日本の教育の発展に寄与するためのきっかけとして

はじめまして、札幌の市立高校で数学の教員をしている大西洋と申します。昨年度までは、同じ札幌市にある市立札幌開成中等教育学校で、MYPコーディネーターを担っていました。

今年度は新しい学校へ転勤となりました。今回、熊谷先生にお声掛けをいただき、本ブログへの投稿をさせていただくことになりました。

IBを経験して

私のIB教員としての経験は、数学の教科主任の3年間とMYPコーディネーターの3年間の計6年間です。これらは、すべて前任校の市立札幌開成中等教育学校で経験させていただいたものです。

この間、数学の授業作りだけでなく、TOKの授業作り、PPの設計・運営、Interdisciplinary Unitの設計に携わるとともに、MYP、DPの認定に向けた申請のお手伝いなどをさせていただきました。また、文部科学省IB教育推進コンソーシアムのAir Campusファシリテーターを3年間、IB教育導入サポーターを昨年度から引き続き担っており、国内へのIBプログラム普及のお手伝いをさせていただいているところです。

また、IB Educational Networkの役割も担っており、IB Workshop leader、IB Consultant、IB School Visit Team Leaderの資格も有しております。今回、お声掛けをいただいたことは本当に嬉しい限りで、私の経験や教育観について少しでも共有させていただければ幸いです。

強烈なインパクト

熊谷先生のことは、6年前に筑波大学附属坂戸高等学校の研究発表会を訪問した際に、英語の授業を見せていただいたことがきっかけで知りました。私は数学の教師ですが、教室全体が生き生きとしたコミュニケーションを展開している雰囲気に惹かれてフラフラと教室に入っていったのを覚えています。生徒だけでなく参加者の先生方や時には保護者まで巻き込んで授業を作ってしまう熊谷先生の手法に強烈なインパクトを与えられたのを覚えています。

その後、大阪女学院で行われた『ナレッジキャラバン in 大阪 2019』に参加しました。ホストの熊谷先生は、「みんなの得意を少しずつ、みんなの興味を少しずつ、持ち寄って学び会う』場を作りたいという教員になって23年越しの思いを形にされたそうです。

おかげさまで大阪女学院中高で開催したイベントを無事に終えることができました。

全体会における熊谷先生の語りには教育に対する熱い思いが感じられ、感銘を受けました。特に、IB、イエナプラン、ドルトンプランなど、様々な教育が日本に入ってきているけれど、各国のナショナルカリキュラムも含め、目指すところは皆同じだという言葉に強く共感をしました。熊谷先生が、これまで築き上げてこられた経験、人脈など正に人生を感じられるようなイベントで、とても温かい雰囲気の会でした。参加者も教員だけではなく、小学生から大学生まで多岐にわたり、皆がニコニコしながら授業を受けていたのが印象的でした。こんな風に自分の夢を実現できてしまうのは、本当に素敵な事だなとほっこりしながら札幌に帰ったのを覚えています。

世界各国のカリキュラムを見比べてみて

その後、まさかこのような依頼を受ける関係にまで発展するとは思っていませんでしたが、熊谷先生の教育に対する考えには非常に共感できる部分が多く、特にIB教育を普及することが第一目的ではなく、日本の教育の発展に寄与するためのきっかけとしてIB教育を活用するという考え方に強く賛同しています。

世界各国のカリキュラムを見比べてみても、そこに大きな差異はありません。IBも同様で、人格の形成を第一の目的としています。しかし、私がIBに魅力を感じている理由は、IBには余計なバイアスが見当たらないということです。

世界各国のカリキュラムには、少なからずそれぞれの国・地域の風習や歴史、政治、宗教等のバイアスがかかっていることがあります。それらは必ずしも悪い影響だけではないのですが、IBのカリキュラムにはそのようなバイアスが見当たらず、生徒の人格の完成を目的として純粋に人間としての成長に焦点を当てていることがすばらしいと感じています。

生涯を通じた学習者として、多面的なものの見方や学び方を習得し、様々なスキルを発揮して環境の変化や複雑な問題の解決にも臆せず柔軟に対応するような力が身につく、正に様々な分野でリーダーシップを発揮する人間が育つプログラムだと感じています。

最後に

日本では、ここ数年で急速にIB教育が普及しており、IBのプログラムを導入する公立の学校も増えているところではありますが、同時に心配しているのが、IBの理念を現場の先生方や生徒・保護者の方々が正しく解釈できているかということです。

もし、IBを高学歴のブランドのようなものと捉えていたり、過度な学力競争を煽るようなものと捉えているのであれば、考え方を少し変えていただく必要があると考えています。また、IBのプログラムと新学習指導要領には親和性があり、IBについて深く理解することが、新学習指導要領の理解にもつながります。

これまでの日本の伝統的な教育がはぐくんできた財産には大きな価値がありますが、これらかの子どもたちが向かう社会においてはこれまでの財産だけでは不十分であることが予想されます。数回のコラムの中では、IBを中心に据えてこれからの日本の教育に必要なことについて皆様と共有していければと考えています。よろしくお願いいたします。