私たちのナレッジキャラバン:学習会を通した私の気づきと学び

皆さん、こんにちは。後藤美句です。本ブログを主催する熊谷校長の学校で教員をしています。この三連休は毎日エントリーをリリースするとのことでしたが、昨日に引き続き、私が担当させていただきます。

「思い立ったらそこが学び場」というコンセプトで筑波大学坂戸高校時代に「English Caravan」という英語で議論する課外授業を始めたそうなのですが(キャロル先生も時々参加したとおっしゃっていました)、そこからナレッジキャラバンと称して至る所で熊谷先生はワークショップを開いています。

知の構築と熊谷先生とその呪縛

私たちの学校でも1ヶ月に一度、がっつり思考するキャラバンが開かれています。前回は「アノテーションをつけて読む」ことをテーマに、大森荘蔵の『知の構築とその呪縛』という本の第一章・密画的世界観と第二章・略画的世界観が事前課題として渡され、後日参加者全員で課題文を議論をすることになっていました。

文章をよりよく読むことができることはディプロマプログラムにおける成功の最も重要なスキルの一つです。それを初等教育の中で足場づくりができるように指導に活かすことが目的でした。

私はまず、思いのままにアノテーションをつけながら文章を読みました。しかし、何度読み返しても、何も内容が入ってこないのです。このような文章を読み慣れていない私にとっては、暗号が羅列されているように感じられました。

わからない言葉を調べて文章を理解しようと努力しましたが、そのうちに話の繋がりが見えなり、筆者が伝えたいことが情けなくなるほどわからなくなりました。正直、焦りました。そして不安な気持ちのまま、キャラバン当日を迎えたのです。理解してないことを熊谷先生に見透かされることに恐怖を覚えながら……。

本の読み方を徹底して学ぶ

熊谷先生はまずはじめに文章の読み方(ストラテジー)について話をされました。その時、4月にトップダウンリーディングの手法をキャラバンで学んだこと思い出し、「あ、そうか!テキストタイプに適したストラテジーを使って文章を読むのだった」と気付かされました。

私たちは、文章構成を確認し、各見出しからその次の文章に書かれていることを類推しながら読み、何度も登場するキーワードを抜き取り、文章の内容を補完的に読みました。私は、文章を読む際に、文中で重要になるコンセプトを意識して読むことは今までにありませんでしたが、何もわからない状態から、文章が何を取り上げているのかがわかるようになり、不安度は一気に下がります。気が付けば、私は熊谷先生からどうみられているのかも、自分自身がわかっていないことを知って凹むことからも解放され、文章そのものと向き合うことができるようになっていました。

次に、筆者が伝えたいことを読者に気づいてもらうために、筆者はどのような手法を用いて文章を書いているのかという議論に移ります。この文章ではコントラスト(対比)というコンセプトを用いている、大森荘蔵は様々な例を密画的世界観を批判するために用いていることが見えてきます。なんだか草原に風が吹き渡るように、私の視界は一気に広がっていくようでした。

参加する前は、あんなに点と点がつながらなかった文章も読み方を変えるだけで、驚くように理解が進みましたし、今まで興味を持たなかった学問にまで手を伸ばしたくなるほどワクワクした自分がいました。

知識のアンテナ

熊谷先生のナビゲーションを受けながら文章を読んでいるうちに、熊谷先生は普段、文章をただ読み進めるのではなく、文中より概念を抜き出し、その概念を転移させながら、読んでいるように感じました。

なぜ、彼はそのように本を読むのでしょうか。それは、さまざまな学問分野、知識に興味を持ち、常にアンテナをはり、探究しているからではないかと思います。その彼の学びに対する姿勢と探究心に私はインスピレーションを受けました。

熊谷先生の話題もいつも突拍子もないくらい幅広んです。だからこそ、私たちに語りかけるひと言一言に真実味があり、物事を関連付ながら筋の通った話をしているように聞こえるのだと思います。そして、その姿が詐欺師かと思うほどに私たちを魅了させるのです。

幅広い知識に好奇心を持ち、それらを自分のものにするまで知るために読む。その方法がアノテーションをつけながら読むことだったのです。確かに、熊谷先生の本を借りた時に、三色ボールペンでびっしり書き込みがしてあって、余白には新しい知識について調べたことがまとめられていたり、「この考え方はサルトルの嘔吐に通じる」とか、小林秀雄の対談集のあるページには、「小林秀雄、この人のこと絶対嫌いだな」とかいうメモが書いてありました(それも含めて面白く読みました)。読書をしながら、既存の知識を新しい知識に結びつけ、知識を再構築しようとする意図がアノテーションから窺えました。なんか、「よし、本を読もう!」って気になりましたもん。

最後に

最後に、今回の学びを通して、心の底から思ったことは、この勉強会を遅くとも大学生時代に受けたかったということです。きっと、大学生時代にこの学び、気づきができていれば、今の私の視野や知識はもっと広げられていたはずです。

そして、これは今まで述べてきた気づきと少しそれた内容ではありますが、教員として生徒に対して持つ真剣さ、真剣な態度、姿勢の重要性についても考えさせられました。今回の学習会で、熊谷先生の話に私が吸い込まれて行った理由の一つは、彼が真剣な姿勢で我々と向き合ってくれたからだと思います。

彼の私たちに対する眼差しは、正直少しプレッシャーを感じさせましたが、それほど私たちと熱心に向き合っていることはひしひしと感じました。「あ、この人、本気だ!」って。以前、林さんが書いているのとおんなじ体験を私もしました。

今年の目標は我慢強くなることだと語る林さんが、生物、歴史、そして知の理論の内部評価について書いています。

その姿勢は今すぐに、教師として子どもたちと関わる際にぜひとも真似したいと思っています。最初は熊谷先生から自分ができないことを見透かされそうで怖いと思っていましたが、なんだか、とっても清々しく、すっきりした気持ちになっています。

そんな経験も含めて、7月27日(日)の『チャリティ・キャラバン 2025 in 大阪 夏〜国際バカロレアの学習と学びの連続性について考える〜』ではお名なしできればと思っています。申し込みは絶賛受付中です。みなさんとお目にかかるのを楽しみにしています。申し込みは以下のリンクをご覧ください。

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