ります。

生徒のみんな、ごめん。センセイ、悪いけど超自信ない。「発表するときは一番最初に手を上げなさい」とか、もう言わない。もうこの場から立ち去りたい。お家で猫と戯れたい……

って心の中でずっとつぶやいていました。何とか歯を食いしばって発表を終えましたが、ネガティブな振り返りはすまいと、最終的には「こんな場で話をする機会をもらえたことがすごいことだ」と、非常に浅い着地をすることにしました。

相対的貧困層の拡大

私の故郷、宮城県気仙沼市では2016年度末に東日本大震災の復興支援のうち、緊急雇用創出事業が打ち切られ、250人が失業したと言われています。その中には児童生徒を持つ親世代もいたと聞いています。親の収入が安定しないと、子供たちが進学を断念せざるを得ない状況が今後増えていくことが予想されます。

しかし、この状況は何も東日本大震災の被災地だけに起こっていることではありません。就学支援金を受け取っている家庭は都市部でもかなりの割合がいます。そしてその中でも、シングルペアレントの割合も一定数おり、進路選択や教育機会を断念せざるを得ない状況は津々浦々で起こっています。

一方で、ICT教育だ、グローバル人材育成だと、学校での学習機会は増える一方です。少しでも多くの子供たちに学びの機会を提供するためには、十分とは言えないまでも、ある程度教育に使える財源を確保する必要があるとは思うんです。経済格差が教育格差になってしまってはいけないと思っている方も多いのはないでしょうか。

教育機会拡充を

私が勤めている筑波大学附属坂戸高等学校は、他の筑波大附属高校の2校と違い何十人も東京大学に入るような学校でありません。でも、生徒たちには伸びしろがあります。明らかに、この子たちは伸びると確信できるポテンシャルを持っているのが見えます。総合学科の学びの中で、自ら学ぶことに向かい、自らの学びを選択します。刺激と機会を得て、思いもよらない方向に枝葉を伸ばしていく生徒を見るのが楽しみな学校です。

筑坂がスーバーグローバルハイスクール(SGH:Super Global High School)に指定されたのは今から3年前の2014年でした。私が筑坂に赴任したのは、まさに指定を受けてすぐの時でした。数々の魅力的なプログラムがあります。私が中学生だったらこんな学校で学びたかったなと思わせるような、様々な機会がわんさか転がっているのは以前私の生徒たちがこのブログ(今からIBをはじめる君へ)に書いた通りです。

さて、SGHになって、飛躍的に結果が出た分野があります。英検2級の合格者数です。毎年10人にも満たなかった英検2級の合格者が、2年目、3年目にみるみる増えていきました。SGHに指定される前と比べて、1年目は約2倍、2年目は4.3倍、3年目は7倍を越えています。

確かに、英検対策講習も行いますよ。でも、講習やって受かるほど2級は簡単ではありません。自分は英語が苦手だと思いこんでいた生徒たちが、SGHのプログラムに触れ、英語を学ぶ決断をし、そして実行した結果です。昨年2016年には準1級の合格者も数名出てきました。

多くの子供たちは、「これ!」っていう学びのコアを掴むと、みるみる伸びていきます。このブログに登場した5人の生徒たちもみんなそうでした。入学時はそれほど目立った生徒ではありませんでしたが、機会を得て、あっという間に頭角を現しました。

最後に

子供たちは機会さえあればどんな子供でも必ず伸びます。その伸びる力を私は信じています。そして、私はいつもどんなときも、私が教えている学校の生徒たちに希望を見ています。教育財源を減らして、教育機会を減らしてはいけません。次の社会を担う子供たちに学ぶ機会、伸びる機会を創出するのが我々大人の役割ではないでしょうか。

子供たちの学習機会を拡充のためには予算措置が必要です。教育にこの国がかける財源を確保することが必要です。そして、子供たちを教え、育てる側の余裕も必要です。

そして大人が学んでいる姿こそが、子供たちに勇気を与えます。こんなへなちょこなプレゼンをした私でも、生徒たちは「頑張ってんね、先生も!」と声をかけてくれます。だから、大人も、子供もまぜこぜでTOK(Theory of Knowledge:知の理論)やったら楽しいだろうなぁと思ったりしています。早く実現できるように私も頑張ります。