街角TOK:リーダーシップは巡回する番外編

街には様々な問いが溢れています。本屋に並ぶ書籍、アーケードで聞こえてくる音楽、やがて暗黙の秩序が生じる無秩序な人の流れ、商店街で交わされる一見無意味な会話。普段はなんとも思わないことがふと気になりだしたら、それが私たちの「知の目覚め」の合図です。

今回は小林紀晴著「だからこそ、自分にフェアでなければならない。プロ登山家・竹内洋岳のルール」をとりあげます。

みなさん、こんにちは。熊谷優一です。前回は小林紀晴著「だからこそ、自分にフェアでなければならない。プロ登山家・竹内洋岳のルール」から考えるリーダーシップについて書きました。今回は、その続編と言っていいかな?KPOPの競演番組を見て、感じたリーダーシップを取り上げたいと思います。

Kingdam: Legendary War

生徒の影響でBTSを聞き始めたのは一年くらい前だったでしょうか。世界中のチャートを圧巻するばかりでなく、社会的にも、経済的にも大きな影響力を持つようになりましたよね。グループとしては活動休止が発表されましたが、今後も各メンバーの動向は目を捕らえて離しません。

Yutubeで彼らの動画を見ているうちに、どんどん他のKPOPグループの動画がおすすめで上がってくるわけで、軽い気持ちで見てみたら、どのグループも完成度が高く、すっかりKPOPの世界にハマってしまいました。

そんな中、泣き泣き見た番組があります。「Kingdom:Legendary War」という6組の人気男性アイドルグループが4回の競演を通して、順位を競うサバイバル番組です。ATEEZ、BTOB、iKON、SF9、Stray Kids、THE BOYZが参加しました。現在、Abeme TVで3話まで無料で見ることができます。

最初は順位にこだわり、パフォーマンスに硬さが見られたり、萎縮したりしていた出演者が、他のグループのパフォーマンスからインスピレーションを受けたり、学んだり、自分たちらしさを再認識したり、リスペクトするようになったりと、勝ち負けではない意味を見出す姿に胸を打たれました。

ときには思うようにパフォーマンスできずに悔し涙を流す参加者たち。それはもうリアルなスポ根ドラマを見ているようで、すっかり感情移入していしまいました。

グループの垣根を超えて

全4回の競演では、過去に発表した自作の曲や、参加している他のグループの曲を再解釈・再構成してパフォーマンスしましたが、ハイライトは6つのグループが2つのチームに分かれ、ダンス担当、ラップ担当、ボーカル担当がそれぞれ集まり、コラボレーションする回です。中でも、ATEEZ、BTOB、Stray Kidsのボーカル担当の3人がコラボレーションして歌ったIUの「Love Poem」はまさにレジェンドの舞台にふさわしいパフォーマンスだったと思います。

3人のパフォーマンスと本心がちょうどピッタリ重なっているというのでしょうかね。本当に3人が音楽を、その字のまま楽しんでいる。歌を通してメッセージを送っているのを感じるんですよね。もちろん、歌声やハーモニー、3人の掛け合いなどパフォーマンスそのもののクオリティもとても高く、たくさんの人が絶賛してるのもわかります。もう何十回も見ているのですが、私は最近ようやく泣かないで見られるようになりました。

歌のみのバージョンはこちらからご覧いただけます。

日本語訳はついていないのですが、コラボレーションのビハインドも含めたバージョンはこちらからご覧いただけます。

ソ・ウングァンのリーダーシップに学ぶ

歌声もそうなんですが、この中で私が気になったのが、BTOBのソ・ウングァン(서은광)という人のリーダーシップの取り方です。

彼とユニットを組むのは、2018年にデビューし、20代になったばかりのAteezのジョンホ (종호 )、Stray Kidsのスンミン (승민)の2人です。彼らにとって、2012年のデビュー以来、ヒット曲も多いBTOBのリーダーを務める10歳年上のソ・ウングァンとのコラボレーションは、2番目の動画を見てもわかるように、ボーカリストとして自身の歌唱を視聴者に見せる絶好の機会であるとともに、敬愛する先輩との胸躍るコラボレーションの機会だと捉えていたことが伺えます。

ソ・ウングァンは、若い人たちと組むことによって、自分のほうが学ぶことが多いはずだと話していますが、とはいえ、若い二人は緊張し、萎縮することは想像に難しくありません。また、そのことがコラボレーションの質を低めることをソ・ウングァンは、ヴォーカリストの先輩として、彼らの歌唱に対して肯定的にフィードバックすることを通して阻止しています。

褒めるというのとはちょっと違うんですよね。うまく説明できないんですが、動画を見ると、闇雲に褒めていはいないんです。ソ・ウングァンがいいって思うことを、本当に本心から、伝えているだけなんです。そこに嘘くささを感じないんです。

これって、第二言語習得論でクレッシェンが語るところの「情意フィルター」仮説ですよね。ネガティブな感情は学習を妨げるという考え方です。

その点、ソ・ウングァンはtポジティなフィードバックの仕方がとても上手です。フィードバックを受けた方は謙虚に受け止めつつも、心底喜んでいるのがわかります。そして3人のコラボレーションの意味、ゴール、更にはそのゴールを目指す上で自分たちはいい状態にあることをさり気なく伝えています。

それを可能にしているのは彼のメッセージだけでなく、問い方がとても上手だからに他なりません。音楽の趣味、音域、音色、歌い方、不安要素などなど、彼は問いと観察を通して若い二人の歌声の良さを最大化するために絶えず思案しているようでした。そう、自分がリーダーとして突出した力を発揮するというというよりは、各メンバーをチームとしてどう活かせるかを調整するリーダーシップの取り方をしていたのです。

最後に

ハングルで書かれたYoutubeのコメントを読むと彼のリーダーシップに対する賞賛が、彼が所属するBTOBのファンだけでなく、AteezやStray Kidsのファンからも多く寄せられていました。

そんなこんなで、私はすっかりソ・ウングァンのファンになり、BTOBのファンになりました。BTSのファンのことをARMYと言いますよね。バイデン大統領との面会のあとも、触れられていました。私はBTOBのファン、MELODYになりました。

せっかくなので、最後にBTOBがKINGDOMで歌った2曲を紹介して今回の「街角TOK」を締めたいと思います。ドラマ「トッケビ」でコン・ユの甥役を演じた、ユク・ソンジェ(육성재)と作詞作曲を担当しているイム・ヒョンシク(임현식)は残念ながら当時兵役中で番組には出演していませんが、6人体制のときとはボーカルの担当箇所も異なる編成なので、MEDODYの皆さんも別の楽しみ方をしたのではないでしょうか(メンバー全員の兵役が終わり、6人揃っての最新アルバムも本当にいい作品ばかりですよね)。

では、まず、「아름답고도 아프구나(Beautiful Pain)」、続いて「그리워하다(Missing You)」の国学バージョンをご覧ください。ビハインド動画の後、歌はそれぞれ、4分33秒、12分30秒からご覧いただけます。