総合学科とIB

スポンサーリンク




みなさん、こんにちは。前回のエントリーで「面と向かうと、痛くないけど、圧が凄いから痛い感じがする」と言われた熊谷優一です。同感だとメッセージを寄せた昔からの知り合いもたくさんいましたし、同僚のフィリピン人の先生にも、”Your existence intimidates your students.”と言われました。ただ単に、ディスられて、いじられているだけのような気がしています。

クマユウを避けてきた生徒が中学生のみなさんに、新たな学びに挑戦する勇気の大切さを伝えます。

さて、今回は国際バカロレア・ディプロマプログラムの世界共通科目である「課題論文」について取り上げたいと思います。

課題論文とは

世界中どこの学校で国際バカロレア(IB)を勉強しても、ディプロマを取得するためには、世界共通科目である3つのコア科目でポイントを取らなければなりません。その3科目は以下の通りです。

・知の理論(Theory of Knowledge)
・CAS(Creativity, Action, Service)
・課題論文(Extended Essay)

この内、「知の理論」は2年間に渡って、100時間学習しなければならないという要件があります。一方、「CAS」と「課題論文」は必ずしも時間割の中に位置づけられている科目というわけではありません。

「CAS」は、1. 創造性を伴う活動、2. 体を動かすような活動、3. 他の人のためになるような活動を期待される「7つの学習成果」を満たすように計画・実行されます。詳しくは以下のエントリーをご覧ください。

福祉科の熊倉悠貴先生がCASと日本的教育について語ります。

「課題論文」は、いわば個人研究です。興味関心に応じて、研究テーマを設定し、その成果を日本語では8,000字(英語では4,000語)の論文にまとめます。日本の総合学科の高校では、「課題研究」が実習科目として設定されていますが、「課題論文」は「課題研究」のようなものとイメージしてもらえれば入り口としてはわかりやすいかなと思います。

総合学科について

総合学科という学科に馴染みのない方もいらっしゃるかと思います。ここで少しだけかいつまんで説明しますね。詳しくは文部科学省のHPを参照ください。

総合学科の最大の特色は、「生徒個々人が高校入学後、どの科目を学んで、進路につなげていくかを選択できる」ところにあります。1年生の時は、日本の高校卒業の条件に必要な必修科目を学ぶケースがほとんどです。2年生以降は一部必修科目を除いて、自分で選択した科目を勉強します。

したがって、同じクラスに所属していても、学ぶ科目はみんな異なっており、授業は生徒が教室を移動しながら受けることになります。朝と帰りのホームルームでしかクラスメイトと顔を合わせない日もあります。

私は宮城県の教員をしていたとき、本吉響高校という総合学科に6年間勤務しました。そして今筑波大学附属坂戸高校という日本初となる総合学科の学校に来て4年経ちます。教員になって今年で21年になりますが、その半分が総合学科という学びの中で過ごしてきました。

総合学科のいいところは、このブログでも再三書いていますが、学習者が自ら学ぶ科目を選択することができる点です。学び方も先生が黒板の前に立って、生徒に一斉に教えるというよりは、生徒自ら課題を見つけ、それを探求していくスタイルが多いです。

国際バカロレアの学び方や教え方は、「学習者ファースト」で先生は指導者というよりは、ディスカッションや、問題を解決するためのファシリテーター、もしくはメンターの役割を担うことになります。

総合学科は「学ぶコト」に関しては選択することはできますが、「学びカタ」を選択できるまでには至っていません。学習者自ら、学ぶ科目を選択することができて、学ぶ方法を選択することができたら、総合学科って、「最強じゃないか!」と思う今日この頃です。

課題研究と課題論文

総合学科には「課題研究」という個人研究の成果を論文にまとめるという必修科目があります。国際バカロレアのディプロマプログラムでも同様の内容を「課題論文」という科目で行います。ここでは「課題研究」と「課題論文」がどう違うのかに焦点を当てて、比較してみたいと思います。

総合学科の場合、その「課題研究」の時間が時間割の中に位置づけられているの対して、IBの「課題論文」は時間割には入っておらず、放課後など課外の時間に行うことが多いようです。また、取り組み始めてから論文として提出するまで40時間で完結させます。

また、総合学科の「課題研究」では研究の成果そのものが評価対象になることが多く、何かしら目立った成果を出すために、指導教官から助言を受けることになります。一方、IBの「課題論文」では指導教官はつくものの、指導教官との面談が3回と決まっており、3回目の面談は提出する論文に関する口頭試問になっています。また、面談の際に指導する内容にも制限があり、指導教官は論文に赤ペンで修正を加えたり、論文の構成に助言を加えたりといった、いわゆる「指導」が禁じられています。

良かれと思って、赤ペンを入れる時代ではないのですね。私ももう「赤鬼」とは呼ばれなくなるでしょう。

筑坂のIB認定に一役かった鹿間謙伍君が、TOKと武士道について語ります。

最後に評価についてです。総合学科の「課題研究」の評価は学校ごとにその基準が異なります。IBの「課題論文」は記述する言語は異なっても世界共通の5つの評価規準を基に評価されます。完成した論文は電子データとしてIBに提出され、IBが指定した試験官によって評価されます。

最後に

私が勤務している筑波大学附属坂戸高校では、2016年度からIBの「課題論文」の要件に準じて、日本語の場合は8,000字で研究の成果をまとめ、IBの評価規準を用いて評価をつけました。

印象としては、従来の内容重視の「課題研究」よりも生徒の論文への評価は高くついたように思います。これまで何度かIBの「課題論文」の論文をIBの規準にしたがって評価するという研修を行ってきたのですが、日本の先生たちの評価は、むしろIBのそれよりも厳しかったです。

IBの公式ワークショップで課題を採点する際に、参加した日本人の先生たちからも、「この内容でこんな点数を高く出るのか」と驚きの声が毎回上がります。そこは高校生が「課題論文」を40時間で完結できる内容であることを前提としたものなのでしょう。いずれにせよ、「何を」というよりは、「どう」が重視されているようです。

「課題論文」の指導と評価については、IBから出ている文書も膨大で1回ではとても書ききれないので、今回は日本の総合学科で行われている同じような内容として、「課題研究」と比べながら考察してみました。

次回から3回に渡り、English Caravanに参加した私の生徒の「課題研究」の内容を紹介します。その間、私は遅めの夏休みを取りたいと思います。次に私が登場するのは9月7日。それまで、みなさん元気でお過ごしください。

スポンサーリンク




フォローする