今からIBを始める君へ:TOKという沼

皆様こんにちは。あっという間に高校生活の1年目が終わり、まさに「歳月人を待たず」だと痛感している竹森です。

今回は、「ディプロマプログラム(DP:Diploma Programme)」において特徴的な科目の1つである「知の理論(TOK:Theory of Knowledge)」についてお話ししたいと思います。

私の通っている学校では現在プレTOK展示に取り組んでおり、先日ちょうど全2回のうち1回目の発表を終えたため、この記事では特に「プレTOK展示」への取り組みにおいて私が感じたことを紹介していきます。それでは、どうぞ!

TOKとは

まず、DPにおける科目の1つ「TOK」では何を学ぶのか、について紹介します。

「TOK」とは、「Theory of Knowledge(知の理論)」の略で、科目の中でも「コア」と呼ばれ、全世界でDPを学ぶ生徒の必修科目になっており、教科学習とは異なる特別な位置づけにあります。この科目の授業では、「人はどのようにして”知る”のか?」「”知る”とはどういうことなのか?」といった、科学や数学だけでは説明のできない、哲学的な問いについても探究する科目です。

今回ご紹介する「TOK展示」は、TOKにおける課題の1つです。初めにガイドで指定されている35個の問いの中から自分が探究したい問いを1つ選び、問いに関連する3つの展示物を用意し、それを使ってプレゼンを行う、という流れになっています。

本来は1人で問いの選択から発表までを行うのですが、今回のプレ展示では、練習として2人で準備に取り組みました。

問いを紐解く

私たちが選んだ問いは「新しい知識が、すでに確立した価値観や信念を変化させることはあるか」というものです。私たちは、まず辞書や経験を用いてこの問いを独自に解釈し、「価値観や信念」といった意味のわかりにくい言葉を、「自分たちが大切にしてきたことや正しいと思っていたこと」のように、平易な言葉で表現しました。

個人的には、次に紹介する展示物の選択よりも、このステップの方が難しく、TOK展示において最も「過酷な」パートなのではないかと思っています(笑)。選んだ問いの解釈を深められていないと、選んだ展示物も問いとの関連が薄いものになってしまいます。

実際、私たちも準備を進めていく中で、主張と矛盾する部分が見つかり、展示物を1から選びなおすことになりました……。

また、問いに使われている用語の解釈においても、お互いの意見が食い違ったことや、納得がいかなかったことは多々ありました。が、互いの主張から共通点を見つけ出し、2人とも納得できる解釈ができた際は、ホッとすると同時に達成感がありました(全体の流れを見るとまだまだ序盤ですが……)。このように、2人で協働することには難しさもありますが、異なる意見を取り入れて議論を深めることができるという点は強みでもあり、楽しさも生まれると思います。

深みにはまる

次に、ブレインストーミング(限られた時間内で、できるだけたくさんのアイデアを出す発想法のこと)を行い、「価値観や信念を変化させる」ことを示す事象、「変化させない」ことを示す事象をそれぞれ7個ほど探しました。そして、その中から、選んだ問いとのつながりが深い事象を3つ選びます。私たちが選んだ3つの事物は、「サッカーのルールブック」「本校制服のポロシャツ」「自分が使っている鉛筆」の3つです。

展示物の詳しい説明は省きますが、例えば「本校制服のポロシャツ」については、「制服は、統一感と清潔感、礼儀正しい印象を与えることが大切だ」という価値観が、暑い、着心地が悪い、といった不満や反対意見(新しい知識)によって、「実用性や快適さが大切だ」という価値観に変わった、ということを示す例になるのではないか、と考えています。

しかし現在は、結局、変化させるか変化させないかは人によって変わるのではないか、といった新たな問いも出てきて、どんどんTOKの深みにハマっています(笑)。

今からIBを始める君へ

さて、今回は「プレTOK展示」への取り組みについて、ご紹介しました。

これは私自身の考えになるのですが、現実世界においては、はっきりとした答えを出すことのできない問題もたくさんあると思います。TOKを学び、答えのない問いについて探究することで、そういった問題について考え、解決策を模索する能力も身につくのではないかと考えています。

この記事を通して、科目の勉強だけではない、IBによる学びならではの面白さが少しでも伝われば嬉しいです!