みなさん、こんにちは。熊谷優一です。2022年10月11日、私の永遠の推しとして何度も何度も紹介した女優アンジェラ・ランズベリーさんが亡くなりました。97歳の誕生日を迎える5日前でした。明日、10月16日は彼女の誕生日ということもあり、Toktober Festの途中ですが、の3回忌にあたり、今日は再び彼女のことを取り上げたいと思います。
中島みゆきは「愛だけを残せ 壊れない愛を 激流のような時の中で 愛だけを残せ 命の証に愛だけを残せ」と歌っています(以下の動画の4’18″からその部分が歌われています)が、アンジェラさんは私の中に永遠に壊れない愛を残してくれました。
意味さえあればどんなに手段が限られていても人は本能で学ぶ
アンジェラ・ランズベリーに恋をしたのは私が高校生の頃でした。本当に偶然にテレビをつけたら森光子が吹き替えをしていた『ジェシカおばさんの事件簿』というアメリカのテレビドラマを見たんです。彼女の佇まいに、一目惚れしました。殺人事件を扱う番組だというに何とも軽快なイントロだけで見たくなりませんか?
私は気になったらその辺の木に生る勢いで猛烈に知りたくなる性格です。彼女がどんな人で、どんな作品に出ていて、どういう評価を得ているのか知りたくなります。が、当時はインターネットもなく、そこまでメジャーな経歴を持っていない彼女の情報はあんまり見つからず、悶々とするも何とか手がかりを掴もうとあらゆる方法を試行しました。
最初は気仙沼市立図書館で映画系の雑誌の索引本があってそこから調べて、そして宮城県立図書館でもっと分厚くて詳しいハリウッドに関する本を見つけて、洋書がおいてあった仙台の書店で彼女について書かれている本を輸入したり、タブロイド紙に彼女が載っているのを見つけて買ったりしました。また、気仙沼高校でALTをしていたアメリカ人の先生に頼みこみ、帰国した際に最新版の「ジェシカおばさんの事件簿」をビデオテープ(!)に録画してもらったり、「こんな本みつけたよ」って買ってきてもらったりしました。
ビデオテープは擦り切れるかというくらい見ました。何度も見て、セリフを書き取ったり、彼女と同じスピードでセリフを言えるまで練習したりしました。それが、のちに外国学習で有効だとされているトレーニング方法、デクテーションとかシャドーイングだと知ったのは大学生になってからです。あの時は本能で学んでいました笑。
知識は想像力を誘う
そのうちに彼女がブロードウエイミュージカルに出演していたことを知ります。たまたまラジオでミュージカル特集をしていたり、テレビで昔のミュージカルの特集をしていたりして、彼女が歌った歌や出演した作品の一部を見ることができました。その時ラジオで聴いた歌が『The Worst Pies in Londo』という歌です。早口すぎてほとんど聞き取りませんでした。
高校3年生の文化祭で作った「ロミオとジュリエット」を下敷きにして、アンジェラさんが出演した『Sweeney Todd』という作品はきっとこんな感じだったに違いないという勝手に想像して作りました。そんな風に、想像力さえ駆使すれば、私はアンジェラさんをどんな物語にでも登場させることができました。その想像・創作は元々何もないところからは生まれません。知識の元手からそれらは膨らんでいくものだと捉えています。
アンジェラさんを好きにならなければ、英語の勉強もすることはなかったでしょうし(実は、家族からも先生からも高校を中退するんじゃないかと思われていました)、先生になることも、ましてやこうしてIBに携わるようなこともなかったんじゃないかなと思います。
探求の枝葉が伸びる先に
アンジェラさんへの興味が私の学ぶ意味でした。以前アンジェラさんいついて書いたエントリーを読んでいただければ、オタク気質な私の学びの源をわかっていただけると思います。
そこから言語学に発展し、カチュールという社会言語学者の「World Englishes」という考えに触れ、言語における正しさはどういう過程を経て決定されるのかが気になり始めて、彼に話を聞きに行きました。
アンジェラさんが舞台に出ていたことから、勝手にもしも舞台で共演することが人生で起こりうるかもしれましからと演劇を見るようになったり、シェイクスピアと近松門左衛門が書いた脚本を読み比べたこともありました。だんだんに、悲劇は人の死をどのように描くのかもっと知りたくなって、悲劇ばっかり読んでみたり、節操なく興味がむくまま、知らず知らず私は知識を広げていたのかもしれません。
今もおんなじです。気になったら手当たりしだいに情報を入手しようというアプローチは。入手しているうちに私自身の◯◯像が形成されます。そしてそのイメージが他の人からどう見えるのか知りたくなります。
最後に
結果、アンジェラさんが私に残したのは壊れない愛だけではありませんでした。彼女を愛することに端を発した探求の過程で得たことは単に知識だけでなく、私なりの学ぶ方法と学ぶことの楽しさです。そのことを教えてくれたアンジェラさんには心から感謝していますし、彼女と英語で話したい一心で英語を勉強した私は、2008年に叶いました。あんまり嬉しすぎてブロードウェイを息ができなくなるまでダッシュした日のことを昨日のことのようにはっきりと覚えています。こんなにいいことがあったんだから、この一生はすぐ終わると思ったほど嬉しかったです。
アンジェラさんへ、今なお、私はあなたが生きていた時と変わらず、毎日youtubeであなたの新しい動画がアップされていないかをチェックし、あなたの演技やあなたが語ったことを通して、学んでいます。
あなたは言いました。俳優だけでなく、監督や衣装、美術などを担当する個々人の経験が持ち込まれるからストーリを伝える芸術形式はユニークなんだと。私はそれこそが人生そのものだとその時思いました。経験と協働は今も昔も私の人生を彩っています。そしてこれからもそうであり続けるでしょう。
Thank you and I will always love you.