劣等の往復運動

みなさん、こんにちは。熊谷優一です。先日、このブログを読んでいる保護者の方から、「ブログを読んでいると、熊谷先生ってすごい人なのかもって勘違いしそうになる」と言われました。

たしかにフツーの学校の先生で、IBコーディネーターという肩書があるなんてこれまでの日本の学校文化にはありませんでしたし、こうしてブログでさももっともらしく、まだ普及していない国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)のことを書いているので、そう見えてしまいがちなのかもしれません。

でも、そのお母さんが最後に、「こうして話していると、やっぱ凄い人じゃないってわかって安心します」とにっこりほほ笑むので、ああ誤解されてないと安心しつつ、一方で「ん?ん?」と思いました。

むやみやたらと反省しないで

IBのコア科目の一つにCASという科目があります。Creativity(創造性)、Action(行動)、Service(奉仕)の頭文字を取っています。コア科目は全世界のIBの教育プログラムのうち、高校レベルに当たるディプロマプログラム(DP:Diploma Programme)の必須科目です。

科目といっても時間割に入っているのではなく、時間割外の課外活動なのですが、先日に本校のCAS担当の元祖クマユウが「福祉科が語るCASと日本的教育」で書いたように、計画・実行・振り返りの中で、7つの学習成果が得られるような創造的で、汗をかくような、誰かのためになる活動を行います。

福祉科の熊倉悠貴先生がCASと日本的教育について語ります。

「振り返り(Reflection)」って案外難しいんですよ。今行っている授業でも、必ず振り返りの時間を設けているのですが、生徒たちはよくなかったことに目を向けがちです。時に、そこまでひどくないのに、やたら否定的な評価を下します。

そこで、私は「Stop・Start・Continue」というそれっぽい名前を付けて、「これはやめたほうがいいかな、これを次はやってみようかな、これは次もやってみようかな。」という風に、あまりネガティブになりすぎないよう振り返りの時間を設けるように、今週から(!)しました。

これまでの学習経験から、反省しがちになるんですかね?私自身にも覚えがありますが、たとえできているとしても、それを「よかったところ」とジャッジする勇気がないというか…… そういえば、IB認定校になるための最終段階、最終訪問の時に、査察官から、「おまえはできている。よくやっている。だからそんなに謙遜するな。卑下するな」と言われました。

みなさんは、みなさんのお子さんは、みなさんの生徒さんは、むやみやたらに反省してしまうところはないですか?

自信がないって言わないで

反省しがちな生徒は、例えばプレゼンテーションの授業が終わった後に、「私のどこがいけないですか?」といった風に聞いてくることがままあります。よくよく話を聞いてみて、最後に出てくるのが「私、自信がないんです」という最高潮に便利なキラーフレーズです。

「自信がない」から「私はできない」というネガティブを装った自己肯定。ただの言いわけですよね。そうすればまわりから同情されるとでも思っているのでしょうか。おおっと、ちょっと辛辣な本家クマユウの腹黒いところがでてきましたね。

私が言いたいのは、「自信がある」人ってホントにいますか?ってことです。自信があるように見せているか、自信がある・ないを考えている余裕なくパフォーマンスしなければいけないか、どちらかの人が多いのではないでしょうか。みなさんの周りの自信がありそうに見える人をよくよく観察してみてください。案外、些細な寂しさに躓いているかもしれません。

私は生徒に、「自信がない」と言うことは禁止すると話しています。「自信があるフリ」をする練習を授業でしようと。韓国での留学生活で私が身につけたことは、「準備をしないでどこまでパフォーマンスできるのかを自分で確認する勇気」です。ちょっとわかりにくいですね。

つまり、「誰か発表してくれ」と教授に言われたら、すかさず「やります」と手を上げる。そのことについてよく知っていて、得意なことは結構話せます。でもよく知らない、得意でもない、まして興味もそんなにないことはさっぱり話せません。それを知るためにこの手法は非常に有効でした。「できる」とわかったことはそれ以上勉強する必要はないし、「できない」ことは次できるように対策を練ればいいい。

でも、何より、みんな一番手というのは避けたがりますからね。最初に手をあげて、パフォーマンスした人は、みんなからありがたがられるんです。成功しても、失敗しても。成功すれば次の人はそれに倣えるし、失敗したらみんなの精神的負担を軽くすることができます。

「自信がない。」って言わないで、「自信があるフリ」で実践を積んでいきましょうよ!って話です。

劣等の往復運動

この人はすごい。自分はすごくない。
あの人はすごい。自分はすごくない。
その人もすごい。自分はすごくない。

うろ覚えですが、これはラジオで、確か朝井リョウが言っていたのではなかったかと思います。

これ、ネガティブな人なら身に覚えがあるのではないでしょうか。最近はネクラもこなれてきて、かえってポジティブに見えると言われる私ですが、かつてはネクラの権化とか、ネクラの帝王とか呼ばれていたので、「それな!」って思います。

この他者と自分を比べる「すごい―すごくない」の往復運動は何も生み出さないことを、ネクラは知るべきです。その運動の結果、すごくないことを思い知った後、ネクラは気後れして行動に移す決断を先送りにします。

もったいない!行動に移したらもっと楽しくて、もっと興味が湧くそんな出来事があるかもしれないのに。人生はいつまでも続くという保証は何もありません。劣等感に苛まれて、何もせず停滞しているのは本当にもったいないと私は思うんです。

あれ?やっぱり、私ポジティブに見えますね……。

最後に

今日も読んでいただきありがとうございました。最近、IBのシステムのことばかり書いてきたので、恒例(?)の時々ふざけるシリーズを書いてみました。

次回は、「犬は吠えるがキャラバンは進む」シリーズの第2回を前編・後編でお送りします。筑坂はバラの花が咲き始めました。もう夏ですね。気温差の激しいおり、体調にお気をつけてお過ごしください。