今からIBを始める君へ:本質は受け継がれゆく(後篇)

皆様こんにちは。高知県立高知国際高等学校1年の竹森です。前回に引き続き、MYPのでの学びをご紹介したいと思います。

「食材を冷やすほど抽出できるDNAの量が増える」という仮説のもと、オレンジジュースを用いて実験に取り組んだのはいいものの、その実験には問題が発生したのです。

問題発生

まず発生したのは、「DNAだけを取り出すことができない問題」でした。食材からDNAを抽出する際には、エタノールを用いてDNAを浮かび上がらせるのですが、今回の課題では「たくさん取り出せた」かどうかを判断しなければなりません。

そのため、抽出したDNAの質量のデータを収集する必要があると考えた私は、液体ごとDNAをすくって熱し、水分を飛ばすことでDNAだけを抽出できるだろうと考えていました。しかし、実際に行ってみると、液体が沸騰してしまい、ただでさえ繊細なDNAがバラバラになってしまうという結果に……

この課題の解決の鍵となったのはまさかの「ドライヤー」でした!家から持ってきたドライヤーで水分を飛ばすことでDNAだけを取り出すことができたのですが、ここで次の問題が発生しました。

問題続出

それは「質量計測できない問題」です。水分を飛ばした後のDNAの質量を電子てんびんというはかりで計測した結果、通常ならば数字が表示される液晶画面に、突然見たことのないマークが表示されました。

精密機械を壊してしまったのかと思ってかなり焦ったのですが、先生と一緒に説明書を確認すると、どうやら「計測不能」という表示のようでした。ホッとしたのも束の間、これではDNAの抽出量を比較することができません!

何度か実験を繰り返し、ドライヤーを当てる時間を調節するなどの工夫を重ねることで「0.02g」という結果を得ることはできましたが、効率的に実験ができるようにジュースを選んだのにかえって手間がかかっているなあ……と、雲行きが怪しくなってきて不安を覚えました。

問題山積

次にDNAを抽出するときの温度を変化させて同じ条件の実験を行うのですが、またしても新たな問題が発生。オレンジジュースを冷やすため氷水を用意したのですが、DNAの抽出の瞬間に狙った温度になるよう計算して氷水から取り出す必要があり、かなり難航しました……。

しかし苦労したかいあって、温度を下げた実験では常温で行った実験よりも抽出できたDNAの量が多かったため、どうやら私の立てた仮説は正しいだろうと判断することができました。

ですが、本当の地獄はここからでした……。

先行実験では、抽出した物体が本当にDNAであるかを確かめるため、最後にDNAの染色という実験を行っていました。そこで私も染色を試みたのですが、染色に使う「酢酸オルセイン染色液」という薬品がかなりの酸っぱい異臭を放つ液体で、染色したDNAは2重でビニール袋に入れて口をかたく縛りロッカーに保管していたのですが、それでも次の日、ロッカーがものすごいニオイになっていたのを思い出します。

正直、あれが一番きつかったです(笑)。

これからIBを学ぶ小中学生へ

今回は、MYPの授業について紹介しました!

本文だけ読むと紆余曲折あってとにかく大変だったように思えますが、理科室でジュースやドライヤーを使ったことはなかったので、意外と新鮮で楽しかった思い出として残っています。確かに、苦労した点はたくさんあったし時間もかかった課題でしたが、それ以上に自分の力でトライ&エラーを繰り返しながらベストな結果を見つける、という楽しさもあると思います。

また、こういった個人研究の課題のときは、先生方との距離が近いこともIBの特徴ではないかと思います。今回紹介した実験を行っている期間中、理科室の冷蔵庫にオレンジジュースを保管させていただいたのですが、先生が間違えて飲みそうになったとおっしゃっていました……(笑)。先生方との距離が近いと、実験方法やレポートの書き方について困ったとき相談しやすく、実際にDNA抽出実験でも先生方には実験方法の検討の際かなり相談に乗っていただきました。

このように、自分で自由に授業で取り組む内容をデザインできる、という点もIBの楽しい点です。このブログを読んで楽しそうだな、と思った方は、ぜひIBにチャレンジしてほしいです!