あの鐘を鳴らすのは… vol.1-1

ブログをご覧のみなさん、初めまして。橋本あすかといいます。

熊谷先生が筑波大学附属坂戸高校に赴任する前の生徒で、高校3年生の時に出会いました。今回は、私の高校生の頃についてお話させてください。

定時制で学ぶこと

私は岩手県立一関第一高等学校の定時制課程に通っていました。定時制は17:30から20:40まで授業があり、4年をかけて卒業します。卒業後の肩書きに定時制は付きません。

みなさんは、“定時制”と聞いてどのようなイメージをお持ちでしょうか。頭が悪い人が通う高校、他に受け入れてくれる高校がないから行くところ、既卒の社会人が通う高校、など良くないイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。私自身、入学するまでそのようなイメージを持っていました。

中学のころの私は塾に通い、生徒会活動も行っていました。吹奏楽部だったので、高校でも吹奏楽を続け、美容の専門学校に行きたいと考えていました。そんな私が定時制に入学した理由は、どうしても働きたかったからです。

中学3年生のとき、父親が脳出血で母親は持病が悪化し入院しました。数か月で両親は退院したのですが、後遺症が残り、今後社会復帰ができる状況ではありませんでした。一人っ子の私は焦りと不安でいっぱいになりました。高校に行くお金はあるのか?専門学校にも行きたいのに。いやそれよりも日々の生活は大丈夫なのだろうか。

そんなことを考えていたときに、定時制高校の存在を知ったのです。

学業とアルバイトの両立

高校に入学してすぐに、私はファーストフード店でアルバイトを始めました。9時から17時まで働いて、17時35分からは授業を受けていました。土日は学校がないためシフト制で働いていました。とにかく働きたかった、お金が欲しかった私は完全に休みの日を作っていませんでした。

定時制に入る生徒はそれぞれに様々な事情を抱えています。ずっと不登校だった人、全日制に落ちて入ってきた人、いろんな歳台の人、勉強が苦手な人、働きたいから選んだ人、など。私は10人で入学しましたが、10通りの理由がありました。

1学期を過ぎて、夏休みの頃までには、全員がアルバイトと学校を両立できるようになっていました。大変なことですが、みんな頑張っていることが私自身のモチベーションにつながりました。

アヤベに出会う

私の同級生10人で共通していたことが1つだけあります。英語が嫌いということです。それは2年生になっても変わっていませんでした。

そんな英語だけやる気のない私たちに、新しい風が吹いてきました。熊谷先生が英語の担当になったのです(見た目の第一印象が芸人ピースの綾部だったことから、ニックネームはアヤベでした。以下親しみを込めてアヤベと表記します)。私が衝撃的だった先生の発言、今でも覚えています。

「”This is a pen.”だけわかればいいから」

「えええええええええええええええええ!英語の先生がそれ言って良いんですか!?」って

でも、これには続きがあって、何も言えないよりも、”This is a pen.”1つわかっていたら、イントネーションとジェスチャーで通じることはたくさんある、という意味でした。例えば、「これを英語で何と言いたいかわからない」という時に、指さして”This is a pen?”って聞けば、それは絶対にペンじゃないから、聞かれた人は「これを何て言うのか知りたいのか」と察して、”This is ~.”と答えてくれるというのです。

「何も言えないよりはマシじゃね?」とアヤベはニヤリと笑うんです。でも、確かに”This is a pen.”で何か自分が知りたいことを知れるかもって思ったら、はじめの一歩としてはいいですよね。そして自然と”What’s this?”とか、”What do you say this?”とかって自然に使えるようになるって。

無茶苦茶なこと言う人だなと思いましたが、この一連の会話から、私たちの英語に対する壁が崩れ去りました。教科書というよりも身近な英語に触れる機会が多かったです。英語の曲を聴いていたら授業が終わっていた日もありました。でもそれくらい楽しめる方が私たちには合っていました。

「好きこそものの上手なれ」とよく言いますが、まさにその通りだと思います。私たちは英語が好きになっていました。今思うと、アヤベの経験とキャラクターでなければ出来なかったことだと思います。

ちょっと長くなってしまいました。もう少し書かせてもらってもいいですか?

次回に続く。