21世紀を学ぶ君へ:夏休みに非文学テキストを読もう!

みなさん、こんにちは。児童、生徒の皆さんは現在、絶賛夏休み中ですね。今回はこの夏休み中に、小説ではない、非文学テキストの本を読んでみませんかというお誘いです。以前、「犬は吠えるがキャラバンは進む」シリーズで取り上げた、『時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」』という本をもう一度紹介したいと思います。

読書会のすゝめ

私はよく生徒たちや先生たちと読書会を開いています。同じ本を読んであれこれ話し合いながら、自分にはない視点を得たり、自分自身の読み方や理解の仕方、そしてその土台となっているのは何だったんだろうと考えたり、私にとってもたくさんの気づきの機会になっています。

現在、学校教育で言われている、「探究」とか、「対話を通した主体的な深い学び」とかいったフレーズがバズワードになっていますが、結局のところ知識がないとその質は限定的になってしまうのではないでしょうか。読書会はその質の担保するはじめの一歩になるのではと思ったのです。

生徒たちに話を聞いてみると、読書習慣そのものも確立されていない生徒も多く、どう本を読めば自分が求める知識を得ることができるのかわからないという声が多く聞かれました。また、読書する習慣がある生徒でも、読書する対象は主に小説であることが多く、ほとんどの生徒が読むには読むということでしたが、新書には手を出していない模様でした。

フィクションを読むことにも意味はありますが、中学生くらいになったら3冊に1冊くらいは新書にも手を出してはどうでしょうか。普段学校の勉強を広げたり、実社会とのつながりを感じたりする知識にリーチし、授業で学ぶことは試験のためでなく、世界を理解するために意味のあることもあるのだと実感できますし、探究の手がかりを得ることができます。

主体的に学ぶスキル

「主体的に学べるため」には、自分が興味を持ったことを自ら学べるスキルが必要です。それは文献を検索するスキルも含まれていますし、自分の興味関心に沿った内容をその文献から読み取るスキルも含まれていると私は思います。

そいうことから、同じ本を一緒に読みながら、有機的に情報を理解する練習をするために読書会を開催することにした次第です。読んだ内容を何の疑問もなく、単純な情報としてしか解釈するのではなく、自分なりに読んでいいのだとくことを信じさせることから、批判的に読むこと、ボトムアップの読みかたなどを試みることにしました。

そして課題図書をとしては『時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」』を指定しました。

戸惑う生徒たち

私はこの本を読もうとしていた時期に、「自分は時間を正しく理解できているだろうか?」という疑問を持っていました。人間の命はたかだか100年。それを基準にして、私が時を自分の寿命を基準に感じているのかもしれない、もっと短い寿命の生物の時間、もっともっと寿命の長い星の時間を私は理解できるものとして感じていないように思ったのです。

そして、言語は時間をどう捉えているのかについて気になりだしました。英語では時を直線的に捉えています。だから過去・現在・未来、そしてその時々の進行形やその時点までの完了形を説明する際に左を過去、右を未来の直線を描きますよね。日本語はというと、過去・非過去という区別しかいない。輪廻転生、生老病死、春夏秋冬など螺旋で時を捉えているのかもしれない。中島みゆきの『時代』では「まわるまわるよ 時代はまわる」と歌われています。

そんなことを雑談で話していたら、この本を勧められたのでした。読んでみたら、面白い!確かに相対性理論だ、量子力学だと理解に苦しむことも描かれていましたが、ところどころ自分にヒットすることが書かれているわけです。全部は理解できないけれど、ときめくことが書いてありました。

となると、一緒に雑談していた先生たちがこの本をどう読むのか気になり、みんなで読むことにしました。物理の先生はビックバンを例に出して時間を語り出します。歴史の先生は歴史上の出来事は現在の関わりという視点でみるため、時間を連続性という言葉で捉えているようでした。

これが面白かったので、私たちがこの本をどう読んだのかを生徒たちの前で一回デモンストレーションすることにしました。生徒たちはこの本をもとに教科の異なる先生が議論をするって言ったってどうやるんだ、どこをやるんだ、と随分戸惑った様子でした。が、自分なりに読んでいいんだってことを私たちは彼らに信じさせたかったんです。

最後に

昨年、「関西英語授業研究会 Harvest 2021年度総会」でこの読書会を本ブログでもおなじみの梶木尚美先生、阿部公彦先生、原田有先生と再現しました。そこに現役IB生の林歩香さんも参加し。大人に混じって議論に参加してくれました。次回は、その読書会に参加した林さんの感想をお届けます。

『時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」』を課題図書に学校で行った読書会については以下のリンクを御覧ください。

熊谷が現任校の生徒たちとで昼休みに行っている読書会の模様をお送りします。
久しぶりにリリースされる本シリーズ。熊谷が現任校の生徒たちとで昼休みに行っている読書会の模様をお送りします。
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熊谷が現任校の生徒たちとで昼休みに行っている読書会の模様をお送りします。