今からIBを始める君へ:優しくない自分に気づく

皆さん、こんにちは。内山桃です。最終試験が近づくにつれ、本当にディプロマは取れるだろうかという不安以前に、内部評価の課題の提出が間に合うか、本気で心配になっている今日このごろです。

最近は、歴史の内部評価(Internal Assessment:IA)を執筆中です。他の教科のIA、小論文、EEも完成させなくてはならないのに、歴史のIAにすごく時間をかけてしまい、本当にすべての課題を締切りまでにやりこなせるのか、不安と絶望が入り混じっています。

さて、今回は、とくに生物のIAについて、私が苦労したことや、失敗したことをメインに書いていこうと思います。

先行研究を読み漁る

English Bや言語と文学の内部評価(IA)は口頭で行われますが、論文を執筆するタイプのIAにおいて、私が最も苦労しているのはモチベーションを保つことです。

IAという課題は、自分の興味のあることを自分で研究し、専門性のある学びを得る機会を与えてくれます。「自分で」とは言っても、1から100を自分だけで完結するのではなく、研究を発展させるためにも、自分の主張を裏付けるためにも、相当数の先行研究を参考にします。

IAでは、かなり専門性の高いテーマについて研究することが求められているため、多くの学術者が研究を行うときと同じように、私たちもその分野に深く精通している専門家による文献を読み漁らなければならないわけです。

目は肥えてくるものの

高校2年生の私がその分野の研究で食べていけるほどの社会的地位を持つ学者、研究者の方々と同じ方法で研究を行い、あたかも自分が同じ立場にいるように彼らの研究を評価しなければならないときがあるということになります。

なんだか誇らしい気分になることもありますが、読んだ論文の数が増えるにつれて目は肥えてきて、彼らの研究成果を前に「私の研究なんて……」と落胆することの方が圧倒的に多いです。

気が滅入ることばかりで、モチベーションなんてあったもんじゃない。でも、そう思うときは、どうにかしてモチベーションを保つために、自分の将来の姿を想像(妄想)します。願わくは生態学者になっている自分の姿です。

私は、IAに使用する文献の著者である研究者と私の将来像を重ねることで、なんとか執筆する意欲を奮い立たせています。しかし、これには難点があって、好みでなく、分かり合えない科目(例えば、数学)には全く効果をもたらしません(笑)。

失敗談

次に、悔やんでも悔やみきれない、生物IAに関する失敗談を紹介します。

私が生物のIAの準備を始めたのは、DP1年目の夏休み前くらいだったと思います。できるだけ、早く終わらせた方が身のためだということを先輩方から聞いていたので、スタートは早かったのです。

また、生物のIAは自分が本当に興味のあることを研究できるということで、IBコースに入る前からウキウキ楽しみにしていた課題でした。しかし、哀れなことに、このときの私の純粋な好奇心こそが後の私を苦しめる大きな要因であったと考えています。

私は以前から「保全生態学」といった環境問題に関する分野に興味があり、当時はとりわけ「昆虫」に大変興味を持っており、昆虫の持つ可能性に関心を持っていました。

そんな私は、ある昆虫がもつプラスチックを分解できる能力に目をつけ、いそいそと論文や記事を読み漁りました。名だたる大学の研究者による研究とその結果を知り、目の肥えた私は、その能力を持ち、かつ簡単に手に入る、ハチノスツヅリガ(ハニーワーム)とゴミムシダマシ(ミルワーム)の幼虫に目をつけ、手始めに何種類かのプラスチックを与えてみて実験してはどうかと計画しました。しかし、この実験は途中で頓挫します。

優しくない自分に気づく

もしも、私の実験がもとで昆虫を死なせてしまったらどうしよう。生物のIAの評価基準において、生き物を苦しめるような実験は厳しく減点されます。

正直、葛藤しました。やめようか、どうしようか。最初に私の頭をよぎったのは、ここまで計画したのに、あれだけリサーチに時間をかけたのに一からやり直さなければいけないなんてという独りよがりな考えの方が先でした。しかし、この研究は私の研究であるとともに、IBが設定した生物のIAという課題であり、その評価基準にそっていなければ、評価は得られません。

いろいろなことから、この研究は断念することにしましたが、色々と考える過程で、「優しくない」私の人間としての性質を知ってしまったのです。IBコースに入ってから、与えられたものだけでなく自分で判断して行動することが多くなったり、他者とのコミュニケーションの機会が大幅に増えた分、「人間」の知りたくなかった性質に触れる機会が本当に増えたと思います。

不安がある一方で、時にはそれを受け止める自分もいて、この1年で勉学だけでなく、人間的な成長も感じました。とはいえ、生物のIAはもう一度ふりだしに戻りました。

今からIBを始める君へ

最後に、生物のIAを簡単に説明するときに、「自由研究の発展版」なんて言葉を聞くことがありますが、決して同一視してはならないことをここに宣言しておきます。

IBはIAを通して私に何を求めているのか明確に理解しておかなければなりません。そして、その理解の上で、自分を制御する「理性」を持ち合わせておくことを強くお勧めします。

長くなってしまいましたが、以上が私の失敗談です。ディプロマは私も取りたいですし、そのためには「失敗」で終わるわけには行きません。次に文章を寄稿するときには、少しは成功談も書けますように。