今からIBを始める君へ -日本語DPで求められる語学力-

みなさん、こんにちは。熊谷優一です。最近では「ブログを読んでいます」と中学生のみなさんから声をかけられるようになりました。埼玉県や東京都の中学生だけでなく、フィリピンやベトナム、タイ、ヨーロッパでも見ていただいているようで、うれしい反面、これまで中学生向けの情報が十分ではなかったと反省しています。

今日はこれから日本語ディプロマ・プログラム(DP:Diploma Programme)を受けようとしているみなさんに向けて、どれくらいの語学力が必要なのかについて取り上げたいと思います。

多様な受験生

私がコーディネーターをしている学校では夏休みに3回行われる学校説明会の他に、9月から毎月1回行われる入試説明会があります。このブログ(今からIBをはじめる君へ)でも何回か取り上げたことがあるので、どのようなことが行われるのかみなさん大体知っていると思います。

説明会の後には個別相談の時間が設けられていて、国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)についても私たち教員と直接話をすることができます。これまでたくさんの方の相談を受けてきましたが、その中で一番多かった質問が、「日本語DPで求められる語学力はどの程度か」ということです。

「英語力」と書かなかったのには理由があります。受験する層が大きく分けて3つのグループに分けられるからです。一つ目のグループは日本で生まれ育った中学生、二つ目のグループは海外の日本語学校などに通っていた帰国生、三つ目のグループは日本のインターナショナルスクールに通っている生徒です。

それぞれのグループで「語学力」は異なる意味を持ちます。

多様な言語背景

日本語DPといえども、最低2科目は英語で授業を受けます。そしてほとんどのDP科目が英語で書かれたテキストを主に使用します。したがって、それなりの英語力が求められるのがわかります。日本語を母語とする生徒にとってここが課題となります。

一方で、いわゆる一条校の必修科目は日本語のテキストを用い、日本語で授業を受け、日本語で試験を受けるので、英語ネイティブの生徒にとってはここが課題になります。ただし、DPが始まる2年生以降は英語がネイティブであることは強み以外の何ものでもありません。

さて、第2のグループ、帰国生はいつ日本に帰国したのか、生活していた国でどの程度母国語教育を受けてきたのかによって、日本語運用力は大きく異なります。帰国生向けに国語の授業を習熟度別で行っている高校もありますよね。母国語で概念を表す言葉を学ぶのは小学生高学年から中学生にかけてです。その時期に十分に難易度の高い言葉や日本語の持つ造語性を学ばないと、日本語で学んでも英語でも学んでもどちらも理解しきれないということが起こります。ただ、外国で生活をしていることで身に着けられる文化や考え方は日本語DPでも生きてくるはずですし、英語に関しては帰国生は+αで学んでいることが多いので、それは大きなメリットになりえます。

求められる言語力?

確かなことは正直、わかりません。なぜなら、十分な語学力があったとしても、IBの学び方が合わない英語ネイティブの生徒もいましたし、入学時は全然英語が話せなかったけれども、フルDPをとった日本人の生徒も知っています。また、日本語ネイティブでない生徒が日本でキャリアを築いてくことを決め、日本語を驚くほど短期間で修得することだってあります。

「一概にこの程度ないと無理だ」とは言えませんが、始まってからの大変さを考えれば、中学生のうちから少しでも語学力をつけておいたほうが絶対にいいことは確かです。日本語IBは日本で生まれ育った生徒にも世界基準の教育を受ける機会を提供しています。そして同時に、日本語を母国語としない生徒にも日本語で教育受ける機会があるということです。それぞれの強みを持ち寄って言語背景の異なる生徒同士の学びがより協働的で、より広がり、深まることに私は一教員としてワクワクしています。

正直なところを言えば、日本語ネイティブのみなさんはDPが始まる2年生までに英検2級、CEFRでいうとB1レベルの英語力はほしいなぁ。日本語ネイティブでないみなさんは、夏目漱石の「こころ」を読めるといいなぁって思います。今からでも遅いことなんてありません。チャレンジしてみましょうよ!

1ランク上の語学力を身に着けるために

さて、私からいくつかの提案です。学校の英語もしくは日本語の勉強+αを毎日したほうがいいか、しなくてもいいかと聞かれたら、中学生のみなさん、どう答えますか?お父さん、お母さん、どう答えてほしいというか、どう行動に移してほしいですか?もちろん、「毎日+α」ですよね。

じゃあ、どんな方法があるか。例えば英語もしくは日本語で毎日日記をつける、毎日鏡の中の自分と1分間対話する(根暗の私にとってはこれが最大の勉強方法でした)などなど。工夫すれば何とでもできます。近場にALTの先生はいませんか?空いてる時を見計らったり、毎週時間を約束して話す時間をつくってみてはどうですか?

でもここで終わったら、新しい言葉は覚えないんです。だからもう一歩先に行きましょう。教材は……そうですね、『CNN ENGLISH』という雑誌を一冊買ってみて下さい。20秒程度のニュース原稿が載っています。それを付属のCDと同じ速さで読めるまで、読み込んでみてください。意味が分からないと頭に入ってきませんよね。原稿の周辺に必ず日本語訳が載っています。わからない単語を丸で囲んで、日本語訳の中からその単語に該当する意味を見つけて、折角だから、もう使わないノートの空いているページを使って、一文ずつ、声に出してできだけ速く3回ずつ書いてみましょう。そうすると、長い記憶として定着しやすいです。

詳しくは「第3回筑坂IB説明会報告」を読んでみて下さい。

日本語DPで求められるり語力はどのくらいかという質問に熊谷が答えます。

『CNN ENGLISH』は日本語ネイティブではないみなさんにも有効です。英語は理解できるわけですし、日本語を話すことには問題がないと思うので、あとは書き言葉、漢字、読解ができればいいわけですよね。ニュースに出てくる日本語の語彙は難しいものもありますが、対応する英語の意味概念がつかめてあとはインプットするだけです。日本語で読んでみて、わからない単語を英語の中から見つければいいし、読み方がわからなない漢字は「google翻訳」で写真に取って指でなぞれば出てきますからね。そんなに大変ではないです。

最後に

さらっと書きましたが、腰を上げるまでが、腰を上げてそれを習慣づけるまでがダルイっちゃダルイかもしれません。ダルかったらやめればいいんです。DPをやりたい気持ちはそこまでだと観念しましょう。

でもね、それでもDPやりたかったら、必要だって思ったら、人はどんな困難にも立ち向かうものです。本当にやりたいことだったら、それを苦とも思わないでしょう。私は、むしろ苦しい、辛いことがうれしくなって、楽しくなってきますけどね。だって、ホントにやりたいんだから。

ダッシュしたり、筋トレをしている最中は「キッツ―!」って思いますが、終わった後は爽快だったりしませんか?やった気になれるというか…私は先生になるための勉強も、英語や韓国語を勉強している時もあんまり辛いって思ったことはありません。勉強ってすら思ってないかも。まだまだ知らないことはたくさんあって、どんどん知っていく、どんどんわかっていくのを感じると、「ウェーイ!」って思います。

その辺が、私の友達たちから「おまえ、変態だな」って言われる所以なんですけどね。でも、私みたいになれって言っているのではないですよ。私もどうやら大多数の人と違うみたいっていうのは感じています。ただ、本気でやりたいんだったら、まずはやってみましょうよってことを伝えたかったんです。

伝わったかなぁ…