[Heroes] 女優 アンジェラ・ランズベリー 続編

みなさん、お晩でございます。熊谷優一です。ただいまこちら、ニューヨークは深夜3時を回ろうというところです。早朝にグランドセントラルステーション近くのホテルをチェックアウトし、空港に向かわなければいけない緊張と昨晩の舞台の興奮でさっぱり眠れないので、寝るのは諦めて原稿を書くことにしました。

今回ニューヨークを訪れたのは、私が生きる意味と言っても過言ではない昨年の年始めにも新春初夢特集でも取り上げ、Heroesシリーズでも思い余って2回に渡って書いたアンジェラ・ランズベリーという女優さんが出演する一夜限りの朗読劇を見るためです。正味2日しか自由になる時間はありませんでしたが、私の目的は彼女しかないので、せっかくNYに来たのにほとんど街をブラブラするだけでしたが、言いようのない幸福感に包まれています。

中高生のみなさん、「夢って叶うんだ」と勇気づけられる熊谷の新年初エントリーです。
1984年からアメリカで12年に渡って制作された「ジェシカおばさんの事件簿」の主演女優が今回の主人公です。
1984年からアメリカで12年に渡って制作された『ジェシカおばさんの事件簿』の主演女優が今回の主人公です。

65年ぶりに!

今回のアンジェラさんの舞台出演についてニュースが出たとき、いてもたってもいられず、すぐにチケットを買い求めました。しかし!チャリティ目的のイベントで、一番ステージから近い席はなんと5,000ドル。その次の席は1,000ドル。一番安い席でも500ドルします。

昨今ではブロードウェイの演劇やミュージカルのチケットも高騰し、最も人気の「Hamilton」というミュージカルは土日だと平気で一枚500ドル以上します。本当は見に行きたかったのですが、あまりにもチケットが高額のため諦めました。が、アンジェラさんを見るのは別次元のお話。とはいえ、1,000ドルは流石にということで、500ドルの席の中で最もステージに近いN列の中央の席を取りました。

この朗読劇はオスカー・ワイルドの「真面目が肝心(The Importance of Being Earnest)」という日本ではあまり上演されない戯曲でした。アンジェラさんは「ガス燈(1944年)」の家政婦役でデビューしましたが、「ドリアン・グレイの肖像(1945)」のシビル・ベインという可憐な歌手役の方が撮影が先だったそうです。今回はその時以来のオスカー・ワイルドの作品に出演するということも私の中では話題でした。

舞台で見るアンジェラ・ランズベリー

アンジェラさんの舞台をブロードウェイで見るのは、名優マリアン・セルデスと共演した「DEUCE(2007)」やキャサリン・ゼタ・ジョーンズと共演した「Little Night Music(2009)」、そしてオールスターキャストの「The Best Man(2012)」に続いて4作品目です。リンカーン・センターで記録用に録画された「Blithe Sprit(2009)」を見ることができましたが、あれは舞台で見たかった!と思わせる演技でした。後にロンドンでや北米ツアーもしたのですが、見に行かなかったことを心から後悔しました。

生の舞台なので皆さんと感想をともにできないのはとても残念です。今回彼女が演じたのはブラックネル夫人という資産家。この作品に強烈なスパイスを加えるコメディリリーフです。劇中何度も大爆笑をさらっていました。94歳になり流石に杖をつきながらゆっくりとした足取りで登退場していましたが、演技やセリフの言い回しにはキレがあります。登場したときは拍手が鳴り止まず、なかなか劇が進みませんでした。カーテンコールのこちらのクリップからは観客の熱狂を感じていただけると思います。

アンジェラさんの舞台作品については、日本語版はリリースされていませんが、ジョニー・デップ主演で映画化されたスティーブン・ソンドハイム作詞作曲の「スウィニー・トッド(1982)」をもしよかったら見てみてください。その昔NHKで放映されたことがあるので見た方ももしかしたらいらっしゃるかもしれません。

彼女のために作られた難解な歌の数々。特に「The Worst Pies in London」はHilarious。私は日本では発売されていないアンジェラさんが出演する数々のDVDを再生するリージョンフリーのプレイヤーを持っていますが、お持ちでない方はパソコンのDVD再生のリージョンを変えれば簡単に見ることができますので機会があれば是非是非見てみてください。

映像で見るアンジェラ・ランズベリーの舞台作品

他にはオーストラリアツアーを録画した「ドライビング・ミス・デイジー(2013)」がアンジェラさんの舞台作品としてDVDで発売されています。ジェシカ・タンディがアカデミー賞をとったのでストーリーはご存じの方も多いのではないでしょうか。この作品でアンジェラさんはジェームス・アール・ジョーンズとオーストラリアを回りました。

あとはトニー賞授賞式での彼女のパフォーマンスが結構Youtubeに転がっています。Theater Talkという番組での対談で演劇について色々と話していますし、American Theater Wingという彼女が名誉会長を務めている団体では数々の無料のコンテンツがあり、アンジェラさんのラジオ対談もアーカイブされています。

舞台ではないのですが、彼女のミュージカル映画もなかなかいいですよ。例えば、「The Pirates of Penzance(1983)」でのスーパー早口な歌唱は見ごたえがあります。「Mrs. Santa Clause(1996)」はアンジェラさんをブロードウェイのスターにした「メイム(1966)」の作曲家ジェリー・ハーマンが彼女のために作ったテレビ映画です。演出は映画「シカゴ」や「メリー・ポピンズ・リターンズ」で監督も努めたロブ・マーシャルです。後者はアンジェラさんもバルーン・レディで出演しましたよね。あとは「ベッドかざりとほうき(Bedknobs and Broomsticks)」はVHSでは日本でも発売されましたが、DVDは発売されていないようなんです。最新版は1971年に公開された時にカットさたシーンも収録されています。

最後に

70を超える映画作品、12年間に及んだ「ジェシカおばさんの事件簿」など現在も続く私の青春をアンジェラ・ランズベリーという名女優にかけてきたわけですが、役柄の幅がまぁ大きい。アニメで初めてアカデミー作品賞にノミネートされた「美女と野獣の(1991)」のポット夫人の柔らかさ、「影なき狙撃者(1962)」では悪魔のような母親、「ナイル殺人事件(1978)」ではアル中の女流作家などオリジナリティーが半端ない。

「ジェシカおばさんの事件簿(1984~1996)」で演じたミステリー作家は今なお彼女の代名詞になっており、今なお世界中で放送されています。1991年からは製作総指揮も担いました。彼女のこうした活躍でアメリカの60歳以上の女性の起業が増えたと「60 Minutes」でその影響力が特集されました。

アンジェラさんをテレビで見かけたのが今から30年ほど前。以来私はアンジェラさんの言葉を理解するためにありとあらゆる手段を講じて勉強しました。できるだけお金をかけないで。そして今のキャリアがありますが、今なお私にインスピレーションを与え続けてくれています。

アンジェラさんのことを書くと際限なくなるので、今回は(!)この辺にします。